48. 連続インタビュー=武井昭夫さんに聞く現代の危機とはなにか――戦後史問答(その2) これからの反戦平和運動の在り方を探る」(『思想運動』2003.2.1.)(2003/02/06搭載)

 以下は「活動家集団 思想運動」発行の『思想運動』No.687 2003年2月1日発行に掲載された武井昭夫さんへの連続インタビュー「戦後史問答」の第2回「これからの反戦平和運動の在り方を探る」の中の一部で、ベ平連、市民主義などに言及している部分のみを転載する。

反戦と階級闘争
その違いと関連

――現に、ヨーロッパやアメリカでの反戦運動の盛り上がり、広がりは予想を上回ってます。昨年十一月初め、イタリアのフィレンツェでは欧州社会フォーラムのキャンペーンに参加した人が一〇〇万人、これはすごいことですね。日本では去年の東京の集会で最大規模六万人ぐらいだったが、今年の一月十八日の世界同時行動日には日比谷集会が七〇〇〇人規模でした。ヨーロッパのそれとは比較にならないほど遅れている。ただ、日本でもそこに若い人たちが結構きはじめていることは注目されますが、その世界同時行動に参加したATTAC(アタック)というグローバリズムに反対する運動体の会員の交流の場で、こういう市民運動系の若い人たちがこれからどんどん参加してき て、それといま核になっている二〇労組の勢力と合体していけば、一〇万人規模の集会を組織していくことも不可能ではない、という感想が出ていました。ATTACとは、資本が国境を越えてあちこち動くのに対して何%かの税金をかけてそれを途上国に還元しようという運動で、フランスから始まり、日本にもATTAC Japanというのがある。
武井 それも新しい型の一種の反資本主義的運動ではないのかしら。
――だけど、それはまっすぐに社会主義的方向とは結びつかない。ヨーロッパでは左翼系諸潮流の人たちが結構ここに入っているようだし、日本でも左翼系諸潮流の人たちや市民運動の人たちも入っていて、さまざまな課題を内包しているようです。それはともかく、市民運動の人たちとも連携して全国でさしあたり一〇万人ぐらいを目指した運動が可能かもしれない。しかし、そういう運動が盛り上がったとして、そのあとどういう方向に発展しうるか、運動なり組織が持続しうるかということが問題ですね。かつて、例えばベトナム反戦でもそういう盛り上がりがあったが、やがては雲散霧消してしまった。いわゆるべ平連の活動家とそのイデオローグ、すなわち反政党=「市民主義」主義は残っていますが、そのくりかえしになる可能性がある。とにかくイラク戦争をブッシュの勝手にはさせない状況を作り出すことが当面の急務、第一義的なことですが、同時に、運動の今後を考えていくとき、それをどういうふうに……。
武井 そう、それがいま一番アクチュアルな課題で、いまのイラク反戦のなかでみんなで考えるべき問題の要めでしょうね。わたしは、反戦の力はそれがどんな形態であれ、どんなイデオロギー的イニシアチヴであれ、とにかく発展させつつ、それを労働運動の再生、連合支配を下から打ち破るエネルギーに回帰させる努力をすすめるべきだ、と思うのです。もともと市民的運動と階級的労働連動とは対立するものではなくて、連携するものとして考えられていくはずのものです。不幸にも、併立ないし対立するような様態となってきたのは、これまでの運動の欠陥であって、本来の姿に回帰していく必要がある。そういう点で今次のイラク反戦のなかでわれわれも協働しつつ、人々の間にその考えを浸透させていきたいですね。反戦運動は当然、それ自体、労働運動と結びつくし、労働運動の強化に回帰していく。労働運動は古い二〇世紀的な運動で、二一世紀の運動はもう労働運動なんてものではなく、市民運動としてのみ発展していけばいい、それによって平和が維持され、社会的不正もそれなりに是正されていく――という考え方は間違いでしょう。それでは、どこまでいっても、こんにちの帝国主義の世界支配の主軸であるグローバリズムを打ち破る課題とつながってこないですから。新しい社会主義の展望を現在のいろいろな分野の民主的な人民運動が見失っているところに、こんにちの平和運動、民主運動、反体制運動それぞれの困難がある。そこに、深刻な危機下で資本主義がなお狂暴な新ファシズム=新自由主義支配をつづけていくことを許している根源的な要因がある、と思うのです。

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