NPO活動を支える基本制度の改正 2003.02



1.特定非営利活動促進法の改正

NPO活動を支える制度として特に重要といわれていたのが、法人制度、情報公開制度、税制優遇制度等であるが、これまでにこれらは一応の制度ができている。しかし、まだまだ制度として未成熟で、NPOにとって利用しにくい制度という批判も多く、その改正が求められていたが、1998年12月1日に施行された特定非営利活動促進法(通称NPO法)が昨年12月11日に改正され、今年の5月1日より施行されることになった。

今回の法律の改正点を平易な言葉で解説することは難しく、法律そのものを知らないと理解しにくいと思われるが、むしろNPO法を詳しく知るきっかけになると思うので、この「政策情報」では、改正の要点だけを簡単に示すのではなく、できるかぎりの解説を試みることにした。

なお、今回の改正法案の提出者(与党三党)は、「特定非営利活動の一層の発展を図るため、その活動の種類を追加し、設立の認証の申請手続を簡素化するとともに、暴力団を排除するための措置を強化する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」と述べており、法案は全会一致で可決された。

 

(1)活動の種類の追加

NPO法は、別表でNPO法人が行う活動の種類を明示している。これまでは、@医療・保健・福祉の活動、A社会教育活動、Bまちづくり活動、C環境保全活動、D文化・芸術・スポーツ振興の活動、E国際協力活動、F災害救援活動、G地域安全活動、H男女共同参画の活動、I人権擁護・平和活動、J子どもの健全育成活動、K以上の活動の支援活動の12分野であり、ボーンセンターはBまちづくり活動と、K以上の活動の支援活動を定款で定めている。

しかし、市民活動はこれら12種類で適格に表現できない活動も多く、一団体が複数の活動を定款に書き込むことが普通になっているが、活動の種類を増加して欲しいという要望も多く、今回の改正NPO法では、D文化・芸術・スポーツ振興の活動に「学術」が付け加えられるとともに、「情報化社会の発展活動」「科学技術振興の活動」「経済活動の活性化活動」「職業能力開発・雇用機会拡充の活動」「消費者保護活動」の5種類が追加された。

実際は、新しく追加された種類の活動を既に行っているNPO法人は多いが、学会や商店会などのNPO法人化も加速すると思われる。

 

(2)収益事業をその他の事業に統一

NPO法人は、本来の特定非営利活動に支障がない限り、それ以外の事業を行うことができるが、これまでは本来事業と収益事業という区分をするのが一般的だった。改正NPO法は、それぞれの法人本来の特定非営利活動以外の事業は、全てその他事業と規定されており、収益事業という言葉がなくなり、その他の事業がより明確になった。その他の事業の会計は、収益の有無に関係なく特定非営利活動の事業の会計とは区分され、特別の会計として経理することになる。

 

(3)申請書類の簡素化

設立や合併の認証を内閣府や都道府県に申請する場合、申請書に添付しなければならない書類はかなりの量があり、特に役員の数が多い団体の申請は面倒であった。

役員名簿と役員のうち報酬を受けるものの名簿(NPO法人は役員総数の3分の1以下の役員しか報酬を受けられないという規定がある)を別々に作成していたが、この二つを統合できることになった。また、役員が就任時に提出する役員宣誓書と就任承諾書を一枚に統合してよいことになった。更に、申請書の添付書類の中で、設立者名簿、設立当初の財産目録、設立当初の事業年度を記載した書面が削除されることになった。

 

(4)定款記載事項の変更

改正NPO法で、特定非営利活動以外の収益を目的とした事業がその他の事業とされたことから、定款も収益事業でなくその他の事業に改めることになった。また、事業年度を定款に記載することになったが、NPO法人の定款には、普通は事業年度が記載されている。

 

(5)暴力団排除措置の強化

改正NPO法は、暴力団のNPO支配や暴力団とNPOの関係を懸念し、暴力団を排除する措置を強化している。

NPO法人の設立及び合併の認証基準に、認証の申請団体が暴力団の構成員でなくなってから5年を経過しない者の統制下にないことを付け加えている。また、暴力団の構成員でなくなってから5年を経過していない者は、NPO法人の役員になれないとしている。

更に、暴力団との関係について疑いがある場合、所轄庁は警察庁長官や警察本部長に意見を聴くことができ、警察庁長官や警察本部長は、暴力団との関係を疑う理由があり、所轄庁が適当な措置を採ることが必要と認めたときは、所轄庁に対してその旨の意見を述べることができるとしている。

 

(6)役員任期の延長

改正NPO法は、定款に定められた前任者の任期が終了し、後任の役員が任期末日後の最初の社員総会が終結するまで決まらない場合、それまで前任者の任期を伸長できることを認め、そのことを定款に記述しなければいけないとしているが、既にNPO法人の定款はそのようになっていると思われる。

 

(7)事業変更に伴う定款変更の認証申請書の添付書類の追加

改正NPO法では、特定非営利活動の事業及びその他の事業の定款変更の認証申請を行う場合、所轄庁に提出する認証申請書に、定款変更の日に属する事業年度及び翌事業年度の事業計画書及び収支予算書を追加するものとするとしている。

 

(8)予算準拠規定の削除

NPO法では、NPO法人の会計について、収支及び支出は、予算に基づいて行われなければならないとしていたが、柔軟かつ迅速に活動するNPOの実情に合わないことから、改正NPO法ではこれを削除することになった。

 

(9)課税の特例の追加

NPO法が成立した1998年には、NPO法人への課税は企業と同じで課税優遇制度は将来の検討課題であったが、認定NPO制度が2001年10月に施行されたことから、新たに課税の特例についての条文が追加された。

NPO法人が、租税特別措置法の定めるところにより、運営組織及び事業活動が適性で、公益増進に寄与するものとして国税庁長官が認定した場合、そのNPO法人の特定非営利活動の事業に関連する個人又は法人が寄付や贈与をしたときに、それらの所得税、法人税又は相続税の課税について寄付金控除等の特例の適用があるものとするとしている。

 

(10)罰則規定の追加

所轄庁は、相当の理由がある場合に限り、疑いのあるNPOに対して報告を求めたり、検査をすることができるが、そのNPO法人の理事、監事或いは清算人が報告をしなかったり、虚偽の報告をしたり、検査を妨害した場合は、20万円以下の過料に処するものとしている。

 


2.NPO支援税制の改正

改正NPO法が成立した2日後の昨年12月13日にNPO支援税制の改正が、自由民主党、公明党、保守党の与党三党の税制協議会で決まった。今年の4月1日から施行される。

NPO法人の支援税制を定めた認定NPO法人制度が施行されたのは2001年10月であったが、NPO法人の数が8000を超えたにもかかわらず、国税庁長官が1年間で認定したNPO法人の数は二桁に達せず、認定要件の敷居の高さから、制度の実効性を疑問視する意見が相次いでいた。

認定要件は、国税庁の裁量をなるべく排するかたちで客観的な数字を満たすことを要件としているものの、改正内容をみると敷居はなお高いと思われるが、千葉県でも初の認定NPO法人が誕生する可能性はある。

今回の改正内容を示した平成15年度の税制改正大綱は以下のとおりであるが、今回の見直しのポイントは、認定NPO法人の認定要件の緩和とみなし寄付金制度の導入となっている。(ここで示すポイントは、紙面の関係で現行の認定NPO法人を知らない人には難しい内容と思われる。)

ちなみに、ボーンセンターは今回の要件緩和でも、収入構造を根本的に見直さない認定NPO法人となることは難しが、本格的に見直しをする時期にあるように思われる。


(1)パブリックサポートテストの要件の緩和

NPOの支援税制のために米国のパブリックサポートテストを参考につくられた日本版パブリックサポートテスト(NPO法人の総収入金額のうちに寄付金総額が占める割合を3分の1以上としたもの)については、ほとんどのNPO法人が要件をクリアできないことから次の4つの措置が講ぜられることになった。

a)平成15年4月1日から平成18年3月31日まで、パブリックサポートテストの割合を現行の3分の1から5分の1に緩和するとしている。

b)寄付金総額の2%を超える個人又は法人の一者から寄付金は、パブリックサポートテストの寄付金総額に参入できない金額としてきたが、これを5%を超える寄付金に緩和するとしている。

c)個人又は法人の一者からの3000円未満の寄付金額は、パブリックサポートテストの総収入金額及び寄付金総額の両方に含めないとしてきたが、これを1000円未満に引き下げるとしている。

d)国や地方公共団体及び日本国が加盟している国際機関からの委託事業費、同様の国際機関からの補助金の額は、パブリックサポートテストの総収入金額に含めないことにするとしている。

 

(2)活動範囲要件の削除

特定非営利活動の事業が複数の市町村で行われていること等の活動の範囲を定めた要件は、現実のNPOの活動状況に合わないことから、これを削除するとしている。

 

(3)海外送金等の条件の緩和

認定NPO法人の海外への送金又は金銭の持ち出しについては、その都度あらかじめ国税庁への届出が必要とされていたことから、特に国際NGOを中心に手続きが煩雑との批判があったことから、事前の報告は200万円を超える場合とし、それ以下は事業年度終了後の報告でよいとしている。

 

(4)みなし寄付金制度の導入

認定NPO法人が収益事業(その他の事業)に属する資産のうちから特定非営利活動の事業のために支出した金額については、その収益事業の寄付金の額とみなし、寄付金の損金参入限度額を所得金額の20%とするとしている。他の公益法人の制度の関係もあると思われるが、収益事業の収益を全て特定非営利活動の事業に支出するのであれば、100%でも不思議ではない気がする。

 

3.注目される公益法人改革

NPO法や認定NPO制度の改正が昨年12月に決まったが、公益法人改革の基本方針が、行政改革事務局(行政改革担当大臣の所管)の懇談会で検討されており、既に事務局原案が検討されているらしい。(12月30日の毎日新聞の報道)

3月の年度内には「公益法人制度等改革要綱」を出すことが閣議決定されているから、そろそろ基本方針の原案が決まると思われ、ボーンセンターもNPOとして注目すべきだと思う。政府としては2005年度中に社会貢献性を基準とした民法改正に踏み込んだ法整備を完了する方針と言われている。

財団法人や社団法人の設立には主務官庁の許可が必要なため、行政による裁量の余地が大きく、天下りの温床になっているとの批判がある。また、公益法人と営利法人の中間的な性格を持つ一部の業界団体やマンション管理組合に法人格を与える中間法人法が整備され、NPO法もあるなど、民法34条内の法人間の分類が複雑化している。

こうした中で、これまでの公益法人(社団法人と財団法人)とNPO法人と中間法人を一本化して準則主義で設立できる非営利法人とするか、それとも一定の公益性をもつ税制優遇の対象となる法人とそうでない法人にわけるかが大きな論点となる。一本化しての準則主義の場合、税制優遇の対象となる団体は別にどこかで認定する必要も出てくる。準則主義は基本的には届出だけなので、それによって設立された法人に一定の(その程度にもよりますが)税制優遇を与えることは、制度設計する側としてはかなりの知恵を絞る必要があるし、政治的な決断が重要になりそうである。

公益法人改革の議論は税制もNPO法も含む広範な制度的課題をもつものであり、長期にわたって蓄積された天下り先等の利権構造にメスを入れるもので、様々な抵抗が予想されることから、行政や政治家だけで納得がいく解決ができるとも思えない。こうした制度改革の意味を理解して、これからの議論に参加するのも面白いのではないだろうか。もっと詳しいことを知りたい方は、下記のホームページをご覧下さい。

http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/koueki-bappon/kondankai/


(副代表・栗原 裕治)

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