628.河出文庫から黒川創編で『鶴見俊輔コレクション』が刊行。以下続刊で。ほかにベ平連関連書物なども。2012/10/14掲載) 

河出文庫から黒川創編で『鶴見俊輔コレクション』が刊行。以下続刊で
 
河出書房新社の河出文庫から、「黒川創・鶴見俊輔コレクション」というシリーズで、鶴見俊輔さんの選集が2012年9月から刊行され、すでに第1巻の『思想をつむぐ人たち』、第2巻『身ぶりとしての抵抗』が発行されている。
 第1巻は小伝集だが、その中には「大臣の民主主義と由比忠之進」
1967年)、「葦津珍彦――日本民族を深く愛した人」(2001年)「ゲーリー・スナイダー――人間の原型に帰ろうとした詩人」(2002年)など、ベ平連の活動と関連のある部分を含んでいる文章が掲載されている。 また、第2巻には、「五十年・九十年・五千年」(1997年)、「すわりこみまで!反戦の非暴力直接行動」(1966年)、「おくれた署名」(1967年)、「高畠通敏――学問と市民連動をつないで」(2008年)、「小田実――共同の旅はつづく」(2008年)、「脱走兵の肖像」(1969年)、「ポールののこしたもの」(1971年)、「アメリカの軍事法廷に立って」(1970年)、「ちちははが頼りないとき――イークスのこと」(1971年)、「岩国」(1971年)、「憲法の約束と弱い個人の運動」(1994年)、「コンラッド再考」(1971年)など、ベ平連の活動、脱走兵援助活動、内ゲバ問題などに関連する文章が多数掲載されている。
 鶴見俊輔さんの著作集は、筑摩書房からかなり大きなものが2種出されてきたが、今回のアンソロジーは、9.11,3.11という大事件の後の新しい時代の中で、黒川創さんの努力による新しい編集方針の著作集になっており、ベ平連に関する理解に必要な文献集だけでなく、鶴見さんの思想をあらためて理解しようとするには、絶好な出版物として、ご推薦する。

3・11以後
の反原デモどの後にベ平連 運動に評価する評論
 3・11以後、反原発の10万単位の大デモのほか、各地域に新しいデモや活動が広がってきている。それに伴い、これらの運動論が何点も刊行されてきている。
  その中には、かつのベ平連について触れた論評を含んでいるものも出されている。    
 例えば、小熊英二『社会をかえるには』(講談社現代新書 1912年8月 左の写真)には、「ベ平連は、日本の市民運動のなかでは成功した例と言われます」として、何ページかベ平連についての解説が述べられてい る。  
 また、油井大三郎編『越境する一九六〇年台』(彩流社 1912年5月 左の写真)は、内ゲバ問題と関連して「その点でユニークなのは、『ヴェトナムに平和を、市民連合(通称、ベ平連)』の運動である。……(中略)……日本の左翼の体質とも思える『セクト主義』の克服をめざした点でも ユニークな存在であった」とか「『ベ平連』などのように、ヴェトナム民衆に連帯する中で『被害者意識』からでなく、アジアに対する『加害者意識』の反省から反戦運動を組織していったという新しい連帯意識の成長も見られた」と指摘するなど、1960〜70年代の運動への批判論評が多い中で、ベ平連の運動には、プラス評価を指摘する著作が何点もある。
 五野井郁夫『「デモ」とは何か』(NHKブックス 2012年5月 右の写真)も、「今日伝説的となっているベ平連の活動」と表現し、「今日のデモや市民運動のレパートリーを先取りするような先鋭的な活動を行った」、「ベ平連はこれまでのいわゆる『市民運動』の枠を大きく超えたものとなった」として、ベ平連の活動を説明している。
 TwinNoNukes編著の『デモ いこ!』(河出書房新社 2011年12月 右の写真)は、デモに行こうという入門パンフレットのような本だが、それにも「さらに強力な武装をとなえる若者たちが登場したものも世界に共通していましたが、その帰結はほとんどが悲劇的なものでした。……(中略)……ただこの中で、日本の『ベトナムに平和を!市民連合』にみられるように、市民が政党の枠をこえて街頭に出はじめたことは忘れられてはなりません」と記してあ る。
 これら4点の書物のベ平連についての活動の部分の一部は、本サイトの「
ベ平連について論じた最近の文献の原文」に抄としてPDFファイルで紹介してある。

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