APWSL日本委員会2008年(第19回)総会の報告

トヨタの本拠地から労働者の国際連帯を広げよう

 APWSL日本委員会の2008年度総会を7月12(土)午後から翌13日(日)お昼まで愛知県東海市青少年センターと近くの坂喜代子さんお宅で開いた。2日間で関西、愛知、関東から合計21人が参加した。会場のある東海市大田町は知多半島の付け根で名古屋の近郊である。
  総会1日目は冒頭、原田恵子共同代表と地元APWSL愛知の坂代表の歓迎のあいさつから始まった。その後、参加者全員が短い自己紹介を行う。

各テーマはビデオやスライドなど映像を使ってビジュアルに報告された

  この日のメインイベントは以下の7個のビジュアル運動報告である。
1)大阪・毎日放送制作の「映像2007 夫はなぜ死んだのか〜過労死認定の厚い壁〜」。これはトヨタ堤工場の内野健一さんの過労死の労災認定に関する裁判勝利(昨年11月名古屋地裁判決)のドキュメンタリーを短縮したもの(30分)。上映後、全トヨタ労組を支援する会の近森泰彦さんから以下の補足発言があった。これは単に内野さんの労災認定に留まらず、トヨタと労働基準局との癒着構造を暴く端緒になる闘いだった
2)フィリピントヨタ労組を支援する会の2008年度総会で発表された1年間の活動報告スライドを圧縮・改訂した(12分)。スライドと並行して同会の吉田稔一さんが今年も9月中旬に予定する世界キャンペーンのアピールを行った。

第1日・愛知県東海市青少年センター
関西7人、関東7人・東海7人 合計21人が出席した
開会のあいさつをする原田恵子共同代表

3)原田恵子さんが今年1月タイを訪れ、タイAPWSLのメンバーたちの労働運動の現場を記録したビデオ(9分)。上映後、原田さんは軍事政権が終わったが、弾圧が続く厳しい状況を話した。
4)7月4日から7日までの札幌でのG8洞爺湖サミット反対運動の写真スライド(10分)を映しながら稲垣豊さんと他の参加者が報告した。警察の異常な過剰警備が目だった。
5)組合つぶしの解雇が原因のハワイ・パシフィック・ビーチ・ホテル争議についてLabor Nowの青野恵美子さんと高須裕彦さんが5月に現地を訪れ、争議を支援すると同時にビデオに記録した(約3分)。そして、7月初め当該組合の2人が来日して日本の支援組織にボイコット運動を訴えた。そうした経過と今後の方針を山崎精一さんが報告した。
6)ノヴァ英会話学校の倒産とその後のG社によるインチキ引き継ぎ、それを跳ね返したゼネラルユニオンの奮闘の経過を民放のテレビニュース(約5分)を見ながら、ゼネラルユニオン委員長の山原克二さんが報告した。
7)昨年、東京葛飾区の高嶺清掃鰍ナアルバイトを組合員に組織化した自治労公共サービス清掃労組高嶺支部で切り崩しのために解雇された組合員の解雇撤回の闘いを6月27日の東京東部地区集会を中心に高幣がビデオ制作した(10分)。その後、同清掃労組書記長・河津竜司さんが現状を報告した。 

3地域の活動報告

第2部として3地域の活動報告を行った。
  愛知:APWSLの活動を通じてつながった人々が愛知で今後さまざまな対トヨタや外国人労働者との連帯など国際連帯を通して労働運動の発展を模索したいと阪野智夫さん(APWSL愛知事務局長)が話した。
  関西:昨年度7月に韓国APWSLと交流、9月に中国子会社がカドミウム汚染を引き起こした松下電池への抗議、12月に東一紡績争議ドキュメントを中心にレイバーフェスタ2007を開くなど主だった行動を丹羽通晴さんが報告した。
  関東:日本委員会18年を経過し、メンバーが老齢化、出発の頃の活発さを失いつつある中で、草の根国際交流とインターネットなどを使った情報交流を活発化させていくなかでメンバーの拡大を図っていきたいと高幣が提起した。

地元愛知を代表して坂喜代子さんが歓迎のあいさつ  夕食に坂さんの畑で採れた野菜を中心にごちそうが並んだ
2日目も坂さんお自宅で陽光さす部屋で会議を続けた

 1日目の会議日程を終え、午後6時過ぎに近くの坂さんのお宅に移動した。お宅は兼業で農業も営む田んぼや畑に囲まれた農家の大きな住宅でした。食材は坂さんの家で獲れた野菜や鶏・卵が中心に手作りの10数種の料理とビール、日本酒、焼酎と豊富な酒で20人ほどの大宴会となった。午後7時から始まり、終わったのは11時過ぎであった。翌朝も様々な料理とその日に産んだ卵をごちそうに朝食をいただいた。

3つの定例議題

2日目(13日)は以下の3つの議題を討議した。
(1)APWSL国際組織と次回総会・現状と今後の展望
  日本委員会に新しく愛知が加わったのでAPWSLの成立以来の簡単な経過と各国組織の現状を山崎精一さん(共同代表・東アジア調整委員)が報告した。規約では今年3年に1度の国際総会(Council Meeting)を開く年であるが、2つの理由で現状では開けない。総会開催の費用がないことと、APWSLの執行部である書記局(調整委員と2名の共同代表)の意志一致ができていないことだ。各国の交流など地道な活動を続けながら、総会のチャンスを見出すことを確認した。
(2)インターネット活用と機関誌「リンクス」
  2005年のマレーシア総会で決定したAPWSLのWEBサイトは韓国の責任で2005年12月に開設された。しばらく日本からの情報送信の体制が整わず休業状態であったが、昨年7月からレイバーネット日本の国際部が毎月10本のニュースを英語で掲載し始めた。この7月で丸1年になり、さらに充実させるよう努力する。(担当・高幣)
  国際メーリングリスト”APWSLMEMBERS”は日本の担当でWEBとほぼ同じ時期にスタートさせた。残念ながら互いの組織の情報交換や討論などに本格的に利用されていない。加盟各国の人々に積極的な利用を呼び掛けていく。(担当・山崎)
季刊の日本語機関誌「リンクス」は不定期だが、昨年3号発行された。昨年編集長が稲垣豊さんに交代した。しかし、定期発行が困難な状態。次期編集長を関東で決める(稲垣報告)。
  日本委員会WEBサイトは昨年度ほとんど更新できず、開店休業状態。今後、レイバーネット、フィリピントヨタ労組(TMPCWA)を支援する会、会員労組などのホームページと連携したサイト構築を進めたい(高幣報告)。
  会員メーリングリスト“APWSLJPMEMBERS”を開設して10年以上経過、ようやく50名を越えるメンバーになった。日常的な情報のツールとしてMLはますます重要になっている。Eメールを使う人も増えているので会員にもっとメンバーになってもらうように働きかける(高幣提案)。
  昨年日本委員会の新リーフレット作成が決まり、今回試作版を配った。もっとAPWSLの役割を具体的に書いた方が良いなどの注文を受けて、早急に完成配布する。(山崎提案)
(3)2007年度決算と2008年度予算
  2007年度決算は収支とも約37万円でほぼ均衡している。会員減少などが原因で一昨年に比べ会費納入が減った。2008年度もほぼ同規模の予算を提案し、決定した(会計・池田良二提案)。
(4)役員はほぼ全員留任で以下の通り選任した。
◇ 共同代表:原田惠子、山崎精一
◇ 調整委員:丹羽道晴、高幣真公
◇ 「リンクス」編集長:関東で選出
◇ 会  計:池田良二
◇ 会計監査:山原克二
◇ 全国他運営委員:現役員留任と追加 + 愛知から推薦者追加
(5)その他
  フィリピントヨタ労組支援の世界キャンペーンの団体署名にAPWSL日本委員会も署名することを決めた。

愛知の皆さん、ありがとう

  会議は予定通り12時前に終了。昼食のカレーライスを最後の食事としていただき、記念撮影をして、坂さん宅を退去した。その後、希望者10名余りがエクスポ−ジャーとして名古屋にある産業技術記念館(トヨタテクノミュージアム)を見学した。
  初めての愛知県で開催、しかも個人宅での開催で準備等地元の皆さん、とりわけプロジェクタを設定していただいた加賀吉利さんや料理等の手伝いに来てくれた坂さんの友人の塩川昭代さんや夫君坂信義さんにたいへんお世話になり、大きな負担をおかけした。いっぱい美味しい料理と至れり尽くせりの歓迎していただき、まれに見る楽しく充実した総会でした。また、総会の成功のために努力していただいた愛知の皆さん、たいへんありがとうございました。

                        2008/7/20   報告・高幣真公(調整委員)

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