指定管理者制度についての意見交換会
(議事録要旨)

2004.02
   
 
この議事録要旨は、2004年1月22日午後6時30分から8時45分まで、「ちば市民活動協議会」の主催で行われた「千葉市と千葉市民の<指定管理者制度についての意見交換会>」のものである。当日、会場の千葉市民活動センターには、約40人の、行政職員、議員、市民が集まった。
NPO法人千葉まちづくりサポートセンターは、この「ちば市民活動協議会」の事業を担当しており、副代表の栗原裕治が別紙資料に基づいて指定管理者制度の概要説明と問題提起を行った。この問題提起は、NPO政策情報<2004-1「指定管理者制度」のインパクト>を加筆修正したものであるので、参照していただきたい。

1.千葉市(行政管理課)の説明

千葉市行政管理課の担当主幹より、指定管理者制度についての千葉市のこれまでの取り組みと今後の進め方に関する説明があった。要旨は以下のとおり。

@指定管理者制度は、民間市場拡大のための規制緩和政策の一つと捉えている。これまで公の施設の民間管理は、公共的団体に限ってきたが、その制約を取り払うことになった。この制度ができた背景には、行政サービスの事業拡大やサービス向上のニーズがあること、民間事業が安定してきたことなどがある。そこで民間に任せるのであれば、料金の設定などの権限も含めて任せようということになった。

A法律が施行された昨年9月2日以降にできる新しい公の施設は、行政は指定管理者に任せるか、直轄管理するかの二者択一となる。また、既存の施設については二者択一まで3年の猶予期間がある。幸か不幸か、千葉市にはすぐに対応しなければならない施設がないので、今のところ目立った動きがない。9月2日以降にオープンする施設を具体的に持っている自治体は、対応が先行している。

B千葉市では、都市公園法、河川法や学校教育法など、国の他の法律で規定されていて指定管理者制度が適用できない施設を除くと、51種、300を超える施設(都市公園条例別表8に定められている13の公園の中の野球場やテニスコートなどの有料施設を含む)が、二者択一の対象になる。ただし、これは改正地方自治法が制定された昨年6月時点で検討したもので、国に法律の対象となる施設の範囲を拡大しようとする動きもあることから、対象施設は更に増える可能性がある。これら施設の一部は、生涯学習センターや美術館を教育振興財団に、体育施設やポートアリーナをスポーツ振興財団に、文化センターや市民会館を文化振興財団に、児童福祉センターやハーモニープラザを社会福祉事業団に、ユース・ホステルやポートタワーを観光協会に、市民住宅を住宅供給公社に、という具合に、29種、約100を超える施設が、これまでの委託管理制度に基づいて公共的団体に管理を委託している。これら委託管理以外の公の施設は、千葉市が直轄管理している。

C問題提起の中に、指定手続き条例の話があった。指定管理者の指定手続きは、それぞれの個別の設置条例で明示するので、包括的な条例は必ずしも必要ない。参考資料の「札幌市公の施設に係る指定管理者の指定手続きに関する条例」は、たくさんある公の施設の指定管理者の指定手続きの部分だけをまとめた条例であるが、これを制定するかしないかはテクニック上の問題なので、誤解のないように。

D千葉市の現在の取組状況は研究・検討の段階で、今は地方の力が中央に試されているようなところがある。これまでこうした改正などは、国(今回は総務省だか)の方が教科書的な対応方法をこと細かに用意していたが、地方分権ということになって、国は「法律はつくった。主旨も説明した。どのように対処するかは地方で考えなさい。」と言っている。3,300の自治体が画一的な動きをしないのは、こうした国の方針に原因がある。香川県には、「自分たちでつくった財団・社団に公の施設の管理を任す」という指針を既につくった自治体もある。この自治体では、指針で定めた施設以外で指定管理者制度を適用することになる。それぞれの自治体にそれぞれの地方分権の方法があと思うが、まだまだ制度全体にグレーの部分があり、現段階ですぐに方針を決めるのは難しい。現在、来年度予算をまとめているが、その中で各局を集めて、来年度の方針を構築していく。

E千葉市では、今後中央区の第6地区に新しい施設ができる。川鉄の跡地にサッカー場ができる。新港には清掃工場の余熱を利用した施設ができる。ちょっと異質なものでは斎場ができる。長柄町の青少年施設は、PFI事業でつくっており、平成17年度の早い時期に施設をオープンする。このPFI事業は、十数年にわたっての事業者と千葉市の約束が基礎になって進められていて、それには千葉市と事業者の役割分担までが定められている。そうした契約と今度の指定管理者制度とを急に合わせるのは非常に難しい。そういうことも研究しながら、16年度中にはっきりした答えを出す。

2.主催者から行政への質問

【質問1】NPOも指定管理者の候補であり、指定管理者制度は市民参加や住民自治のためにも重要と考えている。そうした認識を共有する目的で、今日の意見交換会を開催している。千葉市で指定管理者制度が適用可能な施設は300を超えるようだが、既に市民団体に管理を任せたほうがよい施設のイメージがあるのか。
回答 :千葉市には青年館が8館あるが、これらは既に中学校区青少年相談員連絡協議会や地元の町内自治会が管理している。公の施設には、周辺に限定されて使われる施設、市域全体で利用される施設などの違いがある。町内自治会単位の施設は、町内住民を対称にしているわけで、こうした管理範囲、対象範囲の違いで、地域住民に密着した管理をしてもらうほうがよい施設は、当然あると考えている。

【質問2】市町村の垣根を超えて活動しているNPOもあれば、限られたエリアを対象にしているNPOもある。今日の会場の千葉市民活動センターも、NPOが管理した方がよいという意見がある。この千葉市民活動センターは、条例設置されていないので、正式には公の施設では無いのかもしれないが、このような施設も指定管理者制度の対象になるのか。
回答 :千葉市民活動センターは、開設当初、一部事務室として利用することから公の施設という位置づけをせず、管理方法を要綱で規定したところである。今後センターを指定管理者として民営化するということになれば、条例整備の必要があると考える。

【質問3】千葉市は、札幌市のような指定手続きの部分だけの包括的な条例を制定しないのか。こうしたところから市民と行政が対話し、理想的な指定管理者像を共通概念として持つことが重要と思うが。
回答 :札幌市の指定手続き条例のような条例を通則条例と言うが、早く手続きの方法を知りたいのなら話は別だが、通則条例をつくるメリットがよくわからない。新しい施設は施設の概要がはっきりしてから「指定手続きを含む設置条例をつくるほうがよい」という考え方もあるわけで、十分な応募の期間を確保するなどの条文を盛り込めば、それでも問題はないのではないか。そのあたりにこだわっていないので、通則条例の検討はしていない。指定というのは、契約とは違うかなり厄介な行為で、処分という整理をしている。現在の千葉市の施設は各局が所管しているが、処分とした場合、処分した責任をどこに置くのか、各局に置くのかといったことを喧々諤々とやっている。

【質問4】通則的な手続き条例をすぐに制定すべしと言っているわけではない。指定管理者の選定は、公の施設や指定管理者の信頼性の問題だけでなく、自治体と市民との信頼関係の基本になる問題である。単に手続きを規定する文章づくりは、さほど面倒なことではないが、指定手続きを規定する場合、指定管理者の資格要件を想定しておくことが重要となる。その要件については、行政が一方的に想定するのではなく、公共資産の基本的な取り扱いにも関わることなので、市民参加で慎重に検討したほうがよい。指定管理者の資格要件は、目的や形態が異なる個々の施設によって違って当然であろう。したがって、今回の指定管理者制度の導入を一つの機会と捉えて、市民も加わって各施設の内部、外部の両方からアセスメントを行う必要があるのではないか。その結果をみながら、最低限の通則的な手続き条例を策定する。高度な判断が必要なものや個別に必要なものは、個別の設置条例に委ねる。そうした2段構えの方法もあるのではないか。千葉市が直轄で行う施設の場合も、NPOなどの非営利組織(現在の委託管理者を指定管理者に移行させる場合も含む)や営利企業を指定管理者にする施設の場合でも、アセスメントに市民が加わり、行政と市民が情報を共有することで、評価の基準が明確になる。また、各施設の効率化やレベルアップも期待できる。千葉市は総合計画などでも「市民参加の推進」を掲げているが、こうした方法こそ市民参加といえるのではないか。また、市民団体が指定管理者の公募に名乗りをあげるにしても、公募直前に資格要件的な基準を示されるよりも、あらかじめ認識できていれば、そのための準備を計画的に行える。こうしたメリットについて、行政はどのように考えているのか。
回答 :指定管理者は、営利法人でも市民団体でも、個人以外は応募資格がある。市民団体の場合は法人格の有無も問わない。これは確定している。今の質問は、行政の指定管理者の選定基準ということになろう。公の施設は、設置目的がはっきりしていて、使用する場合の平等性が護られることがまず最大の要件といえる。また、施設の目的は異なるので、それぞれに管理・運営のノウハウがあることも要件として必要になる。経費がかからないというのも要件になるだろうが、経費がかからなくて目的にかなうサービスができないのでは困る。選ぶ行政の立場からすれば、信頼できるという視点も重要で、どうしても過去の実績も含めての総合的な判断となる。契約ではないので、金額だけで判断することはしない。そのあたりは、指定手続きについて、応募者の提出書類等も条例で定めるので、それらが資格要件とは裏返しの選考基準ということになる。

【質問5】地方分権や行財政改革の視点から新しい公共を考えたとき、市民は公共サービスの一方的な受益者ではなく、担い手でもあることが重要である。こうした概念は必ずしも一般化していないが、それに向かってさまざまな自治体で市民やNPOと行政との新しい動きがある。指定管理者を選考するとき、黒字経営を続け施設管理の実績もあるような優良民間企業を指定管理者にすれば、経営的には安心かもしれない。一方で、NPOは資本金などもなく、施設管理の実績もない。しかし、活動を通しての地域とのつながりやネットワークを持っているし、非営利であり、経営を透明にすることや情報発信に熱心である。こうしたNPOの特性というものは、指定管理者の選考基準の中に十分に反映されていくものなのか。
回答 :情報公開という制度がある。それと裏腹に個人情報の保護という制度もある。また、行政手続きの明瞭化というのも、これまでにいろいろな問題が指摘されて法規範も整ってきているので、指定管理者の指定手続きづくりも実際の選考も明瞭にやることになる。

【質問6】今後、千葉市の指定管理者制度の中身が政策形成されていくが、そうした政策形成過程に市民参加を保障することについてはどうか。どの時点で、どんなかたちで市民参加に踏み切るのか。市民の方も指定管理者制度の導入に当たって何が問題なのかを勉強しはじめたところだが、こうした市民と行政の意見交換会の是非についてはどうか。
回答 :市民参加というのは分かるが、指定管理者制度の条例、規範、規則などをつくっていく中で、市民が何を声を大にして言いたいかが、イメージできない。次回の意見交換会を拒む理由もないし、その辺を逆に教えて欲しい。

(注:意見交換の前に、主催者から千葉市に補足的な質問を行った。質問者はNPO法人千葉まちづくりサポートセンターの栗原裕治。)

3.意見交換

〔K氏〕:指定管理者制度の導入には、料金がどうなるか、個人情報の保護がどうなるかなど、いろいろな懸念材料があるが、それは今後の課題として、今回は4つのことを指摘しておく。第一に、現在の公の施設は、サービス面を含めて、十分に市民の期待に応えているのか。付加的なサービスは別として、施設によっては、最低限のサービスのレベルさえも確保されていないのではないか。指定管理者制度の導入をきっかけに、公の施設の全面的な見直しが必要と思う。第二に、これからは自分たちの住んでいるところは、自分たちで管理していくといった住民自治が基本になり、公の施設は、今後のコミュニティの活動拠点としての重要性を増していく。この指定管理者制度を行政と市民の「参加と協働」の視点から検討していくことが必要と思う。第三に、指定管理者制度を政策形成の段階を含めて有意義なものにするには、並行して市民参加や情報開示を保障するための制度をつくっていくことが重要になる。それには行政の内部規定的な指針や要綱ではなく、市民も加わって、市民も責任を分担するような条例をつくることが望ましい。千葉市には、まちづくり条例や市民参加条例はおろかパブリックコメント条例もない。第四に、「参加と協働」を進めていくには、行政も市民も意識や組織を変えていくことが重要である。行政には、市民活動に対応できる総合的な窓口もない。一方で、「参加と協働」に対応できる市民側の取り組みも十分とはいえない。指定管理者制度の導入を、そうした行政や市民双方の新しい組織づくりの端緒と考える必要がある。

〔Y氏〕:音楽活動をしている。指定管理者制度に関心を持ったのは、公の施設が有効活用されていないと感じていたからだ。稲毛の海岸に野外音楽堂があり、低料金で利用できるが、活動に必要な最低の経費を確保しようとしても、そこでチケットを売ってはいけないと言われる。こうした規制の仕組みがどうしてできたのかを考えてしまう。新しい公共という話があったが、こうした仕組みそのものを市民が一緒に考えていくことができないのか。今までは、働くことに忙しくて、自分が住んでいる地域を見直そうという機運はなかったが、そうした他人任せ、行政任せでは、少しも地域が豊かにならないと気づいた人も多い。そうした地域を豊かにしようという活動を、みんなの税金でつくった現在の公の施設が阻んでいるという一例だが、そうした小さいところから、変えていければと思う。

〔市担当〕:今のチケット販売の問題は、指定管理者制度で解決できるというものではなく、野外音楽堂は、都市公園の中にある施設なので、都市公園法がチケット販売を妨げていると思う。最近は、構造改革特区という、そこだけ法律の網をはずしてもらう仕組みもあるので、むしろその制度が活用できる。行政の中にいると気がつかないことも多いので、こうした問題は市民から指摘してもらったほうがよい。

〔Y氏〕:そういう指摘を行政のどこにすればよいのか、窓口が分からない。指定管理者制度の導入をきっかけに、市民と行政の協力で、現在の公の施設の問題点が洗い出されることを期待している。

〔市担当〕:総合窓口が必要という話が出たが、行政も細分化されていて窓口はすぐに分からない。話し合うと、構造改革特区のアイデアも出るわけで、私のところ(行政管理課)に相談してもらっても構わない。

〔IZ氏 〕:国が指定管理者制度を出してきた背景を考えると、まず、公の施設は建設費に加えて、毎年のメンテナンス分の収入もないわけだから、施設は全て赤字になっている。21世紀の公の施設は建設から管理の時代になる。バブルの時代を含めて、公の施設をつくり過ぎたこともあり、そのために行財政が逼迫している行政側の事情がある。また、杓子定規で使いにくい施設という世間一般の批判があり、それなら利用する市民に管理も任せてしまおうという素直な反省がある。更に、先ほどの話は、施設ごとにがちがちの法律で縛られていて融通がきかないという問題だが、これは行政が横断的な体制を組んで、一つ一つの問題を利用者から聞いていくという手法で解決するしかない。PFIも、建設からメンテナンスまで民間を活用することで、施設が低コストで使いやすくなるという考えが根底にあると思う。そうなると、市民に施設管理を任せるということは、タイムスケジュールを組んで計画的に速やかにやるしかない。「参加と協働」という話が出たが、それは次のステップで時間をかけてやればいい。当然、既に施設を委託管理している公共的団体や所管の抵抗は、雇用の問題が絡むだけに大きいと予想できるが、そこをどのように調整するかが、行政の手腕となる。もう一つ、音楽室、調理室、校庭など、地域で利用できる設備がある学校の開放は地域社会にとって重要と思う。先生が管理するのではなく、学校施設の管理は地元市民が行い、先生が学習指導に徹することができれば、教育環境も改善されるのではないか。市民管理を速やかに実現するには、まず、管理にかかる予定価格を公表して、市民におおむね七掛でやってもらうという仕組みをつくれば、コスト削減にもなる。たたき台を早く示して、指定管理者が育っていく環境をつくっていくことも必要と思う。

〔市担当〕:教育委員会の管理の下で、音楽室や校庭を地域に開放している事例は千葉市にもある。今の話は、更に突っ込んだ市民管理の話と思うが、現在はいろいろ様子をみながらやっている。また、各所管の施設を手放すことに対する抵抗はないと思うが、正直言って現在の体制があるので、2年余りの間に180度変えることは厳しい。指定管理者制度が公の施設のあり方を見直すチャンスだということには同意するし、これまでチェックが十分でなかったことも事実。しかし、現在管理している施設、管理を任せている施設に、何の専門性や特殊性が必要なのか、今の民間事業者の一般的な技術で100%任せることができるのか、だめなのか、そういう分析はかなり難しい。そこを見極めながら、行政の専門性や特殊性が必要な施設は直轄方式で、他の施設は民間に出しはていく。これから一つ一つをチェックし、特段の障害が無いものは民間に出していくことになる。
〔O氏〕:指定管理者制度は、よい制度と思っている。議員になりたての頃、市民にフットサル場をつくってくれといわれた。施設をつくってくれれば、管理は自分たちでやる。昼間は仕事だから夜使いたいし、役所に管理させると融通が利かないからといわれた。それ以来、公共施設の民間委託に関心があって、今日も京都の視察から戻ってきた。京都にも公設の京都市市民活動総合センターという名の施設があって、そこも市民が使いやすいような管理をNPOが行っていた(注:管理者はNPO法人きょうとNPOセンター)。これからは市民管理がよいと思うが、市民の管理代行が一気に進むと、現在の施設の雇用者をどのように収斂するかが気になる。そこを見定めないと、新しい無駄が発生するように思う。指定管理者制度に移行していくには、腐敗防止など、難しい面がかなりありそうなので、まず、新しくできる施設で試し、徐々に移行するのがよいと思う。市議会の議決が必要ということなので、もう少し自分の意見が言えるように勉強していきたい。

〔T氏〕:3年の猶予があるといっても、それほどのんびりできる状況ではない。平成17年度に条例を改正するならば、来年度(16年度)をどのように有効に使うかが鍵になる。直轄か管理代行かの決定をする前に、まず、公の施設のアセスメントが重要で、行政内部でアセスメントを行うのはもちろん、市民やNPOも外部からアセスメントを行い、両者で議論を重ねていくことが重要。指定の行為は契約ではなく行政処分という話だが、これは国の方針かもしれないが、NPOとしては、千葉市らしさを出すためにも契約にこだわりたい。数年前に、イギリスを視察して市民と行政のコンパクト(契約)について勉強した。最初は、国とボランタリーセクターが互いにリスクを負いながら事業を行う契約だったが、それがローカルコンパクトというかたちで地域社会での契約に広がっている。このコンパクトには、民間企業の非営利部門なども加わっていて、NPOもスキルアップの競争を強いられる。公共サービスの向上に、市民が利用者と担い手の両方の立場で取り組んでいて、全ての地方自治体は、2004年までにボランタリーセクターとローカルコンパクトを結ぶことになっている。日本では、行政とNPOの関係は、委託や補助が中心になってきたが、対等な契約関係が必要な時代になっており、コンパクトに見習う点は多い。千葉市議会では、どの会派も市民参加に反対していない。しかし、議会の中だけで指定管理者制度について議論するのでは、NPOに任せるのか、従来の公共的団体に任せるのか、行政直轄なのかといった結論の部分だけの話で終わってしまう。市民が公の施設をどのように利用したいのか、どのように管理に関わりたいのか、それはどのような地域に住みたいのか、どのような暮らしをしたいのか、に通じるが、そうした地域の議論がないと大事なことが見落とされてしまう。地域住民と話をすると、なぜ、ノーマライゼーションを掲げる時代に、子供の施設、高齢者の施設と障害者の施設が、なんで別々でなければならないのかという意見もある。指定管理者制度は公の施設のあり方までも含めて市民と行政が見直すきっかけになって欲しい。それは地域再生やコミュニティづくりにとっても重用なこと。そうした方向に向かうように、地域の議論、NPOの議論の輪の中に、議員を積極的に呼んで、勉強させて欲しい。市民と議員が条例案をつくり、議員発議で条例が議会審議されるようになると、市民の声が生かされるようになる。

〔KH氏〕:今回は、まず、指定管理者制度について、また、指定管理者制度に関わる現時点の課題について知ってもらおうということで開催した。いわば情報共有が目的である。千葉市にアクションプランはどうか、と質問しながら、我々は自分たちのアクションプランについて何も示していない。市民と行政の対等な議論を望む筋道としてはかなり片手落ちだが、こうした議論を重ねながら、これから市民やNPOの力を結集していきたいと考えている。

〔市担当〕:公の施設は市民が平等に利用できるなどの評価尺度としての最低の共通項はあるが、実際には施設の目的が千差万別であり、市民が管理を嫌がるもの、市民では管理が難しいと思われる施設もある。例えば、斎場などは地域管理できるだろうか。ホールなどは、誰が管理しようと椅子席の稼働率が評価尺度になったりする。しかし、身障者が通う施設などには、違う評価尺度が必要であろう。これから個々の施設について十分に研究していく。また、先ほど確かに指定は行政処分と言ったが、それは対等を前提に言ったわけで、高いところからの処分という考えではない。

〔KH氏〕:斎場の話が出たが、ゴミ焼却施設なども含めて、迷惑施設について市民がどのように関わり、責任を負えるのかまで考え、議論していくのが本当の市民社会ではないかと思う。

〔市担当〕:京都の街の清掃などは、市民と行政が本当に協力してやっている。市民の街を綺麗に保つという思いは非常に強いが、それは京都が観光都市で市民が観光客の目を意識しているといった背景がある。公の施設も千差万別だが、地域も千差万別だと感じている。

〔KH氏〕:行政に全てを任せても地域はよくならない。その辺が問われているということは、行政だけでなく、市民も問われている。お任せ主義はそろそろ終わりにしたいというのが、最近の市民活動の大きなうねりで、具体的に公益事業を行うNPOが増えている。

〔IN氏〕:公の施設の管理運営の基準を行政だけでつくり、そのプロセスに実質的に市民が参加していないと、まさに「仏をつくって魂入れず」ということになるが、その辺の考えはどうか。

〔市担当〕:当然、市民参加は必要と考えている。今は行政評価という言葉がたくさん出てくるようになったが、京都市で3年前に公の施設を評価した事例がある。利用率、管理コストなど、いろいろな視点から評価し、その結果を公表することで、対応についてオープンに議論をしている。これなどは参考にしたい。しかし、全て来年度からというわけにもいかないから、逐次やっていきたい。

〔KN氏〕:昨日も千葉大で市川市の職員を招いて、市民参加についての話があった。オープンな場所で行政と市民がいろいろ話をすることが重要で、今日の意見交換も非常に密度の濃いものだと感じている。地方自治法を改正した最初の主旨に立ち戻って、従来の法規制などをあまり気にせずに、本当に何が必要なのかを真剣に話し合えればと思う。国も市民との話し合いを重視しており、市民が率直に意見を述べる機会が増えている。

〔TN氏〕:昨年、「環境保全活動・環境教育推進法」が成立したが、これなどは市民が主体的に活動し、その結果、議員立法での制定となった。指定管理者制度も特定のNPOと行政の問題とせずに、まず、地域住民がこうした制度があるということを知ってもらうことが大切と思う。また、市民セクターと行政の契約の問題は重要だが、チェック機能の問題を含めて制度全体の構成を考えてみる必要がある。NPOも行政も、千葉市から新しい制度を全国に提案していくくらいの意欲が必要。こうした議論を一歩一歩積み重ねるためにも、行政には、情報の共有を心がけて欲しいし、市民対応の総合窓口をお願いしたい。

〔市担当〕:どのような総合窓口をつくるかについて、ここで具体的な方針を述べるのは難しいが、市民総務課が市民の窓口になっているので、市民やNPOに課題や提案などがあれば、遠慮なく相談に来て欲しい。内容に応じて、必要ならば所管を紹介することもできる。

〔T氏〕:これから千葉市につくられる公の施設については、例えば、保健福祉センターをつくる計画が動き始めているが、これらも指定管理者に管理代行してもらうということならば、基本構想をつくる段階から指定管理者になりそうな団体、その他管理に関係しそうなグループ、利用者などを含めて検討していく必要がある。千葉市の公共施設整備指針や整備マニュアルには、市民参加が具体的に示されているが、PFI事業とか、中央第6地区のような組合の事業になると、まったく市民参加の道筋が見えないのは問題ではないか。

〔市担当〕:大きな施設については、建設計画段階から管理について考えるのは重要。ただ、中央第6地区ついて指定管理者制度を考えてきたか否かというと、組合施行であっても、その中に公の施設がつくられるということなので、昨年春頃に国の方から指定管理者制度の話が匂ってきた時点で、直轄管理か、管理代行かの議論は個別にしている。保健福祉センターなどについては、必ずしも指定管理者制度を適用するかどうかについては、今は何ともいえない。公の施設が条例で設置されない場合、例えば、庁舎の一部とするということも多くなっている。とはいえ、これも公の施設なので、何らかの市民参加の手続きが必要とは思うが、そのような庁舎の一部という考え方もある。その辺を整理するのも今後の課題と考えている。

〔KH氏〕:条例設置されない施設が増えることは、それもまた問題ではないか。

〔市担当〕:庁舎の一部ということなら、そこには行政職員がいて、市民の相談に応じたりするわけだが、市民が利用する施設であることは確かで、こうした指定管理者制度にあたらない市の施設についても、これから考えていく必要がある。

〔 TR氏 〕:現実の問題は、公の施設の管理者が利用者志向でないことではないか。指定管理者制度は、この利用者志向でない施設を、なんとか利用者志向にしていこうとする試みの1つのように思うが、それだけでは十分でない。現在の施設を利用者志向にしていくためには、現状のチェックが不可欠だが、そのチェックを行政だけに任せるのは正しいやり方ではないように思う。大きな企業などは、お客様相談室を持っているが、これは最初からあったわけではない。いろいろな部署に客からのクレームが寄せられ、その対応を各部署が別々にやっていたのでは効率も悪いし、何より、顧客の要望に十分に応えられず顧客を失う、という気づきが企業に生まれて、お客様相談室のような総合窓口ができる。同様に、行政に「総合窓口」を持って貰おうと思うのであれば、我々市民は総合窓口をつくってくれと単に言うのではなく、様々な部署にどんどん「文句」を伝えていく必要があると思う。「顧客志向」でない民間企業に対しては、商品を買わないという手が使えるが、行政の場合はそうはいかないし「市民税不払い運動」などというのは極端すぎると思うが、我々自身による働きかけなしでは、企業と同様に、行政の対応も変えられない。公の施設にしても、そのチェックを行政だけに委ねるのではなく、我々が独自の力でチェックを行い、それを行政に示すことで、行政としての自己チェックを生むことになるし、ひいては、公施設の「利用者志向」の運営というものも実現するように思う。

〔KH氏〕:市民が公の施設を外から評価することは重要だが、行政が内部評価をして、その結果を公表することも重要で、両方揃うことが大切。市民社会において、市民は公の施設の利用者であると同時に、管理の担い手になっていかなければならない。また、直接管理しなくても、行政がこれからも公の施設の担い手であることは変わらない。そこでは契約に基づく役割の分担、情報の共有が必要なことは言うまでもない。市民社会は、互いの活動を相互に監視するよりも、当事者の合意による明確な評価基準を示し、正当に評価していくことが重要で、対等な関係とは、互いに評価する権利、正当に評価される権利を持つことだと思う。参加と協働の重要性の一つはそこにある。
市民やNPOも、これから具体的なアクションプランを立て、指定管理者制度や公の施設についていろいろ調査、研究し、市民の合意を形成していく必要がある。今回の意見交換会を一回の打ち上げ花火で終わらせないで、2〜3ヵ月後には、更に密度の高い意見交換ができたらと思う。3年という月日は、長いようで短いと思う。

(副代表・栗原 裕治)

 

BACK