2000年4月13日

東京都知事 石原慎太郎殿

                       東京都板橋区大山東町24−16

                   TEL03-3964-8739/FAX03-3579-0197

                      ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY

                            (APFS)

                        代 表  吉  成  勝  男

                    在留特別許可取得一斉行動当事者

                        代 表  アデル・ゲイビ

抗議文 

 去る4月9日に、貴殿は陸上自衛隊第一師団の記念式典の場において、「東京では不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな騒擾事件も想定される。警察の力には限りがある。皆さんには、災害だけではなく、治安の維持も目的に遂行してほしい」旨の発言をしたと伝えられています。実際に貴殿は、この発言を認めた上で、4月12日の記者会見の場で、三国人という言葉が不適切であれば使わない、発言の意図は不法入国、不法滞在をした外国人を対象としたものであると述べています。4月9日の発言自体も時代に逆行するものであり、この間、地方自治体が定住化しつつある外国人を外国籍住民として位置づけ、法的、制度面などで整備のために努力していることに水をさすものであると言えます。三国人、自衛隊の治安出動などは時代錯誤もはなはだしい発言であり、私たちは再び貴殿ら一部の人たちが戦争への道を進めようとしているのかと不安を感じています。

 また貴殿は、多くの凶悪犯罪が「不法滞在外国人」によって引き起こされているかのように述べていますが、警察庁が発刊したいわゆる「警察白書」でも明らかなように、「不法滞在外国人」の凶悪犯罪が、日本人の犯罪と比較して際立っているものとは到底思えません。かつて、地域ぐるみで「不法滞在外国人」を締め出そうとの動きもありましたが、多くの「不法滞在外国人」が定住し、地域にとけ込んで生活をするようになるなかで、こうした動きはほとんどなくなっています。すでに市民レベルでは、「不法滞在外国人」=凶悪犯罪者という単純な図式は克服されており、前述のとおり地域社会を構成する外国籍住民として生活を共にしているのです。

 さらに近年、日本に確固とした生活基盤を形成する「不法滞在外国人」も増加しつつあり、小学校や中学校、高等学校で学んでいる子どもたちも少なくありません。私たちAPFSは1987年12月の設立以来、在日外国人の自立支援活動を行ってきました。昨年9月1日、日本に生活基盤を形成したことを理由として「不法滞在外国人」5家族・21名(うち子ども8名)が法務大臣の在留特別許可を求めて東京入国管理局に出頭をしました。法務省−入国管理局の厳しい審査を経たのちに、本年2月14日までに4家族・16名の「不法滞在外国人」に法務大臣の裁決が出され合法的な滞在が認められました。貴殿は、このような事実をご存じなのでしょうか。現在日本には26万8千人もの「不法滞在外国人」が就労し、生活をしています。法務大臣が前述のような裁決を出した背景には、法務省−入国管理局が、これらの人々の処遇をどの様にしていくのかを考えはじめたといってよいでしょう。また財界からも、将来の少子高齢化社会のなかで、移民の受入れは当然のことだとの意見も出されています。貴殿が凶悪犯罪者としている「不法滞在外国人」は、1980年代半ばには日本の経済成長に寄与し、現在もいわゆる3K職場において日本経済の最底辺を担っています。貴殿は、承知しているのでしょうか。小・零細企業の多くで、これらの人々の力を必要としていることを。

 言うまでもなく、地方自治体の長たる知事には住民を災害時には貧富、人種、国籍、宗教を問わず保護する責任があります。当然「不法滞在」か正規の滞在かは問題になりません。地方自治体の首長は日本人と等しく、在留資格などには関係なく外国籍住民もあらゆる災害から守る義務があるのです。「不法滞在外国人」を犯罪者として考え、治安出動まで口にするとは、首都・東京の知事が軽々しく言う言葉でありません。私たちは、治安出動からかつての関東大震災時の朝鮮人虐殺を思い浮かべます。

 私たちAPFSは、貴殿が述べている「不法滞在外国人」が数多くボランティアとして参加しています。国籍は11ケ国にも及びます。これらのボランティアは、本来貴殿ら自治体が果たさなければならない在日外国人に対する保護、支援活動も行っています。貴殿が考えているような「不法滞在外国人」などどこにも存在しないのです。こうしたことを考えると、私たちは貴殿の4月9日の発言に対して強い憤りを覚えます。さらに、12日の記者会見では「不法滞在外国人」が凶悪な犯罪者であることを強調しましたが、これについても憤りを通り越して深い悲しみさえ覚えます。私たちは多文化・共生時代に向けて日本が国際社会から大きな期待をもたれていること、そして大きな課題が課されているなかで、貴殿がこれを真っ向から否定する発言に対して強く抗議をします。同時に私たちは貴殿がすみやかに一連の発言を撤回し、真摯な態度で謝罪することを強く求めます。

 なお、貴殿が度々述べている「不法滞在外国人」なる言葉は、すでに社会的には通用しなくなっています。国連の文書でさえ未登録外国人と呼称しており、私たちAPFSでも非正規滞在外国人としています。念のために申し添えます。


   

ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY (APFS)