第46回 ボーンセンター露天風呂 「人を幸せに・地域を元気にするまちづくり」報告
【講師】
福川裕一(ボーンセンター代表)
川越、長浜、高松市丸亀等、町並み保存、市民参加のまちづくりに取り組んでこられた代表のお話である。
特に高松市丸亀は筆者等が平成16年まだ再開発工事着工前に訪れ、高松丸亀町商店街振興組合明石常務理事(当時)にお話を聞いた思い出深い土地である。(NPO政策情報 四国訪問記・その3〔市街地再生編〕 高松市丸亀商店街再開発事業と 千葉市中央第6地区再開発事業)
その後どうなっているか興味深くお話をうかがった。
参加された人達には2時間の露天風呂では時間が足りなかった?でも福川代表の情熱と「宣言」は伝わったのではなかろうか。あまりにも熱い温泉に浸かった故、適温に冷ましつつ(筆者の意訳)紹介文?を綴ろうと思ったが、筆者の能力では不可能と悟り、代表の膨大なプレゼンテーションレポートの一部から、高松市丸亀の「総有論」の部分を筆者の独断と偏見で換骨奪胎して紹介する(代表、すみません)。従って内容の責任は筆者にあります。
■高松市丸亀商店街ホームページ( http://www.kame3.jp/
総有諭のまちづくり
丸亀では「もともと商店主たちは、自分の土地に建物を建て商売を営んでいた。ほとんどは1981年の新耐震基準以前の建物で、更新期を迎えている。そこで建て替えを考えることになるが、はたと立ち止まる。従来のままの間口の敷地に建物をつくっても将来はあるのかと。隣家と併せて、いわゆる専門大店が入居可能な大きな床をつくり、上層階も有効に活用してくことが、自分にとっても商店街の活性化にとってもメリットがあると考えるのは必然的な成り行きであろう。しかし、通常の商店街ではこのような意思が共同建て替えに結びつくことは難しい。力のある商人は、隣家を借りたり購入してみずから事業を展開することができるかもしれないが、あくまでの単発の事業にとどまる。
このような意思や動きを現実にしていくのが、どのような町をつくるかというデザインのイメージの共有であり、それを可能にするスキームである。」「敷地を共同で利用し新しいビルを建て、豊かな公共空間と時代に即したテナントが使える床を提供すると同時に、そのビルの経営から、各自がそれぞれの土地を利用して得られていたレベルを超える収入(地代)を安定的に得ようということである。地代の一部を住宅の確保へふりむけることもできる。従来通り営業を続けたい地権者は新しいビルに賃料を払って床を借りればよく、地代と賃料は相殺される。」
「ビルを建てるだけなら地権者が共同して行えばよいが、開発は単発では効果が乏しい。」「複数のビルを建設していく場合は、それなりの戦略が必要になるし、デザインも貫徹されなければならない。完成後は、テナントリーシングやビル管理を総合的に行う必要がある。」「そこで自分たちが出資して設立する街づくり会社が登場する。」
「この目論みが成功するためには大前提がある。新しいビルが、投資に見合うだけの十分な収益を得ることができるという前提である。一般論としては、間口の狭い敷地の鉛筆ビルが、より大きな床をもったビルに変わるのであるから、商業施設としての魅力が高まり、上層階まで客を誘導することができるより高収益にビルになるはずである。適切なテナントが入り、一定の売り上げが得られれば、個別の敷地で土地利用していた時より収益は確実に増える。個別敷地では困難であった共同住宅の建設も可能になり、中心市街地へ夜間人口を呼び戻すことができる。」
「まずここで基本となるのが、デザインである。あたりまえだが、商業施設はマーケットに応じた規模の、しかしマーケットを呼び起こす魅力を持った商業施設でなければならない。」
「デザインを実現し商店街全体を再生していくものでなければならない。」「決定的な役割を果たしているのが「街づくり会社」であることに注意して欲しい。キーテナントが保留床を購入して成立させる通常の市街地再開発事業では、保留床価格に地価が反映し高額になる。高額になるのを抑えようとすると床面積を増やさざるを得ない。しかし、上層階を増やしても商業床としての価値は低いから、適切な価格では買い手が見つからない。多くの再開発事業では自治体が最終的な引き受け手になってこの悪循環を断ってきた。
丸亀町の再開発でも、保留床の買い手は街づくり会社である。しかし街づくり会社は権利床の運営も委託を受け、一体的に施設の運営を行う。単純に言えば、建設価格相当の床から、地代ないし家賃を生み出す経営を行えばよいのである。このこと自体は定期借地方式をとらなくとも可能だ。街づくり会社のもっと深い意味とは、地権者がいわば運命共同体となることで、みずからリスクをとって、しかしそのことによってリスクを最小化し、社会的使命をも果たしていくことなのである。」
「ただし、」「補助金及び低利融資という公的資金の導入は不可避である。ポイントは、政府が税収によって回収できるかどうかだ。」
「中心市街地に限らず、まちづくりで第一に重要なのはデザインである。」「人間が歴史を通して都市や建築で実現してきた、空間に生命をもたらすデザインである。基本的には、その風土・場所に根ざしたデザインの原理を読み取り、時代の要求にあわせつつ継承することが大前提となる。このようなデザインは、目指すべきデザインとしてコミュニティにおいて共有され、コミュニティによってはじめて実現される。コミュニティの価値を表すデザインとコミュニティの価値を実現する街づくり会社は表裏である。これを総有論のまちづくりと呼ぶことは許されるだろう。そして、総有論のまちづくりに今日もっとも近いのが、使命と主体が明確な中心市街地である。この再生に注力することは、シュリンキング時代にコンパクトシティを実現し、基礎自治体を単位とした民主主義に基礎を置く社会を再構築するための主要な戦略となる。」

それにしても高松市丸亀は千葉市のQぼーるの再開発とは雲泥の差である。千葉市の一市民としては情けない。
ビフォアフターを遂げるため、筆者としても高松市丸亀を再訪したいものだ。

【参考】 高松市丸亀町商店街再開発事業参考情報
■「高松丸亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業」概要:国土交通省
■「高松丸亀商店街タウンマネジメント 」概要:中小企業庁

追記:福川代表の高松市丸亀町再開発に係る著作紹介
季刊 まちづくり 13 コンパクトシティの可能性と中心市街地 学芸出版社 2006.12
季刊 まちづくり 18 コンパクトシティの戦略 学芸出版社 2008.3.1
季刊 まちづくり 23 中心市街地再生の試み 高松市丸亀町再開発が意味すること 学芸出版社 2009.6.1

(文責 サポーター会員 家永尚志)

 


 

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