19 米国の新しい地雷政策に対するJCBLの見解
2004年2月末にアメリカ政府が新しい地雷政策を発表した。その政策の中心は、一定期間経過後に自動的に不活性化もしくは爆発する地雷、いわゆる「スマート地雷」にすべての地雷を切り替えることである。また、その切り替えの期限を2010年までとし、それまでは従来型の地雷を使用する。この新政策の根本をなすものは「地雷は軍事的に正当かつ有効な兵器であり、地雷が人道的な被害をもたらすのは、その無差別な使用方法にある」という考え方であるが、アメリカのこの論理は、地雷問題が国際社会において表面化して以来、何も変化していない。たしかに、新たに政策に含まれた対車両地雷の制限や、人道的な地雷対策費への支出の増額などは評価に値する。特に対車両地雷の制限は議論すべき重要な点であるが、対人地雷の継続的使用を正当化することにはならないのである。
そして今回発表されたアメリカの新政策は、オタワ条約に対して真っ向から挑戦するものといえる。オタワ条約は90年代半ばのCCW(特定通常兵器使用禁止制限条約)における交渉の行き詰まりから、対人地雷の完全禁止を目指す市民と国家が作り上げた画期的な条約である。この条約で、各国政府と市民の考えの基礎にあったものは、非人道的な被害をもたらすすべての地雷の使用、保有、製造等の完全なる禁止であった。しかしアメリカの新政策は次に述べるように多くの点で問題を抱えるものである。
第1点目に「スマート地雷」の使用を継続する点である。「スマート地雷」は一定期間後に不活性化もしくは爆発し、その後の被害を生まないと言われる地雷であるが、「スマート地雷」はアメリカの主張のように、安全というわけでは決してない。例えば、不活性化以前では従来の地雷と同様の被害をもたらし、また100%不活性化するわけではない。それゆえ地雷除去作業も従来の地雷と同様の時間と労力が要求される。また、この種の地雷は空から撒かれるものが多いため、目印をしたり地図上に書き込むことが非常に困難である。このように「スマート地雷」への転換が正当化される理由は全くない。さらに、オタワ条約がCCWにおいて「スマート地雷」の使用が認められたことを不満として成立した条約であることを考えると、オタワ条約の精神を踏みにじるものといえよう。
第2点目に、従来の地雷の使用を2010年まで延期した点が挙げられる。これまでのアメリカの政策はクリントン政権が約束した2006年までの使用であった。新政策は明らかに約束の反故であり、政策の後退を示すものである。つまり、アメリカは2010年まで従来型の地雷を使用する可能性を明確にしたのである。
第3点目は国際規範、多国間主義への挑戦である。オタワ条約は現在141カ国が批准し、NATO諸国もアメリカを除きすべての国が批准している。地雷禁止の国際的規範は多国間主義を通して確実に形成されている。しかしアメリカは国際規範を無視し、単独で行動することによって多国間主義を重視していない。このようなアメリカの行動は、いかなる政策をも正当化しないだろう。「貧者の兵器」と言われた地雷を世界で最も裕福な国が使い続けるのは皮肉としかいいようがない。
以上のように、アメリカの新しい政策は問題を多く抱えるものである。そして新たに対車両地雷の制限を含んだアメリカの政策はさまざまな論点の存在を示している。今年は条約見直しのためのナイロビ会議が行われる年でもある。多くの市民と各国政府が協力して作り上げた条約とその精神を今後も保ちつつ、アメリカの提示した論点とその問題点を議論し、完全な地雷禁止への道筋を明確にすることが重要である。