第13回露天風呂
「地域コミュニティの拠点としての学校」

 

IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)のブライアン・アシュレイ氏は、今回が5度目の来日となります。最近の秋津小学校の様子等も参考にしながら、子どもたちの発達を支える地域コミュニティ、その拠点としての学校についてお話いただきました。

◇ 講師略歴 ◇
1927年生まれ。スコットランド出身。社会学者,教育学者。福祉事業促進および青少年対策に関する政府委員会、研究会に関わる。「スコットランド子どもへの虐待防止協会」の調査とトレーニングのコンサルタント。教育、地域社会開発、ソーシャルワークに関する著者が多数ある。1961年のIPA創立に参加。1997年に来日した際、各地で「子どもの発達と社会・地域・家庭」と題して講演し、子どもの問題に悩んでいる日本社会へ提言した。今回は5度目の来日。奥様(ビッグ アームストロングさん)は造園家、彫刻家。

 

◇ 講演要旨 ◇

現代は子どもが遊ぶためのスペースと時間が失われつつある。親のサポートが必要となっている。今、日本で起こっている問題は世界的に共通の問題であり、子どもが遊ぶ空間と時間を確保するためのサポートが必要である。

現代は、図-1のように、社会(Society)、コミュニティ(Community)、家族(Family)といった社会の構造の中で、コミュニティが崩壊した社会と考えられている。家族(Family)が社会から孤立している。「年齢が高ければ高いほど、子どもの頃の社会構造が今の社会構造と大きく異なっている」ことに留意すべきである。

遊びは子どもの中から湧きあがってくるものであり、子ども自身のニーズに対応し、子ども自身の目的に適応するものでなければならない。教育は子どもの遊びを助けるものであり、学習は遊びを支えるものである。遊びを学習のために使うことが重要である。大人が子どもに知識を与えようとしてはいけない。子どもが表現したいことに、大人の信頼が大切である。

子どもの成長にとって3歳までが重要である。子どもの脳細胞は、生まれたときから成長を続ける。このため廻りの環境が重要で、特に親、とりわけ母親からの刺激が重要となる。ここであまりにテクニック偏重の教育を行ってはいけない。放っておいたり教え込んだりしてはいけない。いろいろな環境をつくってあげて刺激を与えることが重要である。特に「子どもが質問する」動機づけが重要である。

秋津小では親の関与が減ってきている。先生が一方的に子どもに教え込むのはよくない。親や先生は子どもが学ぶのを助けることが重要である。先生はヘルパーであり、ファシリテーターでなければならない。 学校を中心にコミュニティをつくっていくこと、学校と地域が協働してコミュニティを再生することが重要である。また、計画やデザインを運営することも大切である。例えば、幼稚園の遊び場を親がみんなでつくることである。他人を非難しても始まらない。

 

◇ まとめ(泉 宏佳 運営委員)◇

まちづくりにおいても同じことが言える。パブリック(Public)とプライベート(Private)の間にコレクティブとかコーポラティブなどの「公(おおやけ)」が大切(図-2参照)。現代人は、社会的しがらみなど自分に対する言い訳ばかりで疲れている。ここから、個人が心を開放する、ストレスを開放する。思い切ってまちづくりに飛び込みなさい!!「協働」、「教育」といわれるが、共に育んでいくという意味で、これからは、「共育」と呼びたい。

 

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