第14回露天風呂

「ドイツにおける環境モデル団地建設の紹介」
〜環境都市フライブルク市郊外においてモデル地区建設に取り組むまちづくりNGOスタッフによる事業紹介〜



【企画に至る経緯】二宮豊氏(ボーンサポーター会員)
2000年8月から9月にかけて、私は環境都市フライブルクのファウバンに出かけ、「車を少なくするまちづくり」を見てきました。ファウバンは環境や参加そして自給自足のまちづくりに取り組んでいます。このたびカルステン・スパーリング氏は、11月20日に日本の「あおぞら財団」主催の国際会議に参加するために来日されました。この機会に日本のNPOの皆さんと交流ができたら、と本人の希望により企画しました。

 

【講演】カルステン・スパーリング氏

ドイツの環境都市・フライブルクにあるまちづくりNGO「フォーラムVauban(ファウバン)」の出版及び専門技術研究の担当者であるカルステン・スパーリング(Carsten Sperling)氏は、昨年11月20日に、日本の「あおぞら財団」主催の国際会議に参加するために来日されました。以前ファウバンを訪れたことのある二宮豊さんが、この機会に日本のNPOの皆さんと交流ができたらとの希望をお持ちのスパーリング氏をご紹介いただき、この企画が実現しました。

 

◇ フォーラムVaubanの概要 ◇

環境都市として有名な南ドイツ、フライブルク市郊外に、面積38ha、人口5,000人の規模のVauban(ファウバン)団地が建設中である。ここはフランス駐留軍跡地を市が買い取り、都市内の若いファミリーを対象にした、持続可能なモデル地区とする計画である。住民が「計画しながら学習する」ことを基本に、計画プロセスに住民参加を可能にした。この参加プロセスを調整するために、NGOフォーラムVaubanが設立された。

フォーラムVaubanの主な活動は
* 広範囲の市民参加の組織化。
* コーポラティブハウスのサポート。
* 特に交通とエネルギー分野における持続可能なモデル地区の実現。(カーシェアリングにより車を極力減らすことや、太陽光発電やコジェネによるエネルギー消費量の削減を図るなど)
一言で言えば、コーポラティブハウスを中心とした計画段階からの住民参加手法を通して、コミュニティの形成と同時に環境に配慮した地域社会を作り上げる事業である。

 

◇ 講演要旨 ◇

Vaubanは、1993年から建設が始まり2006年完成予定の人口規模約5,000人の住宅団地である。またフライブルク市は、1120年に創られ900年の歴史をもつ人口20万人の都市である。1457年に開校した大学には、2万人の学生がいる。ファウバン団地の開発は、市民が共同で行う「住まい育てグループ」が中心になり計画し、市民がプライベートに主体性をもって進めている。

ファウバン団地は市の中心部から至近の距離にある。子供達にとって交通上、安全な団地であり、マイカーは住民の40%が所有しないことに同意している。学校、幼稚園、スーパーマーケットは、地区の中にあり、地区内だけで生活できるようになっている。地区内には配達の車と消防車以外は入れない。道路は子どもの遊び場となる。ソーラーガレージ(太陽光発電パネルを載せた駐車場ビル)が地区の縁辺部にあり、共有スペースになっていて、車をもつ人がシェアしている。車をもたない人にも魅力がある。

現在、公共輸送はバスで、2006年には路面電車が走る予定となっている。重い荷物を運ぶとき車を使う。共有グループが鍵を保管し、いつでも予約可能である。有機栽培の野菜を売るところもある。住居はパッシブソーラーとしていて、冬暖かくすることが課題である。夏は涼しい。熱を逃がさない空気の循環システムやコジェネレーション、プラスエネルギーシステム(消費エネルギー以上に自然エネルギーを得ている)を採用している。真空バキュームトイレを使い、発酵ガスを取り出してコジェネに使うことと排水の量を減らすことで、処理エネルギーを減らすことを可能としているグループもある。雨水排水は、土側溝とし浸透を促している。

また40の「住まい育てグループ」があり、従前の兵舎を改善して使っている会議室でワークショップを行ったり、模型をつくったり考えたりしている。ステップ・バイ・ステップで取り組む素朴なグループをつくり、ものを見ながら計画を考える。子供と一緒に考えたり、お年寄りが小さなグループをつくり、コミュニティの庭づくりをしている。「どんな感じにしたいか」方向が決まったら、建築家を招いてさらに検討する。新聞で仲間を募集したりもしている。これを団体や企業組織がサポートしている。建物をつくる前から、近所づきあいができる。グループ毎に好きなやり方をしている。ファウバンの活動から他の地域に広がりも見せている。

 

 

【意見交換】

Q1.(神村)住んでいる方の生活圏と年齢層は?

A1.中心街への通勤(約3km)。スイスまで50km。現在、人口2,500人、2006年には、5,000人の予定。年齢層は若い世代が多いが、どうやって世代を混ぜていくかか課題。

 

Q2.(高山)脱マイカー、エネルギー、コーポラティブ……など多様なプロジェクトを進めているフォーラム・ファウバンに感動した。一般的にドイツの団地づくりは、このようなやり方をしているのか? また、学校教育でこのようなことを教えているのか?

A2.一般的でない。市は市民参加を進めている。市の近郊に17番目の原子力発電所の計画が持ち上がったが市民の反対運動により建設できなかった。これをきっかけに環境意識や保護運動が盛んになった。学校を出てきたばかりの若いスタッフが積極的に事業を進めている。これにより低予算でできている。市はこのような動きを推進している。

 

Q3.(三矢)戸建て住宅の禁止の理由は?

A3.集合して建つことを市が欲していた。(断熱効果上壁面を接して建てることは有効である。また高密化してスプロールを防止する狙いもある。)マスタープランでは、ここは市街地の一部として位置づけている、郊外では1戸建ても可能。

 

Q4.(木下)B-Plan ,(橋本)Master Plan は市がつくったのか?

A4.市が、市民や議会との話し合いの中でつくったものである。(極めて緩やかな内容のものであり、「住まい育てグループ」との議論などを経てどんどん変わってきている。)

 

Q5.(川村)カーシェアリングは、ローカルな活動に過ぎないのか?

A5.車の所有放棄は、40%となっている。カーシェアリング協会(約300名参加)とのコラボレーションである。

 

Q6.(真鍋)建設資金はどうしたのか? (成岡)スタッフの給料はどのようにしているのか?

A6. 200万ドイツマルク(約1億円)がプロジェクトコーディネーター資金として必要。スタッフ給料は、何とか集めてやっている(編集者注:ボーセンターと同じ?)市や州からの援助もある。

 

Q7.(二宮)募集要項の条件は?

A7.「持続可能なコミュニティで一緒に暮らす」といったことを明確にしている。このことを示唆する条件を提示。当初は、駐留軍の跡地でカオスの状況であった。ここに、交通、エネルギーをテーマに取り組んできた。グループで建設した方が安くつく。調整作業は自分たちでやる。(募集段階での細かい規定はない。話し合いながら決めていく。)

 

 

 

 

◇ まとめ(木下 勇 運営委員)◇

1. Verkehrsberuhigung 「交通抑制策」
−ドイツは70年代から取り組んでいて、住宅地内の道路を車が主役ではなく人が主役の場として、生活の舞台としての道路を復活するべく道路の改造を重ねてきた。その知恵が生かされている。団地内の通過交通が排除され、スライドで、みんなが描いた将来像のようになった団地の足元の道路とその周りのオープンスペースの絵が映された。

2. Auto-teilen(Carshareing)「カーシェアリング」
−カーシェアリングで、1日中、団地内に駐車しっぱなしということがない。

3. Umweltfreundlich 「環境にやさしい」−環境に配慮した住宅、住宅団地

4. Baugruppe Baugenossenschaft 「建設組合」
−居住者が募って建設組合を組織して、自分たちが住む住宅を開発するコーポラティブハウスのような仕組みは、ドイツではBaugenossenschaftとか Wohngenossenschartと言って、古い歴史がある。その歴史の上に乗っかって、環境に配慮など新しい住宅づくりに賛同する人を募って、事業を起こしていった点、また1グループではなく、いくつも建設グループをつくって、それをコーディネートするという新しい方法が生み出されている点が興味深い。

5. Autonomie 「自律、自治」−自律、自治の精神が旺盛。

6.NGO「民間非営利組織」
−NPOに運営のマネージメントを一切任せた。そこにEUから1億円もの資金が提供されるのは驚きである。このように、民間非営利組織がアイデアとやる気があれば育っていく仕組みがあるのはすばらしいことである。

※ドイツ語の頭文字をつなぐと、"VAUBAN"となる。お見事!これにはスパーリング氏もAmazing!

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