法務省 入国管理局申入れ報告

 

2002年6月27日・午後2時 法務省・会議室

T.はじめに
 交渉はまず、法務省側から、申入書に対する回答が、それに続いてAPFS側からの質問という形式をとって行われました。当日は、植田むねのり議員、APFSからは吉成勝男代表、津川勤運営委員ら5名が、法務省側からも川上章入国審査課長、西山秀明警備課長補佐ら5名が出席して申し入れが行われました。

→ 申し入れ書

U.法務省側の回答について
申入書項目1に対する回答
 在留特別許可の裁決にあっては基準というもの存在しません。出頭する個人によって考慮する事情が家族の状況などによって異なるためですまた、法務省・入国管理局側としては、申入書にある集団出頭について、団体ではなく、あくまで個別に退去強制の手続きのために出頭したものであるという認識です。

 在留特別許可の審査過程公開については、あくまで出入国管理法に基づいて行っているとしか言えません。しかし当然のことながら出頭してきた本人には、人道的な見地から、できる範囲での説明はしてゆこうと考えています。。裁決の理由は公開していません。

 また、仮放免は住居が属する都道府県において認めるとしていますが、本人の資産、健康状態、生存権に関わる場合など個々の事情を考慮して必要ありと認めた場合にのみ、許可されるものです。一時旅行許可は政治性を伴った場合には認めることはできません。

申入書項目2に対する回答
 日本政府は、政策としてアムネスティはとっておりません。一律に不法滞在者の在留を認めるケースは例外措置であると考えています。アムネスティを一度限りとして実施した場合、不法滞在を長引かせたり、これを求めてより多くの不法残留者が出るなども憂慮されます。その他にも種々の問題が発生するのではないかという危惧があります。在留特別許可の弾力的な運用についても一種のアムネスティになるわけでできません。したがって民間団体を含めた検討委員会の設置も同様に不可能です。よって不法滞在者に対しては現行の出入国管理法に基づいて救済措置を行っていきます。

申入書項目3に対する回答
 出入国管理局として明らかにできる内訳は以下の通りです。
 平成13年度に在留特別許可を認められた人数は5,306人です。
 また、平成13年度に、退去強制処分した人の数は35,408人です。そのうち異議の申し出をして裁決によって処分を受けた者は610件です。よって35,000人余りのうち、ほとんどがそのまま帰国するという形をとっています。平成12年の在留特別許可数は6,3900人でした。
 不法滞在をしている家族に関しては、統計を特にとっていないので人数は把握していません。

申入書項目4に対する回答
 在留特別許可は、当人が特別な事情を有していることから認められる特例であります。繰り返しになりますが裁決にあって基準は存在しません。しかし人道的見地から慎重に審査をして裁決を出しています。

 在留特別許可の基準についてのご提案ですが、年数を区切って一律に認めてしまうとアムネスティにつながってしまうのでで行きません。あくまでも事情にある者に対して特例的に行うものです。各国の事例を見てもアムネスティは失敗しています。

申入書項目5に対する回答
 法務省・入国管理局側としては、20歳未満で非正規滞在となっている子ども達の数は把握していません。しかしながら、児童の福祉を配慮し対応していくつもりです。

申入書項目6に対する回答
 在留特別許可申請から裁決までの期間にばらつきがあるのはやむをえません。審査は日本に生活基盤を形成しているかどうか、犯罪歴の有無など様々なことを調査し、事例によっては海外から資料の請求を行うために期間に差が生じるのです。

申入書項目7に対する回答
 基準はありません。2001年度に上陸特別許可を認められた人の数は836人であります。内訳については統計をとっていないので不明です。

申入書項目8に対する回答
 出入国管理法によれば、退去強制処分は身柄を収容した上で行うことになります。
仮放免については主任審査官に広範な裁量権が与えられています。仮放免は「その者の性格、資産等を考慮して」審査をしており、具体的な仮放免の基準はございません。行政訴訟を行っている者の仮放免を速やかに認めるべきではないかとの申し入れですが、入国管理局としては、訴訟提起のみで仮放免をしなければならないとは考えておりません。

V.質疑応答
回答1についての質問

 1999年12月に在留特別許可取得一斉行動を全国にアピールするために九州地方を中心として全国キャラバンを行いました。その際に仮放免許可を受けていた出頭者4人も同行することになり、一時旅行許可申請を行いました。すでに吸収までの航空券も購入していました。しかし一時旅行許可は認められませんでした。その理由をお願いします。

入国管理局の回答は、仮放免は住居が属する都道府県において認められるので、全国 キャラバンには都道府県を移動する合理的な理由がないとして認められなかったのではないかとのことであった。一時旅行許可は政治的な目的では認めないが宗教的なもんであれば認めていることが付け加えられました。

回答3についての質問
 非正規滞在の家族数を把握していないとのことだが、統計的内訳は存在しないのかという質問に対し、審査課長は、ないと回答しました。非正規滞在外国人の定住化と家族の形成の中で近い将来おそらく非正規滞在の家族の問題も生起することが多くなり、必ずや統計が必要になるのではないかと、さらに統計の必要性について述べたうえで、詳細な統計を今後とってほしい旨要請をしました。

回答4についての質問
 移民プロジェクトで議論された在留特別許可の基準について提案をしたものであるが、入国管理局は年数を区切って一律救済をするのであればアムネスティになるのでできないと強く拒絶しました。

回答5についての質問
 20歳未満で非正規滞在となっている子ども達の数は把握していないとの回答ですが、1999年12月に臼井法務大臣が、非正規滞在の子どもたちは約12,000人滞在していると参議院の予算委員会でという発言をしています。それについてはどう考えているのかと質問を行ったところ、入国管理局は当時の資料を調べてみて、前向きに検討してみるとの回答でありました。

回答6についての質問
 先日名古屋入国管理局に在留特別許可を求めて出頭した者で、数ヶ月と言う異例の速さで裁決が出されました。一方2年も待たされたり、これは例外とは思うが3年以上かかるケースもあります。退去記強制の手続きのために出頭してから裁決までの期間のばらつきがあまりにも大きく、当事者たちのあいだには不公平感を感じている人が少なくありません。東京や名古屋の入国管理局は審査の時間が長すぎるように思 う。また審査の過程についての説明にしてもばらつきがあり、例えば親切に教えてくれるところと荘でないところがあります。
以上の事項に関してどう考えているのか説明をしていただきたいとの質問に対して、入国管理許可からの回答は以下のとおりでした。

 事件の内容(難易度)とマンパワーによって、裁決までの期間にばらつきが生じると思われます。年によって、期間のばらつきが生じるのは、動員数の違いと職員の移動が原因です。在留特別許可に携わる職員の人数は慢性的に不足しており、平成12年から動員をかけ優先的に処理してきた。だから平成12年の案件は比較的早かったと思います。しかし昨年は様々な事件があり対応できなかったため、期間にばらつきが生じたと考えています。また、職員の移動が起こると、後任者は書類を最初から読
み直すために、複雑なケースを先送りにしてしまう。よって年によって裁決までの期間にばらつきが生じます。個人によって、裁決までの期間にばらつきが生じるのは、事件の質にもよります。海外(大使館)に資料を照会する場合もあり、現地から資料がこちらにとどくまで時間がかかります。こうしたことがあり、裁決までのあいだにばらつきが出るのはやむを得ないと思います。しかしながら、当人の事情・資産・性格・証拠を考慮し、人道的観点から裁決を行っているので理解してほしいとの回答がありました。

 さらに審査の期間があまりにも長いときに苦情はどこに伝えればよいのかという質問が出ましたが、入国管理局の総務課で受け付けるとのことでした。出頭した際に、とくに事情があって急いでいることを伝えれば職員も考慮しやすいのではないか、と付け加えました。

回答8についての質問
 仮放免に関する基準はないという法務省・入管側の回答であったが、ペルー国籍のマリオさん(NGO神戸外国人救援ネットなどが支援中。先日仮放免)の例を挙げ、行政訴訟を行った場合に、法務大臣の裁決について争われることから基本的には仮放免を認めるべきではないかと述べたあと、少なくとも長期間にわたる収容は回復困難な損害を収容者に与えることから慎重であるべきであり、仮放免の基準を明確にして原則狩放免を認めるべきであると要望をしました。入国管理局の回答は、仮放免につい
ても基準はないし行政訴訟と仮放免との間に関連性はない、とのことでした。さらに入国管理局に対して、仮放免にあたっては、主任審査官が申請人の事情・資産・性格・証拠などを考慮するというならば、その具体的内容を述べてほしいとの申入れを行いました。最後に、在留特別許可、仮放免について基準が曖昧で非常に不透明であること、いまや情報公開の時代であることを考慮して、基準や理由を開示してほしいという申入れもあわせて行いました。


申し入れ書

2002年6月27日

法務大臣
 森 山 真 弓 様
法務省
 入国管理局長
  中 尾  巧 様

ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY
                                         (A.P.F.S.)
                                 代  表   吉   成   勝   男


 現在、日本には200万人近くの外国人が様々な在留形態で生活をしています。日本の技術や文化を学ぶことを目的として来た留学生や、産業の最底辺で就労をする人たちなど、日本の社会にとってかけがえのない人たちばかりです。すでに日本が多文化・多民族社会へと向かっていることは明らかです。
 しかし日本の外国人政策は多文化・多民族共生とは反対に外国人を管理し、規制することのみに力が注がれているように思われます。それを象徴しているのが、この間のアフガニスタン難民問題であると言えます。また22万4千人(2002年1月1日現在)ともいわれる非正規滞在外国人の処遇についても、国際社会の流れを無視して、これらの人たちの人権をほとんど省みない措置がとられています。
 私たちは、日本が多文化・多民族社会を迎えるにあたって、法務省・入国管理局がその外国人政策を根本から検討しなおすことを求めるとともに、以下の事項について申し入をいたします。


1、 1999年9月1日に5家族、1個人・21人の非正規滞在外国人が日本に生活基盤が形成されたことを主たる理由として、法務大臣の在留特別許可を求めて東京入国管理 局に一斉出頭をしました。この家族に対しては翌年2月から法務大臣の裁決が順次出され、4家族・17人に在留特別許可が認められました。この家族の中には小学校6年生 に在学している子どもを持つ家庭も含まれていました。この一斉出頭行動は1999年12月、2000年7月の三次にわたって行われ、17家族、2個人74人がすでに出頭をしています。これまで16家族、1個人に法務大臣の裁決が出され、10家族・40人に在留特別許可が認められました。非正規滞在外国人の家族が生活基盤が形成されたことを理由として在留特別許可がこれほど多数認められたことは画期的なことといえます。

  一方、問題もあります。第一次出頭者では小学校6年生の子どもを持つ家族に在留特別許可が認められたにもかかわらず、第二次出頭者2家族については同様の家族構成でありながら在留特別許可は認められませんでした。この間、在留特別許可の基準について議論がなされてきました。貴局は一貫して基準など存在しないと言い続けています。 しかし第三次にわたる一斉出頭行動の中で基準らしきものが明確になりつつあります。 22万人以上もの非正規滞在外国人が存在し、その多くが在留特別許可について関心を寄せているなかで、貴局は審査過程の公開を含めて、在留特別許可についての基準を社会的に明確にする義務があると考えます。
  また1999年12月に全国キャラバンを実施した際に、仮放免中の当事者2名を同行させようと、 一時旅行許可申請をしたが認められなかった。理由を明確にしてください。

2、 近年、日本が少子・高齢化社会を迎える中で移民導入に関する議論が行われています。一方で、22万4千人もの非正規滞在外国人とその家族が日本経済を最底辺で支えています。移民導入の前に、これらの人たちの合法化による人権・人道問題の解決こそが優先的に行われなければならないと考えます。それは現行の在留特別許可の制度を弾力的に運用することによって十分可能です。この実施にあって、民間団体も含めた検討委員会を設立してください。

3、 第1項に関連して、2001年の在留特別許可の許可、不許可の総数、また非正規滞在家族数と合計人数などの内訳を明らかにしてください。

4、 アジア諸国から多くの人たちが就労を目的として来日するようになってから15年以上経過します。なかでも認められた期限を越えて滞在する非正規滞在外国人の問題は医療、生活、労働など様々な分野に及んでいます。そして、これら非正規滞在外国人の定住化が進行する中で子どもたちの問題も深刻になっています。小・中学校、高等学校や大学に進学している子どもたちもいます。子どもたちは日本で出生したり、幼いときに両親に連れてこられたものです。言うまでもなく子どもたちに何らの罪もありません。「子どもの最善の利益」のためにも、一定の基準を設けて両親とともに合法化をすすめることが重要な課題となっています。このまま事態を放置すれば、「不法就労2世」が間違いなく生みだされます。子どもたちの最善の利益を守る観点から、在留特別許可の制度を運用して以下の基準で合法化するように求めます。

@ 非正規滞在外国人を10年以上継続して滞在している非正規滞在者で、引き続き滞在を希望し、現に職業を有している者。
A 5年以上継続して滞在し、6歳以上の子か日本で出生した子を養育している実親と子。
B 病気療養や労働災害等により、長期間治療を要すると医療機関によって証明を受けた者、または人道的に特に必要と認められる者。

5、 20歳未満で非正規滞在となっている子どもたちの数を明らかにしてください。非正規滞在の子どもたちに対して、貴局は今後どのような対応をするのですか。具体的な政策があればお答えください。

6、 日本人配偶者を得た非正規滞在外国人が在留特別許可を求めて出頭した場合、裁決までの期間がわずか10ケ月の者,2年以上も待たされている者など大きなばらつきがある。特に審査の過程が不透明であるために当事者は常に不安を感じている。在留特別許可は「恩恵的な措置」とは言え、権利としての側面も有するようになっている。より透明性を高め、調査や審査の過程、裁決に対して詳細に説明する責任があるのではないですか。

  現状では出頭から裁決までどの程度の期間を要しているのか。また審査にあたってのポイントはどのような点か。偽装結婚が増加していると聞いているが、在留特別許可の期間などにも影響しているのですか。

7、 出入国管理及び難民認定法第5条では、「1年以上の懲役若しくは禁固又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者」は上陸することができないと明記されている。近年、出入国管理及び難民認定法違反のみで起訴をされ、懲役1年以上の判決を言い渡されるものも多くなっている。これらの人たちが、刑が確定し退去強制後に日本人と婚姻した場合、再び入国する際には在留資格認定証明書の申請をしているケースが多く見られる。しかし、上記の上陸拒否事由により、在留資格認定証明書の交付を受けられないことが多い。一方で特別上陸許可によって上陸を認められているケースも見られる。上陸拒否事由に該当するものの、日本人配偶者を得た外国人の上陸を認める場合の基準は何ですか。また2001年に、上記のケースで実際に上陸を認められたものはどのくらいいますか。

8、 出入国管理及び難民認定法第54条は仮放免に関する条項を定めている。それによれば、入国者収容所長又は主任審査官が、「収容されている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格、資産等を考慮して」仮放免をすることができるとされている。この場合、考慮の基準は何か。在留特別許可と同様に自由な裁量に任されているのか。明確にしてください。収容は、収容されているものに対して回復困難な損害を与え、人道的にも大きな問題があります。

  先日、西日本入国管理センターに2年間収容されていたペルー国籍の男性が仮放免を認められて収容をとかれた。この男性は、2000年6月30日に在留特別許可が認められなかったものの、法務大臣の裁決の取り消しを求めて係争中である。こうした人を長期間収容することは許されないと考えるがどうですか。仮放免を速やかに認めるべきであったのではないですか。

以上




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