千葉市高度地区改正決定に至る経緯と今後の課題

 平成25年5月20日第38回都市計画審議会にて、 千葉都市計画高度地区の変更について(千葉市決定)原案通り可決され、ついで平成25年(2013) 6月 11日 告示された。
ここに至るまでの経緯を振り返りつつ、この改正案検討の論点と問題、および今後の課題について述べたい。

1、経緯
○平成22年9月1日〜30日 見直し検討案の公表及び意見募集(1回目)。9月11日から9月19日(日)の間に区毎の説明会開催

○平成22年11月30日 意見募集結果の公表(1回目)
1. 募集期間  平成22年9月1日(水) 〜 平成22年9月30日(木)
2. 意見の提出方法 郵送、ファクシミリ、電子メール及び持参
3. 募集結果 31人 69件

○平成23年12月1日〜平成24年1月16日− 見直し検討案の公表及び意見募集(2回目)
平成23年12月11日(日) 千葉中央コミュニティセンターで説明会開催

○平成24年1月11日〜18日−インターネットモニターアンケート調査(「住宅地における建物の高さ制限」について):1,000件程度回答

○平成24年2月3日−意見募集結果(2回目)及び市の考え方等の公表
1.募集期間       平成23年12月1日(木)〜平成24年1月16日(月)
2.意見の提出方法   郵送、ファクシミリ、電子メール及び持参
3.募集結果−358人 ※管理組合や団体についても、単位を「人」としている。

○平成24年5月17日 見直し修正案の公表
○平成24年12月3日〜平成25年1月11日 :変更素案の縦覧
○平成25年1月26日:公聴会開催
○平成25年3月15日〜3月29日:変更案の縦覧
○平成25年3月15日:変更案の説明書、運用基準(案)の公開
○平成25年5月20日:千葉市都市計画審議会の開催
○平成25年6月11日:都市計画変更告示

筆者は22年の第一回意見募集に意見書提出、平成22年9月19日の説明会出席、23年の第二回意見募集に意見書提出、平成23年12月11日の説明会出席、24年の素案に対する意見書提出、平成25年1月26日公聴会への公述人としての意見開陳を行い、5月20日の都市計画審議会を傍聴した。
22年の見直し案に対しては、賛否両論の意見が多く寄せられた。それを受けて24年5月17日見直し修正案は、当初の案から規制を相当緩和する案に後退した。このあとは、パブリックコメントは実施されず直接通常の都市計画決定手続き即ち素案縦覧の手続きに入り、そのもとでの意見募集、公聴会、案の縦覧、都市計画審議会の開催へと進み、この間は市民からの意見も少なく、公述人も6名、公聴会傍聴者も十数人、都市計画審議会の傍聴人も十人以下だったと記憶している。この改正の山場は平成23年12月1日の見直し検討案の公表から平成24年5月17日の見直し修正案の公表迄の約半年間の攻防であった。この間市議会に対して見直し案の緩和を求める「請 願第9号23.11.21千葉市都市計画高度地区見直しに関する請願」が提出されたが、その趣旨が見直し修正案に反映されたためか、この陳情書は平成24年6月13日第2回定例会にて撤回された。

筆者は、当初の見直し案よりも更に規制強化、規制範囲を拡大すべきと考えており、意見書等を提出してきたが残念ながらその提案は日の目を見なかった。余程のことがない限り、通常、素案の縦覧から始まる都市計画決定の手続きに入ると、そのまま都市計画決定される。しかし公述人の意見は概要が公表され、都市計画審議会においてもその概要が紹介され審議会議事録として公表される。このことは市民から提案された修正案や今後の課題意見が文書で保存されるということであり、今後の千葉市の都市計画の在り方に対する一つの手がかりを残したことになるのである。従って筆者としては上述の山場が過ぎても、多くの市民に素案、案に対する意見書の提出、公述人としての陳述をして欲しかったのである。

2、都市計画審議会での議論
都市計画審議会を何度か傍聴して思うのであるが、市からの議案説明に時間をとられ、委員から市の説明に対する若干の質問と意見表明で終わりそして賛否の決を採ることが多いように思う。委員は事前に勉強し、わからないことは担当部署にヒアリングをしておくべきだが、事前の準備不足と思われる委員の質問、意見がままみられその職責を十分果たしていないように思える。審議会は委員同士がもっと意見を述べ討論する場でなければならない。
本案件においては、重要な都市計画変更であることに鑑み、平成25年5月25日の議案採決の審議会だけでなく、平成22年10月18日、平成23年2月7日、平成24年2月13日、平成24年11月14日と4回の審議会において、検討案の説明や、市民から寄せられた意見の紹介及び委員からの意見聴取が行われた。しかし平成24年2月13日から5月の見直し修正案の公表に至る間、都市計画審議会は開催されず、その後平成24年11月14日の審議会にて報告がなされた。どうしてかこの平成24年11月14日時の議事録だけには委員の意見聴取の記録が公開されていない。

3、今後の課題
今回は住居系のみを対象としたが、今後は工業系、商業系の用途地域にもこの絶対的高さ制限の適用を拡大していくことが次の課題である。建築物建設に伴う近隣住民との紛争事例は千葉県の資料によれば、準工業地域・工業地域、近隣商業地域において多くみられるのである。
それと今回の都市計画審議会で、ある委員から提起されたが、14号線を境にした線引きの根拠が問われた。東京湾の干潟を埋め立てて造られた海浜ニュータウン等は、平成23年3月11日の東日本大震災時に甚大な液状化被害をもたらした。千葉市の都市構造を見直していく必要がある。喫緊の問題としては防災対策上も千葉市役所の耐震問題がある。仙台市役所は耐震改修で3.11を乗り越えた、千葉市役所はどうするのか?現在地で耐震改修する、建替えるという選択肢だけでなく、ライフラインの問題を考えると他の場所にある区役所を活用する等の柔軟な発想も必要である。大震災が発生して市役所建物が健全であってもそこに至る道路、電気・通信、上下水道等のライフラインが寸断されては、被害対策の司令塔としての役割が果たせないのである。
(市民研究所:家永尚志)


 

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