◇ 四国訪問記・その2〔農村地域起こし編〕
愛媛県内子町農村活性化事業と
千葉市いずみグリーンビレッジ構想


1.内子町農村活性化事業

1−1.「石畳の宿」
(http://www.town.uchiko.ehime.jp/sightseeing/kankou_ishidatami.php)

内子町の山間部、石畳地区に存する、町設民営の宿泊施設である。当地区の上流部にあった民家を移設して作られた。棚田と、清流と、森に囲まれた美しい風景の田圃の中に佇んでいる。この施設の最大の魅力は、この地区でしか味わえない、心のこもった、手間をかけた「もてなし」である。農山村が育んできた心を癒してくれる環境、懐かしい民家の佇まい、そしてこの地でとれる農産物、林産物を使った食の味わいと、人情に触れることができた。
石畳地区は、昔は石を切り出したことから付いた名前と言われる。しかしご多分に漏れず過疎化が激しく、条件に恵まれないこの地区の再生は困難な状況であったと思われる。そのような状況の中、この地区の若者12人が5万円ずつ出し合って、40年前には廃れてしまっていた水車を復活したことから、そもそもが始まる。地区の大人(長老)や嫁さんはそんな無駄なことをやってと批判的であり、反対であったとのこと。しかしそれが国から表彰されることによって雰囲気が変わってくる。そして、町の職員の力も相まって、石畳の宿がつくられ、口コミでその良さが伝わり、欧米からも人が来るようになり、今や事業採算がとれる迄になった。
この宿泊施設事業は石畳地区のお母さん達が全てを取り仕切っている。私達が宿泊したときのメイン料理は(全てが素晴らしいのだが)この地区で採れた山菜等の葉っぱ17種類の天麩羅であった。当番のお母さんが17種類一つ一つ説明してくれる。揚げたての天麩羅は大変美味であった。通常の和風旅館と違って、一度期に料理が並ぶのではなく、西洋レストランのように頃合いを見計らって出てくる。朝食は、前述の水車小屋で突いた米で炊いたご飯と、昨夜お世話して下さったお母さんの家の地鶏が生んだ卵等々である。夜は、宿直の方が、近所の川で源氏蛍が見られと案内してくれた。星空の綺麗な、空気の美味しい、温かいもてなしの里であった。もてなしとは心のこもった、手間を惜しまないサービスであると改めておもった。
立派な箱物を作っても、運営する人の心がこもっていなければ、直ぐに汚くなり、ありきたりの料理を出し、宴会需要を見込む。これでは時代のニーズに合わず、利用者が激減し公営事業が重荷になっていくのは当然の帰結と言えよう。
(石畳の宿)


1−2.内子フレッシュパークからり
(http://www.islands.ne.jp/uchiko/karari/)

一応道の駅と看板が付いているが、全国を風靡している国土交通省ご推薦の「道の駅」事業というよりも、町が自主的・主体的に進めた事業とのことである。
従ってか、所謂「道の駅」くさくないのである。道の駅はどこを見てもワンパターンにみえる。観光物産館を中心に、レストラン、休憩コーナー、そして直売所である。「からり」の直売所はまさしく「直売所」であって、地元の農産物、加工品しか扱っていない。他の道の駅では、例えば高知の窪川の道の駅では熊本産の人参を売っていた。それと「からり」は、規模も大きく、訪れた日は平日にもかかわらず相当の賑わいであった。
また大きな特徴は、「観光物産館」がないことである。善し悪しは別として、内子町の地域経済循環を考えるなら、他地域の観光物産を販売しても何の差別化にもならないし、内子町に落ちる付加価値もきわめて少ない。安易に流れず観光物産館がないことが新鮮であった。もう一つ吃驚したのが、パン・ソーセージ工場があることである。ここのレストランに出されるパンもここで作っているのである。直売所には作られた加工品が置かれていることはいうまでもない。レストランも付け足しのようなものでなく、施設の雰囲気、料理のレベル、接客サービスも良く、一流レストランであった。ついでながら、立地条件が素晴らしく川に面し、小高い林の中にこの施設があり、当然のことながら幹線道路沿いに立地している。
ところで公設民営の「道の駅」は民設民営のドライブインレストランにダメージを与えている。全国各地に「道の駅」ができ、そのブランドイメージからそれなりに流行っているところもあろうが、地域間競争で、負けたところは廃れ、地方自治体の重荷になっていくところも今後は出てこよう。

※「鞄燻qフレッシュパークからり」は、内子町と農協、町民373人(うち、農家158人)が出資して設立し、平成8年5月オープンした第3セクター。農産物直売所には350人が出荷者として登録しており、品数も年々増加し、430種類にも上っている。平成14年度の販売額は、3億9,000万円で、内子町の農業総生産額(28億5,000万円)の13.6%を占めている。「からり農産物直売所」への出荷者の年間平均売上げは110万円を上回り、1千万円を超す農家も出現しているとのことである。
(内子フレッシュパークからり)


2.千葉市いずみグリーンビレッジ構想
(http://www.city.chiba.jp/keizainosei/nosei/greenvillage/ )

構想地区は千葉市の市街地縁辺の農村地域である。この地区では従事者の高齢化、後継者問題と産業廃棄物等の不法投棄、市の最終処分場(跡地)問題が大きな課題となっている。市は都市と農村の交流を構想のテーマとして、いずみグリーンビレッジ構想の事業化を進めている。千葉市主催の公募市民による検討委員会が設けられており、その運営事業にボーンセンターは昨年度携わった。この構想は千葉市主導のものであり、残念ながら地元の方々の熱意はあまり感じられなかった。検討委員会では、地域資源の発掘活用、農産物直売事業、農産加工品事業等の検討を行っている。また事業の一つとして「道の駅」的なものを公設民営でイメージしているようであるが、誰が担うのか、どんな差別化戦略を構築するのか不分明である。また検討委員会には地元の方々がほとんど参加しておらず農産加工品開発にしても残念ながら机上の議論の域を出なかった。
この地域は、稲作をベースとして、大根や人参等が主要作目でもある。平地も多く、何を作っても良い農産物が採れ、少品種大量生産が成立する立地条件を有している。且つ兼業農家構造の成立要件も備えている。道の駅程度の直売では、従来の生業の代替になり得ない。農産加工品にしても同様である。地域起こしは地区の特性を活かしたものでなければならない。いずみ地区でも富田町のコスモス祭りや、下田町の谷当グリーンクラブ等の地元発意の地域起こしが動いている。これらをもっと支援していくことこそが本筋ではなかろうか。

(サポーター会員・家永 尚志)


 

 



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