シンポジウム「多文化社会とまちづくり」開催


多文化共生のまちへのしくみづくりを!

瀬戸一郎明星大学教授

 APFSの年初めのシンポジウムに出席して強く印象づけられたのは、外国人居住者の存在が当たり前になった地域社会の現実についての認識が、自治体、地域商店街、日本人住民、そしてAPFSのようなNGOの間でいまだ十分には共有されていないことであった。

 この間に外国人居住者は、在留や生活の形態が多様化するとともに、日本での生活の安定、定着化に対応して、支援される側にとどまらず、支援する主体としても地域に登場してきている。そうした人々も含めて、地域社会の多文化化の実態と問題点に
ついて、定期的に情報や意見を交換するフォーラムのような「開かれた場」を、基礎自治体レベルで保障していくことが、当面きわめて重要だと思う。それはまた、地域 の多文化化をソフトランディングさせていくリソースセンターに発展していく可能性もある。

  APFSがこうしたプロセスで果たしうる役割には大きなものがあるだろう。



最近の相談から 〜
- 非正規滞在外国人の実状は日本社会の鏡 -


 2002年に入ってからも、APFSに寄せられる相談は相変わらず減少することはない。とくに解雇や賃金未払い、労働災害など労働に関する相談が多い。突然解雇されたうえ、超過勤務手当ての割増分が未払いで、源泉徴収票の作成も拒否されたという、3点セットも珍しくない。不況の影響なのか、以前は一-部でも支払いに同意するケースも多くあったのだが、最近では普通の交渉だけでは解決しないものも少なくない。

 相談者の国籍はバングラデシュが最も多い。平均して1ケ月に30から40件程の相談が寄せられるが、70パーセントがバングラデシュ国籍である。その他にはビルマ、イラン、パキスタン、フィリピンの順である。バングラデシュ人の相談内容は労働関係から結婚、教育、在留関係など多岐にわたっている。やはりバングラデシュ国籍のスタッフが充実していることもあり、安心できるのであろう。
 地域的には群馬県、栃木県などの関東近県が多い。労災に関する相談のうち80パーセント近くが、この地区に集中している。業種もプレスを中心とした製造業である。安全装置のない足踏み式のスイッチの機械を操作中に事故に遭うケースが目立っている。会社が安全にまったく配慮していないことがわかる。事故後も適切な措置をせずに放置しておくことも少なくない。もちろん労災保険に加入していない事業所や、加入していても労災保険の申請に協力しない事業所もある。

 交通事故も増えている。多くが被害者になっている。本人がわからないままに過失割合が高いと勝手に決められて適切な補償を受けられない場合もある。事業主も面倒なことにはかかわりたくないのか、見舞いにも訪れない。冷たいものである。元気なときは、朝早くから夜遅くまで働かせておいて、働けなくなるとぼろ雑巾のように捨ててしまう。最近は仕事が少なくなっているので、代わりはいくらでもいると、事業主も強気である。

 入国管理局の収容施設から手紙が届くことも多い。アフガン難民やロシア系の人からのものもある。手紙の内容は深刻である。たいしたことができないのが歯がゆい。それでも労働関係の相談であれば、何とか解決の可能性もある。しかし茨城県牛久市の収容センターはあまりにも遠すぎる。人手も財政も乏しい市民団体の悲しみをあらためて思い知らされる。

 こんな風に毎日毎日相談を受けながら、世の中どこか間違えているのではないかと考えてしまう。非正規滞在外国人の実状は、日本社会の鏡でもある。みんなの人権が守られているようで、実は誰の人権も守られていない。先日、東京地裁は外国人の人権は在留制度の範囲で守られればよい、と断言した。まさに名言である。外国人の人権、日本人の人権などと区別をせずにすべての人の人権が尊重される日はいつ来るのだろうか。そうだ。待っていてはだめ。いまは行動のときだから。日本人も外国人も行動しよう。

吉成 勝男

 


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