第２４回　ボーンセンター露天風呂　「引き算型まちづくり」のすすめ」

【講師】岡田 文淑 氏（愛媛県内子町八日市護国町並み保存センター所長）
内子町ホームページ： http://www.islands.ne.jp/uchiko/index.html

□街並み保存の立役者

（木下）岡田さんは、内子町の企画課長時代に街並み保存をいろいろ手がけました。今は定年退職し、街並み保存センターの所長をやっておられています。“街並み保存”という言葉の他に、“村並み保存”という言葉を提唱され自然や村並みを大切に取り組まれています。また、岡田さんは、目に見えるものだけでなく市民参加や住民参加を大切にされ、日常生活の中での人との係わりを重要視されています。このような岡田流まちづくり論は、千葉のまちづくりの参考にもなると思います。「引き算型まちづくり」は、これまでの作れ作れといったまちづくりと違う考え方です。きっと、これからのまちづくりのあり方に示唆を与えてくれるのではないかと思います。

◇ 講演要旨 ◇

図 -1内子座

図 -2 内子町歴史保存地区

◇スライドでまちの紹介 ・内子町は、人口11,000人、面積120ｋ�uの小さなまちです。 ・商店街に電柱を残したまちづくりでは、街並みの景観が良くなりません。内子町の街並み保存地区では、メイン道路から電柱を撤去しました。すると、屋根と空のバランスがあまりにきれいなのに驚きました。 ・江戸時代の建物にある床屋はなかなかいい。 ・保存した内子座は、現役修理し活用しようとしましたが多くの課題がありました。建築基準法上は特殊建築物であり、集団規定も含め、法律の規定に80ヶ所抵触もしていました。まさに法律との闘いでした。最終的には、目をつぶってもらいました（笑）。 ◇市民の主体的なまちづくりが基本 街並みを整備した結果、年間60万人の観光客が6,000台の大型バスで押し寄せてきます。この結果、生活環境の破壊という問題が起こりました。おみやげ屋で置いているものは、内子のものではなくメイドインチャイナなども多く見られるようになっています。お金を使ってまちが良くなったという話を聞いたことがありません。瀬戸内に架けられた橋は観光客を呼ぶよりむしろストロー現象をもたらしています。 まちは、行政がつくるものではありません。長年行政がまちづくりをやってきました。戦前は、町の人が挙げて橋や学校をつくりました。戦後は、行政からお金を引き出すものが利口者で、自ら努力して取り組む市民はバカ者といわれてきました。行政は与える側、市民は受け取る側、これを変えない限り、まちは良くなりません。

◇汗を流せ まちづくりをする人の中にも、行政に対する甘えの構造が残っています。16年間石畳で実験中です。私は、若い人に言っています。「市民自ら、 今頑張っていかないとだめです。君の葬式を出してくれる後輩はいないのだから」と。 また、水車を造ろうということになり、50万円の建設費を10人の若者が5万円ずつ負担することにしました。月給が7万円位の時代です。メンバーは、奥さんを説得し何とかお金つくりました。それぐらい、気合いを入れて取り組むくらいでないとものになりません。また、まちづくりの費用は自分達で稼ぐことにし、土曜日曜にアルバイトをして年間200万稼ぎました。このあたりが、まちづくり人が育つか育たないかの重要なところです。 ◇ 20世紀の常識を問い直す 町の学識経験者といえば、長年議員や自治会長をやった人がお決まりで、100％行政案が通ってしまう審議会がほとんどとなっていて、市民参加といってもかなり形骸化しています。また、これまでのまちづくりは、行政がコンサルタントに委託しこれを行政素案として計画を固め、市民の知らないところで突然建設が行われるといったことが当たり前となっていました。行政を守る組織から市民の生活を守る組織に衣替えしなければなりません。退職公務員も市民のための改革に力を注ぐ責任があります。 最近は、社会正義が問われています。雪印、県警の流用、橋本の1億円など企業、役所、政界が20世紀のツケを払拭し改革されなければなりません。原発の町では、箱物は全て満足したので今度は、ソフトだといって、6,000人の町の計画を電通に任せてしまいました。結局、お金があるとそういうことになってしまいます。お金は、子孫のために蓄えるという発想が必要です。 今後は“まちづくり”ではなく、“まちまもり”という考え方が重要です。これまでストックされた街を育てていく取り組みこそ、「引き算型まちづくり」といえます。

	図 -3 石畳地区　水車事始め	図 -4 熱心に聴く湯客

◇ 話題展開 ◇

□質疑

（二宮）�@街並みをつくろうとした時の考え方、発想はどのようなところにあったのか。
�Aまちづくりをしていく時、行政と市民のどっちの立場に立つのか。全て住民の要求を聞くのか。

（岡田）�@について。街並み保存は、まず保存ありきで、観光は次についてくるものです。観光を目的に保存を進めている訳ではありません。マスツーリズムというものは、薄利多売です。それよりも、少ない人にいかに多くの消費を促すかが大切です。
�Aについて。これからは、役所が住民が参加できる仕組みをつくることが重要な仕事です。役所には、異動というものがあります。特に事務屋は少なくとも3年で異動になります。折角市民と知り合いになったと思ったら異動です。
内子座の保存では、当初68％の市民が駐車場にすべきであるとアンケートで答えました。しかし、私はこれを保存することが内子の町にとって大切であると判断しました。保存した結果、今は誰も駐車場にした方がいいとは言いません。市民に対する啓発が大切です。千葉大の木原先生にも来ていただいて内子の魅力をたくさん語っていただきました。
豊田市では、町の真ん中に森をつくりました。いろんな情報を学び、それを参考に判断する目を養うことが大切です。

（海保）西千葉駅からゆりの木商店街に行くのに、歩道橋があるがこれを何とかしたいのですが何かいい方法はないでしょうか。

（岡田）スルーライフを考えるべきです。交通政策上、町の中にどれだけ車を入れなければいけないのか考えることが大切です。そのためには、市民の学習を積み上げることです。

（福川代表）3年前に内子に伺ったとき、岡田さんは、アンケートで内子の街並み保存があまり評価さず、自分の人生を否定されたのではないかと落ち込んでおられたようですが、今日お話を聞いて、「引き算型まちづくり」という新たな考え方を取り入れておられ、元気に強靱になっておられて安心しました。

（サポーター会員・成岡 茂）

BACK