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『ランドマイン・モニター報告2004』の注目点

ランドマイン・モニター報告書とは

地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL)は、1999年から毎年ランドマイン・モニター報告書を発行している。この報告書は、世界各国が対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)を遵守しているかどうかモニター(監視)するほか、地雷の問題に対して国際社会がどのような対応をして対策をとったかを評価する役割をもっている。さらに、まだオタワ条約に加入していない国の地雷状況や地雷対策も調査し発表する。この報告書を執筆するのは各国のNGOや個人である。

2004年11月18日に全世界各地で発表された『ランドマイン・モニター報告2004』は、いままでの年次報告とは少し違い、ナイロビ・サミットにあわせて、過去5年間の地雷対策活動の進展や変化がまとめられている。オタワ条約と対人地雷全面禁止運動の具体的な成果や影響を知る上で絶好の資料となっている。以下に注目点を記載する。

*調査対象期間は20035月〜20045月までであるが、20049月までに報告された新しい情報も可能な範囲で加筆してある。


■ 対人地雷全面禁止条約の普遍化

20051月現在、対人地雷禁止条約の締約国数は144カ国で、署名をしているが批准はしていない署名国は8カ国である。これらこの条約に参加している国(152カ国)は世界の4分の3以上にあたる。条約の普遍化は地雷禁止条約やICBLが成し遂げた大きな成果である。

その一方で、いまだに42カ国は地雷禁止条約の枠外にいる。国連の常任理事国5カ国のうち3カ国(中国、ロシア、アメリカ合衆国)は条約に加入していない。20042月にアメリカ合衆国は対人地雷を将来的に全て破壊するという長期目標を反故にした。これらの国々に条約参加を呼びかけることは、締約国やICBLに課せられた挑戦である。

■ 対人地雷の使用について

1990年半ばから世界中で地雷の使用が大幅に減少したことは、地雷禁止条約や地雷廃絶活動の成し遂げた偉業の1つである。『ランドマイン・モニター報告1999』によると、地雷の使用が疑われるまたは使用が確認された政府は15であったが、『ランドマイン・モニター報告2004』ではその数が4と報告されており、減少している。過去5年間に継続的に地雷を使用している国はロシアとミャンマー(ビルマ)のみである。

武装非政府主体(NSAs)に関しては、1999年以来、地雷を使用したと報告されているのは少なくとも70団体ある。NSAが地雷廃絶を約束するための活動も行われているが、これからどのようにそれを発展させていくかが注目される。

■ 生産

かつては50カ国以上において対人地雷が生産されていたが、そのうち36カ国が生産を停止すると公表し、実行している。地雷禁止条約に加入していないが生産を停止した国はそのうち3カ国(フィンランド、イスラエル、ポーランド)あり、地雷廃絶という考えは広まっている。現在、対人地雷を生産している国は15カ国である。2003年にネパールは生産国リストに加えられた。生産国への働きかけも重要な課題である。

■ 輸出入

対人地雷の移動や輸出は1999年以降事実上ストップしており、対人地雷の輸出入はごく少数の違法取引に見られるのみである。地雷禁止条約に未加入の国々も、地雷取引の一時停止を発効させるほか、一時停止期限を引き延ばすなどしている。

■ 貯蔵地雷

地雷禁止条約の交渉中や発効当時は、131カ国が約26000万個以上の地雷を保有していた。この1年間に400万個の貯蔵地雷が廃棄され、世界各国で廃棄された対人地雷の数は約6200万個となった。しかし、地雷禁止条約に加入していない国の貯蔵地雷の数は18000万個から18500万個だといわれている。なかでも中国(1億1000万個)、ロシア(5000万個)、アメリカ合衆国(1040万個)の3カ国の貯蔵地雷数は突出しており、この3カ国が世界のほとんどの貯蔵地雷を所有しているといえる。

■ 地雷被害者支援

地雷の影響を受けている大多数の国で、新たに地雷の被害に遭う人の数が減少した。特に大きく減少したのはアフガニスタン、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、カンボジア、レバノン、セネガルならびにスリランカである。今まで把握されている地雷生存者の数は少なくとも230,000人以上で、97カ国および9地域で報告された。記録されていない死傷者も多いことを考えると、現在、世界には300,000人から400,000人の地雷生存者がいると推定される。地雷対策活動への資金は過去5年で増加しているが、地雷被害者支援に使用される資金は多くはない。例えば、2004年、日本政府が地雷対策費として拠出したODAはほぼ100%地雷の除去および除去機械の調査・開発に使われた。

                               (抄訳:加藤美千代)

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           152カ国が対人地雷の禁止に同意した。

           6,200万個の貯蔵地雷が廃棄された。そのうち3,700万個は対人地雷禁止条約の締約国によって廃棄された。

           合計で1,100平方キロメートルの土地から地雷が除去された。数にして、対人地雷400万個以上、対車両地雷100万個、不発弾ならびに不発弾の破片が数百万個以上除去されたことになる。

           援助として拠出された地雷対策活動費の総額は135千万ドルである。1992年から換算すると総額約21億ドルにのぼる。

           1999年から2003年までに約24290万人が地雷回避教育に参加した。

           1999年から20049月までに、新たに地雷または不発弾の被害にあった人の数は、少なくとも75カ国において42,500人以上であると報告されている。しかし、報告されていない犠牲者も多数にのぼると考えられ、実際の犠牲者の数はこれを大きく上回ると思われる。おそらく毎年15,000人から20,000人が新たに地雷または不発弾の被害に遭っていると考えるのが妥当であろう。

           5年を通して継続的に地雷を使用している国はロシアとミャンマー(ビルマ)の2カ国のみである。

           対人地雷の合法的な輸出入は知りうる範囲では行われていない。