四街道市の千葉市への編入合併問題
地域自治の形成、財政再建の視点で考える
2004.04

合併特例法の優遇策〜特例債・交付税優遇・合併補助金〜をテコに「平成の大合併」が進行しています。足元でも四街道市の千葉市への編入合併問題が持ち上がっています。
この争点となっている問題について、地域自治、財政問題の観点から検討しました。

■「市」=自治体から「区」=本庁の出先機関へ
合併すれば四街道市は四街道「区」になります。一定の自治権限を持つ東京都の特別区と異なり、指定都市の「区」は市長の事務を補助執行する内部機関としての行政区画に過ぎません。表1で人口が似通っている千葉市緑区との比較をしています。
区役所の事務の範囲や権限は弱く、財政についても出納事務や支払事務を行う程度です。
職員数も3分の一、議員数も5分の一です。区長は市長が選任し、区議会は存在しません。このように区役所に地域の特性に応じたきめ細かい行政サービスやそのスピードアップを望むことが困難なことは容易に想像できます。
一方、それをカバーするための市民の参加と協働によるまちづくりへの取組という点では、制度化も事業化もまだまだという状況です。(表2参照)

■ 深刻な財政危機は解決するか
指定都市になれば財源措置などにより歳入が増えるという期待があります。しかし、現存する指定都市自身が「大都市税財政制度の確立」を国に長年要望しており、堺市の財政シュミレーションでも、「政令指定都市移行による財政負担を基準財政需要額の範囲にまで抑える行政努力をおこなわない限り、逆に財政状況が悪化する」と報告されています。(初村尤而著「政令指定都市・中核市と合併」67・73頁、自治体研究社)
一方、千葉市の財政状況は表3に示すように02年度決算において自治体財政の危険ラインといわれる公債費負担比率が20%を超え、04年度会計では一般会計の市税収入の割合(46%)、自主財源比率(59.5%)が減少する一方、全会計の市債残高は1兆円強と悪化しています。それにもかかわらず大開発計画=中央第六地区(約400億円),蘇我副都心開発(約1600億円、内千葉市負担分約560億円)、千葉駅西口地区開発(約800億円)、千葉みなと駅西(約500億円)などにはブレーキがかる気配はありません。市税収入率下落が予想されるにもかかわらず、今後10年間で市税収入10数%のアップを前提とした合併建設事業(10年間で約1000億円)も計画されています。

■ 再生のシナリオのない合併
 以上のように本来、合併問題以前に取り組むべき行財政のスリム化や地域自治(市民との協働)のシナリオを千葉市の施策に見出すことは困難です。大都市行政化ではなく、地域自治、市民自治を保障する地域内分権の観点から、千葉市民も議論に加わって今回の編入合併問題を見直すべきでしょう。

( 事務局長・川本 幸立〔市民研究所〕 )


表1 四街道「市制度」と千葉市緑「区制度」の比較
 
単位
四街道市(市役所)
緑区(区役所)
備考
組織の性格
 
自治体
行政区画(市長の事務を
 
 
 
 
補助執行する内部機関)
 
人口
83,689
107,719
H15年3月末
一般職員数
489(注1)
140(注2)
注1:H14年度決算表
 
 
    注2:H15年4月1日現在
議員数
24
5
 
人口/議員
3,489
21,543
 
 
公選 市長が事務吏員から選任  
議決機関
 
議会  
事務の範囲
 
全般 戸籍,市税,保険・年金,福祉など  
事務の権限
 
独自の権限 区の権限は弱い  
財政
 
独自の権限 出納事務、支払事務  
市民との協働
 
まちづくり市民会議 区民懇話会  

表2 行政と市民との「まちづくり協働事業」比較
* 合併協議会資料「継続協議項目等の対応方針案」より
事業名
四街道市
千葉市
対応方針案
市民まちづくり助成
当分の間現行通り
まちづくりリーダー養成
当分の間現行通り
市長相談
四街道市域で区長が担当
市長インターンシップ
廃止する
生涯学習まちづくり出前講座
当分の間現行通り
生涯学習いきがいづくりアシスト事業
当分の間現行通り
区民懇話会
四街道市域にも設置する
まちづくり市民会議支援
自主活動とし、支援事業は廃止
(パートナーシップ協定)
 
 
協定は更新しない
自治連絡員制度
当分の間現行に準じた対応
コミュニティ広場設置
当分の間現行通り

表3 決算状況、財政指標比較
   
単位
四街道市
千葉市
備考
決算状況 @普通会計歳入 百万円
20,747
340,440
H14年度
・市税割合
52.7
48.8
 
・市税/人口 円/人
130,556
187,063
 
・支出金、交付金
23.6
20.1
 
・市債割合
7.5
16.6
 
A普通会計歳出 百万円
19,823
333,300
 
・人件費
27.6
19.9
 
・扶助費
11.2
11.3
 
・公債費
10.4
14.6
 
財政指標 ・財政力指数  
0.865
0.941
 
・公債費負担比率
11.9
20.3
20%が危険ライン
・起債制限比率
8.6
16.1
20%が制限ライン
・地方債現在高 万円
1,542,591
59,788,462
 
・債務負担行為予定 万円
45,168
8,466,906
 
・将来債務比率
114.3
359
 

 


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