◇ 四国訪問記・その1〔NPOサポートセンター編〕
公設、されど民営があたりまえの NPOサポートセンター

ボーンセンターの通常総会(5月22日)が終わった24日から28日、4泊5日で四国を視察した。昨年の北海道視察葉は、K1、K2、Sの運営委員3名だったが、今回は事務局スタッフのI氏が加わり4名の道中だった。
入梅前の好転に恵まれた四国山脈は、新緑が眩しく水量も豊富で快適だった。四国4県全てを回ったので、のんびりと観光名所や温泉巡りと言うわけにはいかなかったが(ほとんど海岸線に近づかなかった)、各所で食べた「うどん」の味とその腰の強さに感動、また、まちづくりや市民活動を推進する人たちとの新しい出会いがあった。
今回の四国視察の目的は、気になるまちづくり(地域おこし)の現場やNPOサポートセンターを訪れ、生の空気を感じ、土地の人の話を聴くことだった。初日に高松空港に降りて、香川県の県庁所在地高松市内を歩いた。「栗林公園」を散策し、千葉には珍しいほどの大型アーケードがある「丸亀商店街」を見学した。
2日目は、江戸時代に藍染で栄えた徳島県脇町の「うだつの町並み」を見学し、その後険しい山道を「上勝町町役場」に向かった。典型的中山間地の徳島県上勝町は、ゴミゼロ宣言の町、木の葉を金に換える彩産業の町として全国的に注目されている。
3日目は、徳島市から高速道路で一気に高知市へ。「高知市市民活動サポートセンター」を訪問し、活動状況について話を聴いた。その日は高知県西土佐村観光協会が運営する「カヌー館」の宿泊施設に宿泊。清流で知られる四万十川の空気を吸った。
4日目の愛媛県は「えひめ町並博2004」を開催中で、古い町並みを残す市町村がイベントで賑わっていた。宇和島市では、「宇和島城」、「伊達博物館」、国指定の名勝「天赦園」を見物し、その後、宇和町の卯之町駅周辺の町並、伊予の小京都といわれる大洲市の古い町並を見学、そこから遠回りして陶芸の里として知られる砥部町を回って内子町に着いた。内子町では、民家を移築した「石畳の宿」に泊まり、ちょっぴり田舎暮らしを体験し、源氏蛍まで見ることができた。
最終日は、午前中に内子町の「八日市・護国町並保存センター」を訪問し、内子町のまちづくり活動の話を聴いた。和蝋燭で繁栄した町並を案内してもらい、木蝋資料館「上芳我邸」や歌舞伎劇場「内子座」を見学した。午後は「まつやまNPOサポートセンター」を訪問し、そのまま松山空港から帰途に着いた。
盛りだくさんの旅行だったと思う。聴いたこと、出会ったこと、触れたこと、いまだに十分に消化しきれていない。
今回、四国視察報告の第1弾として、「高知市市民活動サポートセンター」と「まつやまNPOサポートセンター」を紹介する。

1. 高知市市民活動サポートセンター

四国視察の3日目、5月26日の午前11時頃に「高知市市民活動サポートセンター(以下サポートセンター)」を訪問した。サポートセンターは、高知県庁にも近い高知市たかじょう庁舎の2階にあった。同じフロアに高知市市民生活部まちづくり推進課があり、頻繁に情報が交換されている様子だった。
建物の入り口に私たちが午前中に訪問することが書かれた貼り紙があった。サポートセンターを訪問すると、NPO法人NPO高知市民会議の玖波井さん(理事)、中平さん、西村さんの3人の女性が迎えてくれた。この高知市が設置したサポートセンターは、運営をNPO法人NPO高知市民会議に委託している。サポートセンターの運営を支えているのは主に女性という印象を持った。
千葉市には、公設公営の「千葉市民活動センター」が2002年10月に要綱設置されているが、このセンターの今後の運営について検討するための情報収集というのが、今回の訪問の目的である。
高知市市民活動サポートセンターの成り立ちから質問すると、「まちづくり一緒にやろうや条例(高知市市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例)」と切っても切れない関係があるらしい。高知市では1993年から「市民との協働によるコミュニティ計画の策定事業」を開始しており、その過程の中でこのサポートセンターが1999年4月に開設されている。上記の条例についていえば、高知市は「高知市総合計画2001」でまちづくり条例の制定を位置づけ、2001年6月に条例案策定委員会(市民11人、市職員6人)を発足させ、19回にわたる委員会を開催し、ワークショップやまちづくりシンポジウムによる検討も行っていたらしい。条例案策定委員会は2002年7月に「まちづくり一緒にやろうや条例(仮称)の制定についての提言書」を市長に提出したようだが、12月に提言書の内容についてパブリック・コメントが実施され、2003年3月に市議会で条例制定を議決、4月に施行されている。実施に向けて試行されたパブリック・コメント制度は2004年4月に「高知市市民意見提出(パブリック・コメント)制度実施要綱」に結びついている。
このように、高知市の市民と行政のまちづくりは、制度と高知市市民活動サポートセンターが実施するソフト事業が絡み合って進行している。千葉市の「千葉市民活動センター」には、まちづくり条例、パブリック・コメント制度などの市民参加を保障する制度面の裏づけがなく、自治体運営への市民参加、市民と行政のパートナーシップが高知市に比べて遅れているように感じる。
それではNPOサポートセンターのNPOによる民間運営とは、どのようなものであろうか。高知市市民活動サポートセンターの運営主体であるNPO法人NPO高知市民会議の2004年度通常総会資料を見ると、2003年度の事業決算は、収入が43,915,115円、支出が35,660,819円、2004年度への繰越金が8,254,296円とゆとりがある。
収入のうち6,440,780円は前年度からの繰越金であるから、2003年度の収入は37,474,335円である。サポートセンターの運営を含む行政からの委託料収入は32,306,728円で2003年度の収入の86.2%を占めている。会費収入は収入の0.6%、講座・イベント開催による参加料の事業収入は4.5%であり、ボーンセンターのような民設民営のサポートセンターとは大きく異なる割合を示している。
支出を見ると、管理運営費が20,606,080円であり、事業費が15,054,739円となっている。管理運営費のうち職員の人件費が17,267,279円を占めており、委託料で十分に人件費がまかなえる委託契約になっている。家賃はなしであるから、事業費にもゆとりがある。運営主体のNPO法人NPO高知市民会議の経営にゆとりがあるということは、高知市市民活動サポートセンターの運営にゆとりがあることを示している。
高知市市民活動サポートセンターには、30人程度で使える大会議室と18人程度の小会議室、NPO高知市民会議の事務局と相談カウンター、チラシやパンフレットをつくりたい人のための作業スペース(コピー機、印刷機、紙折り機等と作業机)、パソコンコーナー、予約不要で軽作業や打ち合わせなどが可能なフリースペース、図書・ビデオコーナー、閲覧用パンフレット・冊子コーナー、情報掲示板などがあり、広さは「千葉市民活動センター」とあまり変わらない。千葉市民活動センターには貸しロッカーがあるが、高知市市民活動サポートセンターにはメールボックスが置かれていた。千葉市民活動センターにないのは、カラーコピー機、お茶・コーヒーコーナーといったところかなと思っていたら、印刷機、コピー機、マイク、デジタルカメラやビデオプロジェクターなど、市民活動に必要なほとんどの機器の貸し出しサービスがあると聞いて驚くと同時に、これは便利だろうと感心した。
NPO法人NPO高知市民会議の活動は、高知市市民活動サポートセンターの運営を中心に、ほぼ2つの組織が一体となって進められていて、NPO法人が公設のNPOサポートセンターを運営するということは、こういうことなのかと思わせる。月曜日〜金曜日の10:00〜21:00、土曜日の10:00〜18:00に開館しており、休館日は日曜日及び祝祭日と年末年始(12/29〜1/3)となっている。
具体的な仕事としては、ボランティア活動の紹介や市民団体の設立・運営等のアドバイス、貸会議室の貸出し機器の提供、各団体のイベント情報等の紹介や新聞記事等のNPO関連情報の収集及びファイリング、広報誌「えぬぴぃoh!」「まちファン」の発行、市民活動啓発イベントの開催、人材育成及び研修事業、NPOの役割やあり方等についての調査研究、パートナーシップ事業支援や他支援センターとのネットワークづくり、まちづくり活動支援、市民活動に関する出版物の作成及びサポートなどが挙げられる。
また、高知市では「第2回 公益信託 高知市まちづくりファンド助成事業」の募集が行われていて、熱心に紹介してもらえた。公益信託とは、委託者が一定の公益目的のために信託し、受託者(銀行)がその財産を管理・運営しながら、公益活動に助成する制度であるが、高知市まちづくりファンドの基金は3,000万円、委託者は高知市、受託者は四国銀行である(3,000万円の減少分は高知市が毎年補填している)。
この助成制度では、毎年応募者を募り、運営委員会(公開審査会)が公開の場で助成先を決めているが、「まちづくりはじめの一歩」コースでは5万円以内、「まちづくり一歩前へ」コースでは、総事業費の4分の3以内で上限30万円の助成となっている。高知県が高知全県の市民活動助成を目的とした「公益信託 こうちNPO地域社会づくりファンド」の委託者になっているが、「公益神託 高知市まちづくりファンド」は、高知市内の活動を対象にしている。
この助成制度では、公開審査のほかに、活動への助言や団体間の交流、中間発表会や最終発表会をとおして市民のまちづくり活動の支援や拡大を図ることなどを目的としており、高知市市民活動サポートセンターが応募・相談窓口になるとともに、これらの企画運営を行っているということであった。
高知市の人口はおよそ33万人であり、千葉市の約3分の1である。市民参加については、しっかりした政策を持ち、NPOとの協働を推進している。

2. まつやまNPOサポートセンター

まつやまNPOサポートセンターを訪問したのは、5月28日の午後2時過ぎで、チーフスタッフの黒川さん、スタッフの平岡さん、石丸さんの3名がわれわれを迎えてくれた。
まつやまNPOサポートセンターの占有スペースは、目測で千葉市民活動センターの3分の1程度であり、さほど広くない。ただ、同じ建物(コムズと呼ばれている)の中には、このNPOサポートセンターの他に、松山市男女共同参画推進センター、まつやま国際交流センター、松山市新玉児童館が入っており、会議室、交流コーナー、パソコンコーナー、印刷室などは共同で利用しているということであった。それならば、この広さも納得する。
開館時間は午前9:00〜午後9:00(日曜・祝日は午後5:30まで)、休館日は月曜日(祝日の場合はその翌日)と年末年始(12月29日〜1月3日)となっていた。「市民社会の創造」をミッションに掲げ、主な事業は、NPOに関する相談窓口、NPOに関する情報の受発信、簡単なミーティング場所ということらしい。
具体的には、場づくりとして「パートナーシップ・サロン」は行政がNPOに話題を提供する場であり、「NPO&市民トークライブ」はNPOが活動を語る場と位置づけている。
講座は、NPOが活動ノウハウを学ぶ「NPOパワーアップ講座」、NPOと行政の協働を実践するためのプロセスを学ぶ「パートナーシップ講座」、NPOの現状や課題を共有するための「NPOフォーラム」がある。
相談は、常時受け付けている「相談・質問窓口」、月に一回の「会計相談会」がある。
情報は、月刊情報誌「まっぷぅ」の発行、「ホームページ」の管理・更新、「ラウンジスペース」にはNPO関連の新聞情報、他団体の活動案内やお知らせ掲示板、松山市のNPO関連施策などの情報が見られるようになっている。コンパクトに事業が整理されているように思えた。
まつやまNPOサポートセンターの企画運営は、NPO法人えひめNPOセンターが松山市から受託している。NPO法人えひめNPOセンターの2003年度決算報告書を見ると、収入15,435,121円のうち、まつやまNPOサポートセンターの委託金収入が12,763,837円で、82.7%を占めている。高知市でも感じたが、このあたりの数字が公設民営のNPOサポートセンターの標準値のように思われた。
松山市とNPO法人えひめNPOセンターは、「まつやまNPOサポートセンター」事業企画運営業務委託契約書を結んでいる。それによると、委託金の約8割は職員の賃金及び社会保険料等負担分となっている。家賃はもちろん必要ない。事業費にゆとりはないが、なんとかやっていけそうなレベルかもしれない。この委託金は、千葉市市民総務課の「千葉市民活動センター」の管理を含むNPO関連事業予算とさほど差がないように思われる。松山市の人口は47万5千人で、千葉市の約半分である。千葉市の予算として同額を考えると、少し厳しいかもしれないと思った。

四国視察で訪問した2つのNPOサポートセンターは、どちらも公設の施設をNPO法人が委託管理をしていた。その契約額はNPOサポートセンターの運営を安定させるばかりでなく、受託者であるNPOの運営をも安定させていた。しかし、同じNPO法人に委託事業が継続されなかった場合、そのNPO法人がどのようになるのか、課題もあるように感じられた。
指定管理者制度については、どちらのNPO法人も行政と未検討ということであった。指定管理者制度についての質問については、これまでの仕組みがどのくらい変わるということがはっきりしないところがあり、少し不安そうな様子も感じられた。

(副代表・栗原 裕治)




BACK