20. D・デリンジャーの自伝『「アメリカ」が知らないアメリカ』好評 (98/1/25)

 

『「アメリカ」が知らないアメリカ――反戦・非暴力のわが回想』(吉川勇一訳)

 

ハードカバー A5判 写真ページ、関連地図、年表、索引などを含め 624ページ

定価 \6,800 (+税)

 

 12月に来日したデイヴ・デリンジャーの自伝 "From Yale to Jail" の日本語版は、11月末に藤原書店(162 東京都新宿区早稲田鶴巻町 早稲田玉井ビル TEL: 03-5272-0301 FAX: 03-5272-0450)から刊行されたが、各紙の書評などで紹介され、好評である。12月6日、市民の意見30の会・東京が開催した講演会の席では、著者によるサインのサービスなどもあって、用意した本が全部売り切れ、書店に追加を取りに行くほどだった。

 以下は『毎日新聞』1997年11月25日の「余録」欄に出た記事。

 「ソ連が崩壊したとき、そしてその崩壊は当然だったのですが、アメリカの政治家たちは『われわれの制度が勝ったのだ』と言いました」とデイビッド・デリンジャー氏は言う▲「よく言えば、ソ連とは、市民的自由と政治的民主主義なしに経済的民主主義が獲得できるかどうかを試みる一大実験だったと言えます。しかしソ連では、大部分の富裕層が共産党とその周辺に集まったことで、経済的民主主義を達成することにさえ失敗したのでした」▲旧ソ連の失敗はこれまでも何度となく指摘されたことだが、そのあとが面白い。「これと対照的に、アメリカ合州国は、よく言えば、経済的民主主義なしに政治的民主主義が獲得できるかを試みる実験だったと言えます」。その結果、「アメリカは政治的民主主義の達成に失敗したのです」▲この旧ソ連と米国の比較は、最近翻訳が出たデリンジャー氏の自伝「『アメリカ』が知らないアメリカ」(吉川勇一訳、藤原書店)の冒頭にある。著者は1915年、マサチューセッツ州に生まれ、名門エール大学を出て神学校に入り、徴兵拒否で投獄され、以来非暴力反戦運動の先頭に立ってきた人だ▲米国人として米国を見る目は厳しい。米国の株式市場は好景気を続けているが、貧困、栄養不良などで、毎年死亡する児童の数はベトナム戦争全期間の米兵の戦死者数を上回っている。また、米国の医療費は他の主要工業国のそれの2倍以上で、健康保険に入っていない人の数は4000万人に上っていると著者は指摘している▲では、日本はどうか。企業と総会屋の癒着、経営破たんの連鎖。経済的民主主義達成に失敗したこたことは明らかだ。政治家も途方に暮れている。政治的民主主義が機能しているとは、お世辞にも言えない。日本は失敗した。失敗が成功の母となればいいのだが。

それ以外に出た書評などのいくつかをご紹介する。次のそれぞれをクリックしてください。

(1) 中山千夏(『熊本日々新聞』 97年12月13日号)

(2) 吉岡 忍(『読売新聞』97年12月13日号)

(3) 栗原 彬(『朝日新聞』98年2月8日号)

(4) ダグラス・ラミス(『派兵CHECK』98年6月15日号)

(5) 吉川勇一 (『機』97年11月号)

placardnews.gif (1299 バイト)