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「出入国管理及び難民認定法が改定されました」




1.はじめに

 今回の出入国管理及び難民認定法(以下入管法という)改定は、1998年10月に法務省が改定のための作業をはじめたと発表し、同年12月に具体的な改定項目として「不法在留罪」の新設及び退去強制後の再上陸期間の伸長などがだされました。本年3月、改定法案が内閣で決定され、国会に上程されました。参議院での審議については、APFSのメンバーも院内集会に参加するなど、改定に反対する運動をしていたので覚えている方も多いと思います。結局、8月13日の衆議院本会議で可決され、改定入管法は2000年2月18日から施行されることになりました。

 今回の入管法改定の具体的な内容が英語や各国の母国語で取り上げられていないためにAPFSにも2月18日以降、未登録外国人に対する取締りが強化されるのではないか、またより重い罰則が課されるのではないかと心配する問い合わせが相次ぎました。1990年の入管法改悪のときも、「不法就労助長罪」」が新設されて未登録外国人を雇用している事業主に対する罰則規定が新たに導入されるということが、未登録外国人の中に誤って伝えられ、早期帰国を希望する未登録外国人が当時は大手町にあった入国管理局に殺到するということがありました。今回の改定について、未登録外国人にどのような影響があるのか、簡単に解説をします。



2.「不法在留罪」の新設について

 入国管理局は外国人を日本に受け入れる場合に、その外国人がどの様な目的で滞在するのかによって27種類の在留資格を設けています。例えば、大学や専門学校で学ぶ場合には「留学」、外国人固有の知識を生かして日本で就労するには「国際業務、人文知識」などと在留資格を与えているのです。そして在留資格を与えられるときに、その在留資格でどの位の期間日本に滞在できるかも決められます。現在、未登録となっている外国人の多くが、1990年6月以前であれば、「4−1−4」という在留資格で15日間か、90日間の在留を認められた人であり、それ以降は「短期滞在」の在留資格で90日間の在留を認められた人が多いと思います。そして、入国時に一定の在留資格を与えられ、在留期間を認められた人が、期限を超えて滞在した場合に、その人を「不法残留」と入国管理局では呼んでいます。「不法残留」については以前から罰則規定があり、「懲役3年以下または30万円以下」と定められています。したがって認められた期間を超えて日本で就労し、生活している外国人は自ら入国管理局に出頭をし、帰国の手続きをとった場合には、行政処分である退去強制をうけて帰国することになるのです。ただ超過滞在について非常に悪質であるとされた場合には、入国管理局から告発されて裁判を受け、後述のとおり手続が進められます。しかし、警察に入管法違反の容疑で逮捕され送検されると、現状では1年以上の超過滞在をしているとほぼ起訴されて裁判となります。判決は概ね懲役1年6ケ月、執行猶予3年というものです。判決が確定すると入国管理局の警備官が法廷で待ち受けていて、超過滞在外国人の身柄を引き取り収容場に収容します。そして違反調査などを行い、本人が異議を申し出なければ、そのまま退去強制となります。

 今回の「不法在留罪」の新設は、正規の手続を経て日本に入国をした外国人ではなく、不正規の方法で入国した外国人に対して新たに罰則を設けたものです。不正規の方法による入国とは、例えば韓国から漁船などで入国管理局から入国許可を受けずに入国をしてしまった外国人、他人名義や偽造旅券を使用して入国してきたことを言います。従来、こうした外国人が日本に滞在している場合、入国したときから3年が経過すると時効が成立し刑事罰を課することができなくなってしまいます。もちろん、超過滞在と同様に行政処分としての退去強制の対象とはなります。そこで法務省は、不正規の方法で入国した人たちに対する罰則を課すことがいつでもできるように「不法在留罪」を新設したのです。その結果、不正規の方法で入国した外国人は日本に滞在するかぎり「不法在留罪」で「懲役3年以下または罰金30万円以下」の刑罰を課すことができるようになったのです。

 以上のとおり、「不法在留罪」の新設によって、「正規」に入国してきて期限を超えて滞在している外国人は処罰されることはありませんが、現行の入管法には期限を超えて滞在する外国人に対する罰則規定が設けられており、従来と変わらないということになります。不正規な方法で入国してきた外国人はとくに注意してください。また超過滞在をしている外国人も従来から処罰の規定があり、今回の入管法の改定により新たに処罰規定ができたのではないということを理解してください。



3.「退去強制後の再上陸拒否期間の伸長」

 これまで日本で「不法残留」していた外国人が何らかの理由によって帰国した場合、「退去した日から1年を経過していないもの」は上陸を拒否されます。これは入管法の第5条に定められています。簡単に言うと、現行の法律では超過滞在となって退去強制された外国人が日本に再び入国するには日本から出国してから1年間が経過しないと入国が認められないというものです。例えば、未登録外国人で日本人配偶者または合法的に日本に滞在する外国人と婚姻したものが祖国に帰国しなければならない事情があって入国管理局に出頭しいったん出国すると1年間は入国できないということです。今回の入管法の改定による退去強制後の再上陸拒否期間の伸長は、今までは1年で上陸が認められていたものを5年間に伸長するというものです。入国管理局によれば、退去強制後に再び入国するものが増加していることから、これを防ぐ意味で再上陸期間を伸長したのだといっています。しかし家族の結合や病気治療のために日本に再び来なければならないものに、こうした法律を適用することは、あまりにも過酷すぎるものです。

 また現行の入管法でも「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、1年以上の懲役若しくは禁固又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者」については上陸拒否事由に当たり「永久」(入国管理局の永住・難民審査部門の担当者)に上陸を拒否されることになります。実際に、入管法違反のみで裁判を受け、懲役1年6ケ月、執行猶予3年の判決を受けた外国人が日本人と婚姻をしたものの執行猶予の期間が経過しても入国を拒否されつづけているケースもあります。執行猶予中に処罰されなければ刑の言渡し自体がなかったものになるとされていますが、現行の入管法は超過滞在を反省しさらに刑罰の言渡し自体がなかったものとされているにもかかわらず、永久に上陸を拒否されるのです。最近、市民団体の活動によって上陸拒否事由にあたるものでも法務大臣の特別入国許可を受けて入国をしている外国人も出てきています。



4.おわりに

 今回の入国管理法の改定は、法務省−入国管理局が外国人の管理を一層強め、日本社会全体を管理主義的な社会にしていこうとする第一歩であると考えざるをえません。この法律の改定作業と同時に「盗聴法」や「組織犯罪対策法」などを審議していることからも明らかです。しかし未登録外国人に関係する法改定は上記のとおりであり、とくに超過滞在の未登録外国人の場合には従来と変わらないといってよいと思います。法律が改定されるときには、とくに外国人に対する情報量が圧倒的に少ないために大きな混乱を招くことがあります。今回の法改定について大雑把に言えば上記のとおりとなります。今回の法改定によって来年の2月18日以降に大量の未登録外国人が摘発され重罰をうけるのではないかと心配をしている人たちも多くいますが、真実は以上のとおりです。また今回の法改定にあたっては付帯決議がだされており、「家族の結合」については十分に配慮することとしています。

 いずれにしろ、様々な噂話や中途半端な情報で帰国をするのか否かを判断をするのではなく、APFSや各地域の市民団体に連絡し、正しい情報に基づいて的確な判断をしてください。APFSでも2000年2月18日にの改定入管法の施行の前に会員向けに分かりやすい学習会を弁護士等を招いて実施する予定です。

 なお、今回の改定にあたっては、「不法在留罪」や再上陸期間の伸長のほかに在留資格を有する外国人が在留期間内に出国する場合に「再入国許可」を得れば、新たにビザを取得することなしに入国ができることになっていますが、今まではその期間が1年でしたが今回の法改定によって同じ在留資格のままで3年間の再入国許可を得られることなりました。その他にも指紋押捺制度の撤廃など外国人登録法でも改定がありました。詳細はAPFSの事務所までご連絡ください。


以上



1999年9月23日               
ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY 
(APFS)    


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