nl5sakamoto lecture Q&A

1995.5.14 第2回監獄人権セミナー
坂本さんへのQ&A


会場からの質疑応答

Q:一般市民と獄中者の接触の機会は?

A:日本では獄中者へのボランティアはできません。参観も学術研究とか限られた内容で、施設長が許可するような、矯正保護、法曹、大学関係者がほとんどです。

Q:看守が受刑者に暴行するのを見たり、体験したことは?

A:看守が受刑者に?その反対も(笑)。ないとは言えないです、人が人を扱っている所だから。私も看守・看守部長・係長時代は何回かあります。いまでは反省していますが…。

Q:細かい所内規則などは必要か?

A:70年代後半に、終戦直後に採用した経験豊かな刑務官がごそっといなくなった。その後すべてを規則で型にはめていく管理ができ上がったのです。その経験しかなくなっているので、一挙に変えるのは困難でしょう。少しずつ緩和していくしかないと思う。

Q:外国人の処遇はどうなっているのか?

A:1年間で40か国から、730名の外国人が入所。受刑者は男子は府中、女子は栃木に収容されるので、それなりの対応ができる。未決は全国に散らばっているので問題がある。

Q:死刑確定者の処遇はどうなっているのか?

A:中の処遇は未決に準じるが、外部交通はどこの施設でも裁判になっているが、現状は受刑者扱いになっている。

Q:職員に対して国連処遇最低基準等の研修は行われるのか?

A:講義ではやっていない。「実務六法を買って読みなさい」と言われるが、誰も読んでいません。

Q:獄中医療について。

A:250人ほどの医者の定員は埋まっているが、大学病院から交替で来る程度。中規模施設なら医師が一人いて、その指示で看護婦がやるような仕事は準看護士の資格を持つ職員が行う。医師が全てを行う体制にはない。

Q:行刑の密行主義について。

A:受刑者の人権を盾に隠してきた。隠すことで1万7千人の職員全体が疑われるのです。刑務所の必要性をもっとアピールすればいい。職員に口止めするなら、彼らの役割を当局がPRすべきです。


セミナー当日答えきれなかった質問に対して坂本さんが回答を寄せてくださいました。

Q:刑務所内で規律違反があったときの懲罰委員会ではどのように審理が行われるのでしょうか
[これは3年前に小倉刑務所に実際に2年間服役し、懲罰委員会にもかけられた経験をお持ちの方からの御質問です]。

A:懲罰審査会の審理
 懲罰手続は平成4年(1992年4月1日施行)に法務大臣訓令を出して、各施設でそれぞれ違った取り扱いをしていたものを統一しました。
 主な改善事項は、取り調べ期間を明示し、補佐人をおくこととしたことです。
Q:第三者(オンブズパーソンのような人)による刑事施設内の処遇の監視や被収容者の苦情への対応、あるいは当番弁護士の駐在といった提案がありますが、[職員から見てあるいは第三者として]どう思われますか。

A:第三者機関について
 一般的には被拘禁者の人権に関わる重大な問題というのは、個々の監獄の運営上の問題ではなく、法令(有権解釈も含む)による制度的規制にあると思います。
 現在の機構や制度の中で監獄運営がなされる限り、仮にオンブズパーソンが置かれたとしても、どれだけ機能するか疑問です。監獄の幹部ですら制度上の改善はできないのですから、有名無実であるばかりか、「人権的配慮」の実例として対外的な宣伝に利用されるだけでしょう。
 監獄法の改正等と合わせて考えるべきものだと思いますが、後述の私の感想が本件に対する回答にもなります。
Q:分類処遇において、犯罪傾向の進んだものとそうでない者(A級とB級)の判断基準はどのようになっているのでしょうか。

A:A級/B級の分類基準
 A級とB級の基準は、その分類業務に当たっている専門職員(国家公務員T種心理合格者など)の個別の判断によっています。
初犯の人でB級に判定された人の例。
ア 離脱意志のない暴力団構成員、
イ 公安関係受刑者(セクトからの離脱意志のない者)、
ウ A級施設に収容されていたが、再分類の結果B級に判定された者(性格の偏りなどによって同僚とのトラブルを相次いで引き起こした…など)
累犯の人でもA級に判定される人。 再犯期間が5年以上ある者(準初犯)