〔研究レポート〕
これからのコミュニティセンターと市民管理(前編)

0.はじめに

千葉市は、今年7月に「2006年4月1日から本格的に公の施設に指定管理者制度を導入するための指針」を発表した。指定管理者制度とは、これまで公の施設は行政の直轄か、あるいは民間管理の場合は財団法人、社団法人等の行政が出資している公益法人に限られていたが、その制約を取り払い、市民団体や株式会社も管理者になれる制度である。既に、千葉市では新設の公の施設(千葉市斎場、千葉アイススケート場、蘇我球技場[サッカー場])の指定管理者の募集が行われている。
千葉市には、国の法律で指定管理者制度が適用できない施設を除いて300を超える施設が指定管理者制度か直営かの二者択一の対象となる。指定管理者制度に移行するには、現在の公の施設の設置条例を改正し、指定管理者の公募を行う等の手続きが必要だが、千葉市の指針によると来年の9月議会が条例改正の山場となっており、残された検討期間は来年夏頃までである。
ボーンセンターでは、これまで市民が身近に利用している公の施設は、行政の直轄や民間企業が管理するのではなく、市民団体が管理したほうがよいことを主張し、千葉市との意見交換会等も自主的に開催してきた。
今回の研究レポートは、そうした活動の一環として、今年9月の約一ヶ月間をかけて市民が身近に利用している千葉市内の13のコミュニティセンターの現状を視察・観察し、センター長に話を聞くなどして、今後のコミュニティセンターの管理・運営のあり方、市民管理の可能性について研究したものであり、その成果については千葉市に政策提言を行いたいと考えている。少々長い記述なので、今回と次回のピーナッツ通信の2回に分けて掲載することにした。前半の第一回は、「千葉市におけるコミュニティセンターの現況と課題」。次回掲載の後半は、「コミュニティセンターの可能性と指定管理者制度」である。
なお、この研究は千葉大学のインターンシップの学生をボーンセンターが受け入れて行ったもので、千葉大の園芸学部の学生(大谷仁美さん)及びボーンセンター市民研究所を担当する運営委員の谷口多恵と栗原裕治の3名が中心になって実施した。1.千葉市におけるコミュニティ
センターの現況と課題

(1)市民から見たコミュニティセンター
千葉市のコミュニティセンターは、公の施設として住民が利用できる基本的要素を施設の中に持ち、管理している。
@ロビー、A講義室・会議室・研修室・サークル室等、B多目的ホール、C調理室、D音楽室、E工作室、F図書室、G体育館、H静養室、I幼児室などが主なものだが、これら要素に事務室、廊下、階段、トイレ、湯沸し室、倉庫、機械室などが加わると施設としてのコミュニティセンターの骨格ができあがる。そして、全てのコミュニティセンターに和室がある。
今回の研究は、個々のコミュニティセンターについて分析・評価を行うことが目的ではない。ここでは、市民の目から見た現在の千葉市のコミュニティセンターがどのような構造になっているかについて記述する。

●ロビー
ロビーは、施設の玄関付近の事務室(受付)から見える場所に位置し、天井が高く、ゆったりとしたつくりで、主にサークルの待ち合わせ、サークル活動後の雑談場所として利用されている。寄贈されたテレビをロビーに置いてあるコミュニティセンターもあり、画面に見入る高齢者の姿がある。
ロビー又はロビー付近のコーナーには、飲み物の自販機が置かれ、たまに軽飲食を摂りながら雑談する若者もいる。しかし、ほとんどは中高年の姿が目立っている。
ロビーは施設の顔だけにプランターや大振りな絵画などが配置され、施設案内やサークル案内、千葉市関連のお知らせなどが置かれたコーナーや掲示板がある。
施設管理者は市民が持ち込む情報に気を配っている。政治、宗教、営利目的の情報は禁止しているが、明確な判断基準というものがないので、施設管理者の判断で断ることも多い。「最近、センター長の申し合わせでNPOのチラシやポスターは掲示できるようになった(センター長)」という。新聞や雑誌はほとんど置かれていない。「新聞や雑誌を置きたいが予算がない(センター長)」という。
固い椅子やテーブルでなく、ゆったりとしたソファーセットが置かれている施設も多い。ソファーは、中高年にはよいが、若者にはかえって居心地が悪い場所になっている。
2階、3階にも椅子やテーブルが置けるスペースがあるが、ほとんどが片付けられている。理由は、「管理者の目が届かないところに長時間たむろされるのは管理の上で問題なので…(センター長)」ということ。目の届かないスペースは、むしろ居辛くするように配慮されている。コンビニの前や路上に若者がたむろする姿が増え、コミュニティに若者の居場所がなくなっているといわれているが、コミュニティセンターにも若者の居場所はつくられていない。
全館禁煙あるいは分煙になっていて、ロビーで普通に喫煙できない。

●講義室、会議室、研修室、サークル室
講義室、会議室、研修室、サークル室などの部屋は、主にサークル活動に貸している。施設によって部屋の名称が若干異なることもあり、また、同一施設の中で同じような部屋が違う名称になっていたりする。たぶん、開設当初は使用目的がはっきりしていた部屋が、いろいろなサークルが増える中で少しずつ多目的化し、同じような使われ方になったように思われる。
部屋は団体利用が原則で、個人で利用することはできない。また、利用するサークル(団体)は事前の登録が必要である。この登録では代表者等の連絡先や使用目的等のほかに、「千葉市の在住・在勤者であることを確認するため(センター長)」に会員全員の名簿を提出することになっている。かなり厳格に名簿提出を求める施設と、ゆるやかな施設とがある。職員が交代で管理しているので、職員によって対応が違うという利用者の声もある。「嘱託職員やアルバイト職員を含めて特別な職員研修は行っていない(センター長)」という。
サークル(団体)の会員は、基本的に入会退会が自由なので流動的であり、多少厳格に名簿提出を求めたとしても形式的になりがちである。他方、あまり厳格な名簿提出は、気軽に施設を利用しにくい要因になっている。また、全ての会員の住所等を記載したサークル名簿の内容は一般的には個人情報であり、施設の中でどのように管理されているのか、気になるところである。
施設によって80〜200を超えるサークル(団体)が登録している。「中高年のサークルが多く、歴史のあるサークルは高齢化が進んでいる(あるセンター長)」というように、一部の施設を除いて若い年齢層のサークル(団体)は少ない。「自治会やNPOが利用申し込みをすることもある(あるセンター長)」ということだが、レクリェーションや趣味活動中心の共益的なサークルの利用がほとんどで、公益の推進やコミュニティの課題解決に貢献するタイプの団体の利用は少ない。コミュニティセンターは今年度から通年開館になっているが、登録サークル数はそれほど増えておらず、新たに開館となった月曜日の部屋の利用状況には余裕がある。
施設によって異なるが、平日の昼間の利用が多く、夜間や祝日の利用はそれほどでもない。「夏休み期間中は、学習室として学生の個人利用に開放している(あるセンター長)」など若者のニーズに応えようとする施設もあるが、「昼間は部屋を遣り繰りするようなゆとりがない(あるセンター長)」という声もある。

●多目的ホール
多目的ホールは、「一番人気があり、なかなか思うように利用できないサークルもある(センター長)」という。小規模な部屋を多目的室にしている施設もあるが、多目的ホールのゆとりのある広さは利用者にとって魅力的で、予約が殺到している。「なるべく申込者全員に公平に利用してもらおうと抽選にしている(あるセンター長)」など、施設ごとに工夫をしている。しかし電話やファックスでの申し込みができず、施設に出向かなければならないなど、遠距離からの利用者にとっては厳しい条件になっている。
多目的ホールは、テーブルや椅子を並べれば、映画会、コンサート、サークル発表会、時にはフォーラム、ワークショップにも使えるし、テーブルや椅子を片付ければ、軽い運動やダンスにも使用できる。最近はダンスや軽い運動など、ソフトに身体を動かすサークル活動が盛んで、そうしたサークルのために鏡を取り付けている施設も多い。

●調理室
併設の保健センター(保健センターとコミュニティセンターの複合施設がある)の調理室を利用しているコミュニティセンターもあるが、調理室はコミュニティセンターの基本要素の一つといえる。しかし、調理室の中で試食程度はできるであろうが、正式に食事ができるような場所は施設の中にない。現代のコミュニティには自由で多様な対話が必要と思われるが、地域にはサービスを受けることができる施設はあっても、市民が自ら管理し、サービスを提供し自由な対話が楽しめるくつろげる場所が不足している。コミュニティセンターには、もちろん食堂・レストラン・喫茶店の類もない。
「利用者に自主的に管理してもらいたいが、トラブルもあるので、むしろ利用者のほうが行政がしっかり管理することを望んでいる(あるセンター長)」という。調理室に限ったことではないが、そうした理由もあって施設にいろいろな管理上の規則ができている。それらの規則については、利用者はほとんど納得させられているが、だからといって全てに納得しているわけではない。「調理室は、昔は人気があったが、以前ほど使われなくなっている(あるセンター長)」という。

●音楽室
コミュニティセンターには基本要素として音楽室がある。しかし、防音対応が十分でない施設が多く、打楽器など音の大きな音楽活動はできない部屋が多い。「ヘッドホンで音楽が聴けるような施設が若者には人気があるようだ(あるセンター長)」など、大きな音を好む傾向がある利用者にはコミュニティセンターの音楽室は使い勝手が悪いのかもしれない。
コーラス等の音楽サークルも減少傾向にある。音楽を使ったダンス系のサークルは人気だが、こちらは主に多目的ホールを利用する。また、音楽室にはピアノがあるが(音楽室以外のロビーにおいている施設もある)、特別な企画で利用する程度で、こまめに調律などはしていない。
「高齢者にはカラオケに人気がある。ビデオデッキを持ち込む利用者もいる(あるセンター長)」という一方で、「音楽室をカラオケに利用する人はほとんどいない(あるセンター長)」と、施設によって異なっている。

●工作室
「工作室は使われなくなってきている(あるセンター長)」ようで、「以前は教える人と教わる人がクラフト倶楽部のような組織をつくっていたが、そのようなサークルは減っている(あるセンター長)」という。確かなことはわからないが、家庭用ゲーム機の普及など、身近に手軽な娯楽が増えたことなどが、工作室が利用されなくなっている原因のようだ。施設によっては、利用者がノートパソコンを持ち込んでパソコン教室を開催しているサークルもあるということだが、千葉市のコミュニティセンターには貸出用のパソコンはない。ゲーム機などはもちろんない。
「夏休みや休日にクラフト教室のような企画をすれば子どもや親子に人気があると思うが、そうした企画を自主的に行うのは予算的にも難しい(あるセンター長)」という。

●図書室
コミュニティセンターと本格的な図書館(教育委員会所管)が併設されている複合施設は、利用者が多く、それがコミュニティセンターの利用状況にも影響している。
コミュニティセンターで図書室を持っているところは多い。千葉市の図書館ネットワークが現在ほど充実していなかった時代は、図書室はコミュニティセンターの重要な要素であったと思われる。図書室には、現在も一般事務とは異なる専属アルバイトが配置されている。
しかし、現在の図書室は図書購入予算が年に3万円或いは5万円とかで、ほとんど新刊を購入することができない。児童書が目に付く図書室が多いが、古い本が多い。「寄付の申し出があるが廃品が多くてほとんど使い物にならない(あるセンター長)」ということで、対応に頭を痛めている。

●体育館
体育館が別棟になっている施設が多い。利用者は低料金だが施設使用料が必要である。個人利用が可能だが、「2人以上で行う種目は、利用者複数での申し込みが必要(あるセンター長)」という施設もある。
種目の中心は卓球、バドミントン、バレーボールで、バスケットボールができる施設とできない施設がある。施設によってインディアカなど、珍しい種目ができる施設もある。
「ママさんバレーが盛んだった時期もあるが、今はそうでもない(あるセンター長)」という。それでも体育館の利用者はかなりいる。さすがに激しい運動をする高齢者は少ないが、中年に混じって若者の姿もある。
千城台コミュニティセンターには体育館がないが、個人利用ができるトレーニングルームや身体を動かせるヘルシーホールがあり、中学生や高校生にも人気がある。新しいコミュニティセンターの要素を感じる。
中央コミュニティセンターにはプールがあり、これも人気がある。また、他の施設にはない柔道場や剣道場なども中央コミュニティセンターにはある。

●静養室
シルバー手帳を提示すれば、高齢者が個人利用できるのが静養室で、和室やサンルームを静養室にしている
施設が多い。和室には将棋や囲碁などの道具があり、お茶を飲みながらゆったりと雑談できる。サンルームでは、健康椅子に腰掛けて気持ちよさそうにしている。静養室は、まさに高齢者の居場所という感じがする。しかし、「同じ人が繰り返し利用する傾向がある(あるセンター長)」という。
また、畑地域、蘇我地域、幕張地域など、25年以上前に開設されたコミュニティセンターには、浴室がある。民間の銭湯施設との関係から、入浴できる時間は正午から午後3時までの3時間だが、浴室を含む休憩室は高齢者の居場所として人気がある。しかし、エネルギーはガスを使用しており、エネルギー費がかなりかかっている。

●幼児室
幼児室は就学前の幼児を遊ばせる場所である。特に保健センターが併設されている施設では、子育て支援の相乗効果が期待できる。
一人以上の保護者が付き添うことを条件に利用できるが、サークル単位でないと使用できない施設が多い。一方、「雨天のときは子どもを遊ばせる公園などが使えないので、個人利用も許可している(あるセンター長)」という施設もある。
コミュニティセンターのほとんどの部屋は、目が届かないという理由で、利用者がいないときは鍵がかかっているが、幼児室も例外でない。しかし、穴川コミュニティセンターは、事務室から見えるところに幼児室があり、鍵をかけずに部屋を開放し、受付に声をかければ簡単に利用できる。

●その他
土気あすみが丘プラザは、地域一帯を開発した区画整理組合が千葉市に寄付した施設で、概観も内部も立派な建物である。施設内に開発のときの出土品が展示されている資料館がある。
この施設は、コミュニティセンターだけでなく公民館の機能を合わせ持っており、公民館としての年間50万円の事業予算がある。
どのコミュニティセンターも給湯室でお湯を調達して、部屋でお茶を飲むことができる。ポット、急須、湯飲み茶碗は、給湯室に備えられているものを自由に利用できるか、受付で貸し出してもらえる。もちろん、借りた道具は洗って返却する。茶葉は自分たちで持ってくることになっている。

(2)利用者と利用実態
千葉市のコミュニティセンターを訪問すると、主に次の4つの目的で運営されていることがわかる。

@高齢者の居場所
A趣味・レクリェーション等のサークル活動への部屋貸し
B子育て支援
C生涯学習

●高齢者の居場所
千葉市のいずれのコミュニティセンターも、どちらかといえば高齢者に優しいつくりになっている。ロビーのソファー、和室の豊富さ、和室やサンルームを利用した静養室、そして古い施設によっては浴室が残っていて、高齢者が利用しやすいように配慮されている。いわば高齢化社会が進展していく中で、ある程度の必要な機能を備えている。また、コミュニティセンターという名称は年寄りくささがなく、利用する高齢者にとってある種の心理的抵抗も少ないと思われる。
しかし、古く開設された施設は、予算の関係もあり、バリアフリーへの対応が十分とはいえない面もある。また、「利用する高齢者はだいたい決まっている(あるセンター長)」というように、利用者が特定の人に固定され、大きな広がりがない。これまで利用していない高齢者を新たに引き付ける企画が必要ともいえる。しかし、多くの高齢者がコミュニティセンターに集中し、過密状態になっても居心地は悪いので、もっと当たり前の居場所がコミュニティセンター以外にたくさんあったほうがよいであろう。

●趣味・レクリェーション等のサークル活動への部屋貸し
コミュニティセンターの中心的な事業はサークルへの部屋貸しで、サークル活動にとって必要な施設であることは間違いない。多目的ホールのような人気のある部屋は、時間帯によっては利用申込者が殺到し、抽選になることもある。
一方で、利用者が減少している部屋や利用者が少ない時間帯もあり、利用実態と新たな利用の可能性を勘案した見直しが必要な時期に来ているように思われる。
そうした中で、コミュニティセンターは全体的に施設管理者の管理志向が強い気がする。サークル登録の際の会員名簿提出の厳格さ、空いていても部屋を連続使用できない融通性の不足、施設管理者の目の届かないスペースになるべく人が居られにくくするなどの措置、サークル使用中心の利用方法など、いたるところに管理優先の姿勢が見受けられる。
「限られた人数や予算での管理には限界があり、効率的かつ平等に管理するために利用者を制限することはやむをえない(あるセンター長)」というのが管理者の実感であろう。また、利用者側にも問題がある。例えば、「いくつものサークルを登録して、部屋を独占しようとする利用者もいる(あるセンター長)」という。こうした管理者の本音は、利用者や地域住民には伝わっていない。全てを施設管理者に任せきりの状況が続いていて、コミュニティセンターであるのに地域住民は施設の管理・運営に関心がなく、管理者との対話がない。課題が共有されていないので、コミュニティにとって重要な人権の尊重や信頼関係の構築ができにくい。施設管理者は、少人数の管理体制で公平かつ安全に運営していくことに一所懸命で、そのために管理が厳格になり、そのことが新規の利用者や新しい地域活動の障害になっている。サークルメンバーそのものが高齢化し、若い人がなかなか入りにくい。施設管理者に問題があるというよりも、行政による一括管理のシステムに限界があり、行政と地域住民が協働して管理するような新しい管理体制を検討する必要がある。
●子育て支援
少子社会の中で、市民の子育て支援に対する需要は大きい。市民には地域の良好な環境の中で子どもを育てたいという欲求があり、そういう意味では大きな児童館を一館つくるよりも、コミュニティセンター等の身近な子育て支援機能が強化されることが望まれる。しかし、幼児室はあるものの、小中学生を含む広い意味での子育て支援に対するコミュニティセンターの機能は十分でない。
子育て支援は地域の課題であり、コミュニティセンターだけで取り組むものではないし、地域には地域子育て支援センターや子どもルーム等もあるのだが、そうした施設との連携がないし、施設間をつなぐ人がいない。「小学生の利用は午後5時まで(あるセンター長)」、「子どもや学生が登録しているようなサークルはない(あるセンター長)」というのも、管理する側の大人の都合だけを一方的に子どもに押し付けているような気がする。
コミュニティセンターには子どもが参加できる企画(スケッチ大会、クリスマス会、七夕祭り、映画会など)は少なく、それは予算が少ないことが一因とされるが、子どもの企画を実践している施設が全くないというわけではなく、住民ボランティアが中心になって開催している施設もある。
「サークルの中には、子育て中のお母さんのグループや子育て支援サークルもある(あるセンター長)」ということから、普段は鍵がかかっている幼児室の管理をそれらグループに任せていくことも考えられる。

●生涯学習
千葉市ではコミュニティセンターを生涯学習の拠点の一つに位置づけている。
しかし、「自主事業は、予算がないので秋のコミュニティセンターまつりくらい。それも弁当代を負担するくらいに経費を抑えている(あるセンター長)」、「文化人に講話や実演をお願いすることがあるが、人に紹介してもらい交通費程度の謝礼でなんとかしている(あるセンター長)」というように、コミュニティセンターには事業予算がほとんどないという。「少ない予算の中で多くの住民が楽しめる事業ということでコミュニティまつりをやっと開催している(あるセンター長)」というのでは、生涯学習の企画に予算が回ることはほとんどない。コミュニティセンターでは、サークル活動を通して利用者自らが自発的に学ぶことが主な生涯学習活動となっている。
他方、公民館とコミュニティセンターの違いが市民にはなかなかわかりにくい。「生涯学習」という言葉の受け取り方や対象分野への関心が人によって異なるために何とも言えない面はあるが、年間の企画本数などから公民館が主要な生涯学習拠点という印象が強い。コミュニティセンターが市民局、公民館が教育委員会と、それぞれの所管の違いはあるが、「他の施設との連携は機材の貸し借り程度(あるセンター長)」というのではなく、千葉市の施設としてもっと生涯学習分野全般にわたって両者の連携があってもよいと思われる。土気あすみが丘プラザは、コミュニティセンターと公民館の機能を合わせ持っている。

(3)管理体制
中央コミュニティセンターは、本庁の地域振興課が直接管理しており、他のコミュニティセンターは各区の地域振興課が管理している。土気あすみが丘プラザは、独立した条例により設置されているが、他の10施設は一つの条例によって設置されており、千葉市のコミュニティセンター管理マニュアルもほぼ統一されている。

●管理スタッフ
コミュニティセンターの管理スタッフは、市職員2名(センター長を含む)、嘱託2名、アルバイト6〜10数名で、これらのスタッフがローテーションを組んで施設を管理している。例えば、平日の昼間は、市の職員が勤務し、夜間や土・日・祝日は嘱託が勤務している。
他に、清掃等のメンテナンス関係を民間に委託しており、夜間の警備はほとんどシルバー人材センターからの警備員派遣となっている。「夜間警備はセコムに委託しており、夜間から朝にかけて無人になる(あるセンター長)」という例外もある。
嘱託は全て市職員OBや学校教師OBの再雇用の場になっている。「嘱託の公募はしていない。市の人事のほうから回ってくるので採用にはタッチしていない(あるセンター長)」という。
アルバイトの募集は、ハローワークで募集というのが多いが、施設内に募集の張り紙をしたり、区報で募集したり、運営委員や顔見知りの利用者に紹介してもらうこともある。中には「自分でこれと思った人に声をかけている(あるセンター長)」という施設もある。
「アルバイトは一人週19.5時間を限度にしている(あるセンター長)」ということで、社会保険料等を含む全体の人件費の圧縮に努力している。

●年間予算
年間予算は施設の規模等によって異なるが、4,500万円〜7,500万円程度と思われる。アルバイトの人件費、委託費、修繕費、光熱費などが主なもので、その他の事業予算はほとんどない。新しい施設ほど光熱費等の負担が大きく(全体の3分の1を占める場合も)、照明を落とすなど、省エネに努めている。
図書室の図書購入費も3〜5万円程度。毎年のコミュニティまつりも、ほとんど出費を抑えており、他の自主事業を行う余裕は限られていて、「運営委員や登録サークルの協力で、なんとか子どもや高齢者のためのイベントを行っている(あるセンター長)」という施設もある。
「区役所に隣接しているので経費の一部を肩代わりしてもらっている(あるセンター長)」、「周辺施設を含めて清掃等の管理を行っている(あるセンター長)」など、施設によって管理の範囲が異なる場合もある。

●バリアフリー対応
新しい施設は、バリアフリー対応が施されているが、中央コミュニティセンターを含めて畑地域、幕張地域、蘇我地域の各コミュニティセンターのような古い建物は、建設当時にバリアフリーの発想そのものが一般化していなかったこともあり対応が十分でない。空調設備なども古く、音が気になる施設もある。建物の老朽化が進んでおり、そうした対応も今後の課題であろう。
階段に手すりをつけたり、トイレを改修したりしているが、「補修・改修予算がないので、毎年少しずつ改善している(あるセンター長)」という。
点字ブロックも、エレベーターの前に少し施されている程度である。比較的バリアフリー対応ができている新しい施設では、「車椅子の利用者が増えているようだ(あるセンター長)」との感想がある一方で、「障害を持った利用者は非常に少ない(あるセンター長)」との声もある。特に視覚障害の利用はないという。

●駐車場
車利用の来館者が多いので、ほとんどの施設で駐車場は不足気味である。「徒歩や自転車利用の協力を促しているが、思うようにいかない(あるセンター長)」という。周囲に公設施設(複合施設である場合も含めて)がある場合は協力して駐車場を使っているが、他でイベント等があると、利用者が駐車場を十分に使えない場合もある。蘇我コミュニティセンター付近の路上駐車はほぼ慢性化している。また、混雑時に臨時の整理員が駐車を誘導している施設もある。
駅に近い施設では、コミュニティセンターの利用者以外の駐車もあるという。「駐車場に他市のナンバープレートの車をよくみかけるので調査している(あるセンター長)」という施設もある。

●住民との協力関係
コミュニティセンターまつりなどでは、施設の運営委員や登録サークルの協力があるようだ。「管理者はサポートするだけで、運営委員が中心になってコミュニティまつりが実施されている(あるセンター長)」、あるいは「コミュニティまつりはサークルの協力なくして考えられない(あるセンター長)」という。また、「イベントなどの協力関係は目に見えやすいが、目に見えにくい部分での利用者や近隣住民との協力関係もある(あるセンター長)」という。施設の中庭の草花に水遣りをしている高齢者を見かけたりもした。サークルが室内を活け花で飾っている施設や寄付された玩具が整然と並んでいる幼児室もあった。
しかし、「利用者は汚さないように使用する」また、「椅子やテーブルを利用したら最初の状態に戻して帰る」といった利用ルールを守ることが協力というような施設管理側からの一方的な協力要請が基本になっている。
コミュニティセンターは建物の内も外も清掃が行き届いている。施設管理者と清掃業務等の派遣職員が協力して植物を育てていたりする。しかし、そうした作業に地域住民が参加している気配はあまり感じられない。「ボランティアに期待していない。あれこれ頼みにくいし、限られた時間内に仕事を済ませるには、業者に委託したほうが効率がよい(あるセンター長)」という。

●運営委員会
運営委員会は各コミュニティセンターに設置されているが、本庁地域振興課が直営している中央コミュニティセンターは運営委員会を置いていない。
「現在のコミュニティセンターの事業は、ほぼ決められた範囲の市民サービスの提供であり、運営委員会の役割は少ない(あるセンター長)」という意見が示すように、ほぼ限られた日常の事業をこなしているだけのコミュニティセンターの運営委員会の役割は曖昧になっている。
「昔は、運営委員に企画提案などもお願いしていたようだが、予算が厳しくなってそうしたことがなくなってきた(あるセンター長)」という。このような現状に危機感を持っているセンター長もいて「もっと若い人に運営委員になってもらいたい。地域組織の代表に推薦してもらうのではなく、こちらでやる気のありそうな人を見つけて委員をお願いするようにしている(あるセンター長)」という。
現在は、運営委員を公募している施設はないが、「時代の流れであり、今後は運営委員の公募も必要と考えている(あるセンター長)」という意見もある。
各コミュニティセンターの運営委員の定数は15人となっている。全ての施設で一律でないかもしれないが、「委員の一回の報酬は2,000円で、ほぼ毎月運営委員会を開催している(あるセンター長)」という。年に10〜12回程度の運営委員会を開催している施設が多いが、年4回程度の開催という施設もある。
構成メンバーは自治会や自治会連絡協議会の代表、民生委員、教育関連や福祉関連の代表、登録サークルの代表などだか、「ほとんどがあて職であることは否めないが、運営委員の活動内容よりも地域組織を代表する人がコミュニティセンターの事業を了解しているという事実が重要であり、運営委員は十分に役割を果たしている(あるセンター長)」という。
運営委員会は、施設の年間計画や年間予算、あるいは施設管理者の事業報告や決算報告の承認などが主な役割になっている。実際に切り詰めた予算の中で頑張っているのは、運営委員ではなく、施設管理の職員であろう。運営委員も高齢化していて若い運営委員はほとんどいない。2年任期だが4〜5期も継続している委員も多い。
(副代表・栗原 裕治)

 



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