「在留特別許可取得一斉行動」(速報)No.28



■ミンスイさん、東京高裁に控訴■

 
 本年2月15日、東京地裁で訴えを棄却されたビルマ国籍のマウン・ミンスイさん家族は、市村陽典裁判長の判決を不服として東京高裁に控訴しました。「在留制度の枠内で人権は守られればよい」とする市村判決は、人権は国境を越えて守られなければならないという当然のことを忘れ去っています。この控訴審には、児玉晃一、生田康介、渡部典子、土井香苗弁護士に加えて子どもの人権に詳しい山口元一弁護士が加わり、勝利に向けた万全の体制をとっています。すでに控訴理由書も高裁に提出しており、APFSとしても従来どおり法務省に対する要請行動を続けていく決意です。その後も、ミンスイさんらの仮放免は取り消されることなく更新されていますが、法務省が卑劣な方法で退去強制を執行しないよう警戒を怠らないようにしたいと考えています。


■バンビ・ナシルさん家族に不当判決■

 4月24日、東京地裁の市村裁判長は法務大臣の裁決と退去強制令書の取り消しを求めた訴えに対して、ミンスイさん家族と同様に棄却する旨の判決を言い渡しました。アフガニスタンの難民に対する社会的な関心が寄せられる中、市村裁判長は再び人権を踏みにじる判決を言い渡しました。APFSでは、この不当判決に強く抗議するとともに、バンビ・ナシルさん家族を収容しないように法務省―入国管理局に申し入れをしました。同時に、控訴はせずに「再審情願」を行うことにし、5月2日に東京入国管理局第2庁舎にナシルさん家族が付き添いの西岡弘之、北村聡子両弁護士とともに関係書類を提出しました。また両弁護士と吉成代表が、「再審情願」に対する決定が出されるまでは身柄を収容しないように強く申し入れを行いました。バンビさんは、裁決後の収容生活で、腰痛を悪化させ5月中旬から1週間ほど入院をしました。引き続きご支援をお願いします。

■アミネさんの証人尋問行われる■

 長女が小学校6年に在学中であったにもかかわらず。在留特別許可を認められなかったアミネさん家族が法務大臣を相手として裁決の取り消しを求めた訴訟の山場とも言える本人の証人尋問が5月23日に行われました。最初に山田正記弁護団副団長が質問をし、法務大臣の裁決の不当性を明らかにしました。この日、国側は尋問を見送りましたが、裁判長から「もう少し論理的に整理するように」と異例ともいえる注意を受けていました。次回は7月4日になります。


■第三次出頭者、あとは徐さん父娘、ヌールさんの裁決を残すのみ■

 7家族、1個人・26名が出頭した第三グループに対して、これまでに6家族・23人に裁決が出されています。コロンビア国籍の母子のみ在留特別許可が認められなかったものの、5家族・21名に在留特別許可が認められています。近いうちに徐さん父娘にもよい結果が出される予定で最終的には6家族23名の人たちに在留特別許可が認められるものと思われます。これまでの出頭行動により、非正規滞在外国人の正規化の向けて一定の基準が形成されたものと思われます。

<ナセル・バンビさん御家族の裁判報告> 在特弁護団

(事案の概要)
 ナセル・バンビさん御家族(夫,妻,長男の3人家族)は,日本国内に生活の基盤が形成されたことを理由として,在留特別許可を求めましたが,特別在留許可を認めない旨の法務大臣の裁決が出されました。
 そこで,バンビさん御家族は,@同裁決は,憲法で保障される「居住の自由」(憲法22条1項),条約で保障される児童の「最善の利益」(児童の権利に関する条約3条1)を侵害するものであり,法務大臣の裁量権の濫用・逸脱があったといえること,A同裁決に際して,規則で定められている裁決書の作成(出入国管理法施行規則43条)がなされていないという重大な違法があったこと等を理由に,同裁決の取消を求めて東京地方裁判所に訴えました。

(判決の要旨)
 この裁判は平成14年2月8日に結審し,同年4月24日に判決が言い渡されました。その内容は,バンビさんたちの訴えを棄却し,裁決の取消を認めないという,人道的配慮を欠く不当なものでした。

(判決理由の概要)
@ まず,同裁決が,「居住の自由」(憲法22条1項)及び「児童の最善の権利」(児童の権利に関する条約3条1)に反し,法務大臣の裁量権の濫用・逸脱があったとの主張については,
 ・「居住の自由」は,外国人在留制度の枠内でのみ保障されているに過ぎない。
 ・「児童の最善の利益」も在留制度の枠内において主として考慮されるものである。
  したがって裁量権の濫用・逸脱はない。
 というものでした。

A また,裁決書不作成に違法があったとの主張に対しては,
 ・裁決書不作成の点には瑕疵があるといえる。
 ・しかし,裁決書において記載される事項は,容疑者の異議の申出に理由があるか否か(すなわち,退去強制事由が存するか否か)に関するものであるから,退去強制事由該当性に争いのない本件においては,裁決書不作成が法務大臣の判断の適正確保に影響があったとはいえない。
 ・したがって,裁決を取り消さなければならないほどの問題があったとはいえない。
 というものでした。 

(本判決に対する弁護団所見)
 まず,前記@の点については,本判決は,憲法や条約が国内法より優先するという法学の基本的枠組みを理解していない不当なものである。
 また,Aの点についても,裁決書不作成が違法と認めた点は評価できるが,裁決書に記載されるのは,退去強制事由があるかどうかという点だけではなく,その点を看過した本判決は不当なものである。

 


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