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ATTAC Japan(首都圏)設立趣意書
もうひとつの世界の可能性を求めて

 今日、さまざまな意味でグローバリゼーションという言葉が声高に叫ばれている。その中で私たちが問題にするのは地球的規模での市場原理主義中心の経済、すなわち新自由主義的な経済のグローバリゼーションである。その経済の特徴のひとつは、財やサービスの取引とは無関係な巨額な投機的資金の存在である。瞬間的利益を求めて世界中を駆け巡り、一国の経済を左右するまでになっている。もうひとつは、国民国家のGDP(国内総生産)をゆうに凌駕する巨大多国籍企業の存在である。生産費を極限にまで抑制し、市場を獲得するために、国境を超えてカネ、モノ、ヒトを自由に動かしている。このような弱肉強食の市場原理の経済が、人々の福祉や基本的人権を保障する民主主義的諸機関ならびに主権国家をも従属させながら世界を席巻しているのである。

 この経済のグローバル化の推進機関であるG8(主要先進国)サミット、IMF(国際通貨基金)・世界銀行そしてWTO(世界貿易機関)は、今や「正当性の危機」に見舞われている。実際、政治家やお抱え学者たちの“貿易の自由化をはじめとする規制緩和こそ貧困からの脱出策”という掛け声とは裏腹に、途上国の債務は増えつづけ、国連開発計画(UNDP)によれば、世界の最も貧しい20%が住む諸国と最も豊かな20%の人が住む諸国との一人当たりの所得の格差は1対150にも上り、歴史上かつてない不平等な時代として現われている。世界人口60億のうち80%は困窮しており、その半数は1日2ドル以下で生活している。また、森林喪失や土壌劣化、水危機、温暖化など環境破壊もとめどなく進行している。

 一方、市場原理主義の深化は、それへの反動として暴力的な排外主義や原理主義などの潮流をも生み出している。その背景には、深刻な貧困と飢餓、内戦そして次代を担う青年の絶望等々の社会的土壌がある。

 さらに、貧富の差は今や先進国をも襲い、いっそう富裕になるエリート層の一方で、失業、ホームレス、貧困などの増大、総じて社会的不平等が拡大している。また女性・人種差別により低賃金・不安定労働が固定化され、それが男性・正社員にも波及している。

 ひるがえって、この日本でもいわゆる小泉「構造改革」としてグローバリゼーションの徹底が、すなわち市場原理・競争原理導入の徹底が図られようとしている。この結果、企業が倒産し、産業は空洞化して、失業者が空前の規模で増大している。また、公共サービスの民営化、公的社会支出の削減は社会保障を低下させ、地域や農業が切り捨てられようとしている。

 これまで新自由主義的グローバリゼーションに対し散発的な闘いはあったとはいえ、このような流れはやむをえないものとして宿命論的に受け入れられてきた。しかし、今や目に見えてその矛盾が露呈している。耐えがたい貧困と不平等に対する私たちからのオールタナティブが必要である。そのために私たちは以下のことに取り組む。

 途上国の公的債務の帳消し要求を支持するとともに、投機的為替取引に対してより重い課税となるトービン税を提起する。トービン税は、例えばすべての為替取引にわずか0.05%課税しても年間1000億ドル近くの収入が見こまれ、世界の極端な貧困撲滅に必要とされている800億ドルをゆうに超える資金が得られる。この課税はまた、市民的抵抗の強力な武器となるであろうし、市民立法など市民による政治の復権を可能にする。

 今日、新自由主義的グローバリゼーションの最も強力な国際経済機関はWTOである。貿易と投資の自由化は、もっぱら多国籍企業ならびに豊かな国の利益になっている。すでに債務国はIMF・世界銀行の構造調整により規制緩和・民営化を強いられてきたが、WTOはこれを全世界に及ぼそうとするものである。私たちは食料主権と安全、教育、健康、文化、水など人間の生命・生活に直結する課題を民衆の手に取り戻し、民衆のための貿易、すなわち公正な貿易を提起する。

 私たちはまた、かつてない雇用の危機に直面している。雇用の非正社員化、性や人種による差別・分断化に反対し、「底辺へ向かう競争」を解消するために、とりわけアジアでの日系多国籍企業下での労働組合活動や反公害運動との連帯を提起する。

 私たちの運動は、闘う主体のネットワーク化をめざす。これまで労働運動は労働運動、市民運動は市民運動というように分断されてきた。しかし、今や市場原理主義的経済のグローバル化による攻撃を等しく受けている中にあって、ともに社会運動として連帯し闘っていくこと、そのためのネットワーク構築を私たちが担っていくことを提起する。

 私たちは、新自由主義的グローバリゼーションに対し異議申立てをしている全世界の人々と連帯し、福祉、人権、社会保障、文化、環境、自治などの実現のための民主主義的空間をつくりだしていこう。私たちは「もうひとつの世界の可能性」を求めて、多くの民衆の希望や未来をともにとりもどしていこう。

                                           2001年12月9日                                            

                

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