NPO再考

1998年のNPO法の制定以来、NPOの法人制度はいろいろな角度から吟味され、国内のNPOは着実に進歩してきているようにみえる。
民法34条の特別法として産声を上げたNPO法が昨年に改正されたことから、国はこれからのNPO施策に一定の方向づけを示したと思われる。それは改正NPO法に不完全ながらも税制優遇を受けることができる仕組みを明文化し、資金の出所に網をかけたということでもある。
これはNPOの収入に占める寄付金の割合で仕分けするもので、これまで暫定的といわれてきた国税庁長官が認定していた認定NPOが、都道府県又は政令市(所轄庁)の長が認定する仕組みに変わった。これによって、旧制度と比較して、寄付金や会費収入が多いNPOは認定NPOになりやすくなった。しかし、これは一方でNPOにとって幸運ともいえるが、世の中はうまい話ばかりではないように、この仕組みをはじめとしたNPOを取り巻く新しい環境にうまく向き合っていかないと多くのNPOが危機に瀕する事態が起こるかもしれない。
NPO法は、正式名を特定非営利活動促進法というように、「促進法」である。促進がこの法律を中心に展開されるなら、行政の関与が一層強まり、全国で画一的なNPO活動が展開されるようになり、行政の下請的なNPOや天下りの受け皿が増えていくことが懸念されている。
もちろん、これまでのNPO認証制度は、一定の要件を満たせば、誰もがNPO法人を設立でき、行政の恣意的な判断を排除してきたが、法律改正によりそれは建前になるかもしれない。認定NPO法人を認定するのは所轄庁の長でも、認定の可否は第三者機関が行うので心配はいらないという反論が出てくるだろうが、その第三者機関の委員を誰が任命するのか。所轄庁の長が任命するのであって、市民ではないのである。単純にこの方法だと、行政が市民を活用する従来型の市民参加と変わらない。
一方、中央の政権が変わり、このNPO法の改正に前後して、市民が主役の「新しい公共」という言葉が行政や一部のNPOによって喧伝されてきた。市民が主役というのは当然だが、今の状況は行政が前面に出すぎていて、市民の影がややもすれば薄い。これは、ここ数年、中央政府からの市民の社会的活動に対する補助金が増えたこと、それを地方自治体が協働事業の名のもとにそれをNPOに注ぎ込んでいることと関係している。その金額は、これまでの市民活動への対応と比較すれば決して少ない額ではないが、全てのNPO活動に十分な金額ともいえない。断っておくが、補助金を増額しろと主張しているわけではない。ここでは補助金の使われ方が必ずしも適当とは言えず、行政とNPOやNPO同士の中に余計な緊張関係をつくりだしていることが気になる。
一定の補助金を多くのNPOに分配しようとすれば、無理や不透明な要素が加わるのは仕方がないという意見もある。例えば、千葉県の公募事業から公開審査の仕組みが消えて久しい。申請する企画の中に企業秘密が含まれているというのが公開審査を行わない理由とされている。しかし、NPO法は、NPOが不特定多数の利益を目的に、誰もが参加できる組織であることを規定しているのだから、この理由は少々怪しい。そこには、一部を隠匿することでの一方的な調和へ試みは感じられても、NPO法に正面から向き合う純粋さはない。
行政には相応の役割を果たして欲しいが、やりすぎるとマイナス展開も多くなる。補助金行政は、NPOに行政への依存体質を生じさせ、むしろ市民事業の自立を蝕むことも多い。また、一時的な補助金では、NPOは、事業も雇用を安定させることができない。
それでも、行政が積極的な分だけ、短期間に新規のNPO活動が増えていく。ボーンセンターは、昨年度に700を越える世帯が暮らす団地「稲毛スカイタウン」のリーダー養成講座を企画運営、今年度は幕張ベイタウンの住民円卓会議に関わっている。詳しい内容は次回に述べる。これは、地元住民がタウンマネジメントに主体的に取り組む一歩として注目されるが、このことも行政の現在の取り組み姿勢を反映しているともいえる。ボーンセンター何ができるか、再考する頃合である。

以上

栗原裕治(副代表)


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