133 越田清和「社会変革とNGO、国家死滅」(抄)(『季刊 運動〈経験〉』2007年21号)(2007/05/12記載)

 この論文も、No132 と同じく『季刊 運動〈経験〉』の前号の栗原幸夫『未来形の過去から――無党の運動論に向って』特集で多く論じられているシングル・イシュー問題をとりあげて論じたものだが、その 最後の2節だけを引用する。

 ……こうした動きに対抗するためには、国内のシングル・イシューに取り組んできた運動体と国際的なシングル・イシューに取り組んできたNGO(的運動体)が、もっと議論を積み重ねながら、「自分たちの民主主義とは何か」を具体的にしていくことが必要ではないか。それは自分たちがシングル・イシューの中で獲得してきた権利や、国境を超えた世界の多数者とのつながりの中で獲得した価値観を社会に定着させていく過程でもある。改憲に反対する運動を「もう一つの世界」を構想する運動につなげていくことが求められている。
 栗原たちと一緒にべ平連を担ってきた鶴見良行は、日本国憲法前文と第九条によって軍事力の保持を放棄した日本の憲法は「人類史上はじめて行なわれた国家死滅の国際的な宣言である」と述べた(「私の創憲論――一試論としての少数意見」、鶴見良行著作集2 『ベ平連』、みすず書房)。栗原が、この本の中で何度もふれている「Fundamental Social Change」も、国家死滅という方向へ向かうための変革だったはずである。改憲に反対する運動やグローバリズムに反対する運動が、新たな国家主権を求めるものにならないようにするために、もう一度、憲法が持っている「国家死滅の理念」を確認してみる必要があるのではないだろうか。
 それにしても、栗原幸夫、吉川勇一、武藤一羊、そして鶴見良行まで引用してしまった。私の頭はかなり「ベ平連」色になっているのかもしれない。

越田清和「社会変革とNGO、国家死滅」『季刊 運動〈経験〉』2007年21号 p.144 より)

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