「千葉市高度地区改正素案公述書メモ」

平成25年1月26日千葉市高度地区改正素案に係る公聴会に公述人として意見を述べた。以下その概要を紹介する。

公 述
今度の高度地区改正素案による高さ制限の導入は是としつつも、未だ不十分である。

論述要旨
1、緩和規定については、その適用は1回迄とすべきである。
2、工業系の工業地域・準工業地域、および商業系の近隣商業地域等の用途地域にも適用を拡大すべきである。
3、15m高さ制限も用途の実情に応じて導入すべきである。
4、国道14号線で分けての20m、31m設定だけでは粗すぎる。用途の実情に応じてもう少し細かく適用区域を設定すべきである。
5、本件の改正にあたって、市からもっと情報提供があったらと思う。

1、緩和規定
素案では、
@「最高高さ制限を超える既存建築物の特例」として、要件を満たせば、回数の制限なしに現状の高さまで建て替えができる
A「分譲マンション再生に対する特例」として、最高高さの制限の対象とはしない。
となっており、平成23年12月の改正検討案にあった「最初の建替えは現状の高さまで建替えできる」、「分譲マンションの再生に対する特例」についても「敷地条件」の要件がなくなる。
B平成23年12月の検討案に戻すべきである。因みにさいたま市の場合は、「最初の建替え」までの緩和にしている。
C平成24年12月1日の素案説明会で理解したのであるが、分譲マンションの再生の特例では、「最高高さの制限の対象とはしない」ということで、現状が「高さ制限以下」のマンションでも、高さ制限を超えて建替えができることとなっている。これは高さ制限以下にすべきである。
住環境保全と建物居住者等の権利とのバランスをどうとるかが、問題となるわけだが、素案は妥協しすぎである。

2、適用用途地域の拡大
千葉市も参加した平成21年5月付け「千葉県高度地区ガイドライン研究会」の資料によれば、問題が発生している原因の一つとして「 工業系、商業系用途地域に高度地区の指定をしていないこと」を上げている。 また、「中高層建築物の建築に伴う問題の事例検証」では、研究会参加市町で問題となっている96件の建築物について、「高度なし 」が28件と3分の1程度を占め、そのうち高度地区指定をしていない、商業地域+近商地区が20件、工業系地域が5件となっている。

3、15m高さ制限の導入
@同じくガイドライン研究会の資料によれば、また高さ20m未満 でも問題発生物件が6件となっている。ガイドラインの「3 高度制限の内容」でも「例えば、次のような絶対高さの制限値が考えられる。」として、15mの制限も検討している。則ち「15m:5階建て程度までを許容(階高3m×5階)、パラペット高さを考慮して16mや、さらに1階の床の高さを考慮して17mとすることも考えられる。」とある。
A政令指定都市である「さいたま市」の場合は「市内の建物現況調査」、「全国の導入例の調査:第一種中高層〜第二種住居地域における 最多値・平均値の分析」、「不適格建築物状況調」等を踏まえて、15m、20m制限案で改正を進めている。

4、もっと詳細な適用区域の設定
例えば「さいたま市」の場合は区域の設定を、前述の調査・分析に加えて、土地利用現況と都市構造ビジョンを勘案して詳細な区域設定をしている。
尚、用途の拡大問題、15mの高さ制限の導入、詳細な適用区域の設定等を、地区計画制度で対応するという考え方もあるが、徳永副市長も市のHPで述べているように、地区計画を定める住民の合意形成が極めて困難である。地区計画で代替することは無理がある。

5、市からの情報提供
本件の改正にあたって、平成22年9月1日「都市計画高度地区の見直し検討」案を公表し、2回に亘ってPC等を実施し市民の意見を聞き、時間をかけて今回の素案縦覧に至ったことは評価できる。しかし加えてもっと市から情報提供があったらと思う。
@千葉市の建物現況や、他自治体の導入例等の情報提供が、市民が考え、判断する上で必要不可欠である。因みにさいたま市では35ページにわたる報告書を提供している。
A市のHPにある徳永副市長の情報によれば「この特例の対象となるマンションは約1,060棟(5万戸)で、そのうち約300棟(2万7千戸)は最高高さ制限を超えています。最高高さ制限の対象内で敷地面積5000m2以下の分譲マンションは約340棟(1万5千戸)です。そのうち約120棟(8千戸)は最高高さ制限を超えています。」とあるので、千葉市は現況建物の調査情報を持っていると思われる。

最後に
今後都市計画手続きが進み、都市計画審議会が開催されることとなっている。今回の案件は、市民の考え方の違いや利害の違いが問題となる重要な案件であるので、都市計画審議会においては十分な情報、例えば千葉市の建物現況や他自治他の導入例等の情報を基に、委員間の活発な議論も行い、熟議をして判断をしてほしい。
サポーター会員 家永尚志




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