第25回 ボーンセンター露天風呂 「景観・開発・建築」

講師:福川裕一ボーンセンター代表(千葉大学教授)
報告者:住みよい幕張を考える会:竹内悦子
千葉大学都市計画研究室:渋谷泰孝


□発題概要
岩波書店から矢作弘、岡部明子と「持続可能な都市−欧米の試みから何を学か−」 を出版。
日本は、中曽根内閣のアーバンルネッサンス以来、都市計画は規制緩和が主流を占めさまざまな都市の混乱を引き起こしてきましたが、米国ではインフラ整備を求める開発の圧力に対し、主にグロース・マネージメントを推し進め、都市の成長管理を行っています。メリーランド州ではスマートグロース法を制定し、単に成長を抑える政策ではなく、スマートな成長を進めるコンセプトにより社会のコンセンサスを得ることに成功しました。長らく進めてきた成長管理政策から“スマートグロース”というコンセプトを打ち出したことにより人々のコンセンサス
が得られやすくなりました。また、新たな都市開発の流れである「ニュ−アーバニズム(The New Urbanism)」では都市開発の27の原則等、開発にあたっての原則を打ち出しています。
福川先生の報告後、千葉のまちづくり点検事例として千葉市花見川区幕張駅南口地区のまちづくり活動報告を竹内さんと渋谷さんからいただき、参加者による意見交換を行いました。これは、バブル期に計画された大規模な再開発計画が失敗し、この時市が取得した開発の種地を拠点に住民が手づくりのまちづくりを行うことで、地区の修復を地道に取り組んでいる事例です。(運営委員 成岡 茂)

 

◇ 幕張駅南口再開発から市民参加のまちづくりを考える/ まちづくり用地の活用取り組みと市民まちづくりを支える仕組み◇

□幕張地域の概要
まず、幕張駅南口地域の概要は以下のものになります。
主な活動地区は、北側はJR総武線、南側は旧千葉街道、東側は花見川、西側は美浜長作町線で囲まれた区域(近隣商業地域、第1種住居専用地域)です。(図1)。
@千葉市内で比べても人口密度は高く、年齢別人口でも高齢者の割合が高く65歳以上は21.5%です。
A対象地区の北側(幕張駅北口)の奥には、市街化調整地域、南側においては国道14号沿いに大型店舗が立ち並ぶ、その近隣には大学等の教育機関が集中しています。更にその先には幕張新都心になります。
B幕張地域の商店街は3つの商店街が存在します。加盟店数は半数近くに減少し、商店街としての活動については、幕張駅前南口商店街、銀座通り商店街で街灯の設置・管理を行なっていますが、生計をたてるだけで精一杯でありまちづくり的な取り組みを商店街でやるのは難しいとの意見が聞かれます。
C市街地の現況を道路状況からみてみると(千葉市の報告書1?)対象地区内の道路は細街路が多く(道路率も6%程度)。ほとんどの道路は幅員4mに満たない状況で、防災面の課題が懸念される地域です。

 

対象地区

幕張再開発プラン

 

 

◇再開発による地域への影響
この地域では過去に再開発の計画がありました。もともとは狭隘道路整備や下水道整備の市街地整備の要請として協議を始めたものの、昭和57年頃から再開発事業へと話しは転換して行きました。計画が出ては意見が割れを繰り返しながら、約に20年に渡り再開発に向けた協議が行なわれてきた経緯があります。この事業の取り組みが町に与えた影響は、地域住民の心理的にも、住環境の面でも大きく、計画では20〜30階規模の建物が5.3haの中に7棟並ぶ大きなものでした。平成13年に公共事業の見直しにより公団事業としては中止し、それを受けて千葉市でも再開発事業としては後退、中止となりました。この再開発一連の動きは地域住民の間に長期化の諦めや千葉市に対する不信感の感情的な課題を生むとともに先行買収したまちづくり用地(空き地)を残す結果となりました。

 

◇住民組織「住みよい幕張を考える会」によるまちづくり
それら再開発中止の流れを受けて2001年9月に「まちづくりフォーラム」(千葉市主催)が開催されました。そこに参加した主に幕張4、5丁目在住の有志によって、幕張のあり方を考え、実践していくことを目的に2002年4月作られた組織である「住みよい幕張を考える会(以下、考える会)」が結成されました。(概要http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kikyo/3773/参照)

◇ 考える会の活動
考える会の活動は主に@市有のまちづくり用地の活用、Aまちづくりイベントの開催、BまちづくりWSの開催、C広報活動になります。その中でも@市有のまちづくり用地の活用について概要を報告します
◇まちづくり用地の活用
まちづくり用地の活用は2つの用地について行なっています。それぞれ「たんぽぽ広場」と「駅前花壇」の名称です。土地は南口再開発準備用地でしたが、2002年から幕張を考える会が千葉市より借り受け、花壇と広場をつくり管理しています。管理について「たんぽぽ広場」はご近所の方々が毎日、除草や門の開閉をしています。「駅前花壇」は千葉市から頂く花の苗と考える会の活動で得た資金で購入した花苗にて考える会のメンバーで管理しています。駅前花壇はもちろん、たんぽぽ広場も近所のかたから憩いの場、子どもの遊び場、保育所の散歩コースにと、美しい花に心和む、なくてはならない「場」になっています。
◇考える会の課題
・ 活動が花植え中心となっておりまちづくり活動を行なえていない
・ 商店街、町内会との連携がとれていない
・ 会の自立には市のサポートが必要である
・ 再開発区域の地権者が会に少なく協力を得られない



 
  広場の位置

駅前花壇

たんぽぽ広場

 

◇ 活動と支援制度の課題  〜考える会の課題から考える〜 ◇

◇考える会の活動の課題

・土地の権利者、若い世代の参加をどのようにすすめるか
過去の再開発一連の経緯で地権者や活動を担う若い世代の多くはまちづくり活動を敬遠する人も多く、その人達との協力関係を築くことが大きな課題だと考えます。
・ハードからソフトへの転換をどうすすめるか
「道路整備や再開発だけがまちづくりではない」その様な理解から緩やかなに関係づくりを行なうようなソフトなまちづくりの発想が重要だと考えます。その発想の転換を考える会の参加者も含め地域内での理解が重要です。

◇支援制度の課題

・まちづくり活動への支援制度の見直し“やってみようまちづくり”制度に関して
上記の課題の対応できるまちづくりの支援が必要だと考えます。現在、千葉市のまちづくり活動への支援制度は都市計画のまちづくり支援制度であり、また、申請についても組織の人数などハードルが高いものとなっています。それらの制度をもっと効果的に容易に活用できるように見直しが必要だと思います。
・市民の学習の場を(まちづくり学校など)
上記の制度に付随して市民のまちづくり意識の啓発も重要だと考えます。その場として千葉市においてもまちづくり学校などを設けることも重要だと考えます。

上記の考える会の課題解決には支援制度の充実が重要です。その為にも千葉市と協働のまちづくりを進めて行きたいと考える会では考えています。以上、幕張駅南口再開発事業中止後の市民参加のまちづくりから見える課題についての報告とさせていただきます。
(住みよい幕張を考える会:竹内悦子/ 千葉大学都市計画研究室:渋谷泰孝)

 

 

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