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これでいいのか!? 北朝鮮報道 「北朝鮮報道のあり方」を考える記者会見

情報鎖国、メディアの怠慢、冷戦構造の影響が
北朝鮮の実像見えなくした
                    石丸次郎(ジャーナリスト/アジアプレス)

 拉致事件に関連する北朝鮮報道で、今までにない膨大な量の情報が、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌に流れてきました。しかし、おかしいのは、量は膨大なのですが、それを見れば見るほどどうしても北朝鮮の実像にピントが合わなくなる。現場取材をする者の一人として、報道により北朝鮮の実像が見えなくなるという本末転倒な現象が起こっている、と強く感じています。
 その理由は簡単に挙げると三つあったと思います。一つめは、北朝鮮が、言うまでもなく世界最強の情報鎖国であったということ。現在もそうですが、現地に入れず取材が非常に難しい。二つめは、メディアの怠慢だと思います。確かに北朝鮮に接近することは難しいですけれども、努力をすれば方法はあった。そして、検証を怠った報道が今まで非常に多かった。三つめは、冷戦構造の狭間で、事実を事実として伝えにくい、あるいは、まっとうな研究、まっとうな取材を歪曲するような政治の力があった。それらが、北朝鮮の実像を見えなくしてしまった要因ではないかと思います。
 今日、ここにお集まりいただいた方々は、何を言おうかと打ち合わせしたわけではありません。おかしい、と思ったことを一言ずつ言っていただきます。そして、最後に、一緒に北朝鮮報道をしっかりやっていくには何が必要かという我々なりの提言を申し上げたいと思います。
[以下は、最後の発言]

 今日の記者会見と討論会を準備し始めてから、本当に間がありませんでした。10日ほどで慌ただしく色々な方に呼びかけをし、提言を考えまとめました。メディアの皆さんには、我々の有志のメディアへの提言を持ち帰って読んでいただきたいと思います。前に座っている我々もメディアを通じて発言、表現をしている者です。しっかり勉強して、しっかり伝えていきましょう。
 メディアへの提言を読み上げます。

 日朝首脳会談が開かれ、拉致被害者五人が帰国した今、朝鮮半島への関心はかつてないほど高まっています。これは日本と朝鮮半島の過去、現在、未来を考える絶好の機会です。メディアはもっと多様な見方、複眼的な見方を提示すべきです。また、日本と朝鮮半島の関係への歴史的な視点を踏まえた報道や解説を流すことも必要だと考えます。
 北朝鮮報道における論調はもちろん自由でなければなりません。北朝鮮に対してもその他のどんな対象に対しても報道は基本的に自由でなければなりません。しかし、メディアは報道が日本社会に住むおよそ100万人の在日韓・朝鮮人(※石丸さんの説明=日本籍も含めて)に対する民族差別や排外意識を助長しないように十分配慮すべきです。また、在日韓・朝鮮人への嫌がらせや暴力被害の実態を報道し、防止を訴えるべきだと考えます。
 北朝鮮は入国が困難で、自由な取材が許されない情報鎖国の体制下にあります。様々な事実の確認は容易ではありません。メディアは、読者や視聴者に対し、報道する内容が確認された事実なのか、当局の発表なのか、報道する側の推測なのかを明示すべきです。コメントを発する識者や関係者に対しても発言の根拠を確認すべきだと考えます。(※石丸さんの説明=テレビが非常に映像資料を多用しますけれども)映像資料は出所と撮影時期を明示すべきです。現地取材をはじめ、北朝鮮当局に許可を求める報道はその政治宣伝に利用される恐れがあります。北朝鮮のコントロール下で取材が行われる場合はメディアは報道が実現するまでの経緯、映像や質問に関する制限の有無など、読者や視聴者に明らかにすべきです。
 最近の報道には帰国した拉致被害者の5人の日々の動向を興味本位に報じてよしとするものが目立ちます。また、拉致被害者やその家族の問題だけをクローズアップするあまり内容が画一的になっていたり、いたずらに感情的な側面ばかりを強調する表現が目立ちます。メディアは、被害者やその家族の人権やプライバシーに十分配慮しなければなりません。真摯な姿勢で拉致問題の望ましい解決を目指す報道をするべきだと考えます。また、感情に流されない、冷静で正確な報道を心がけるべきです。
 最近の報道には記者や制作者、出演者の朝鮮半島問題への知識や理解の浅さを感じさせるものがあります。メディアは、朝鮮半島問題への理解をいっそう深める必要があります。特にテレビは朝鮮語のできる専門職を配置するべきです(※石丸さんの説明=私が今、テレビ局を横断するかたちで仕事をさせていただいていますけれど、民放の朝鮮半島の調査、研究のレベルの低さは驚くほどです。朝鮮語ができる専門記者をおいている民放はおそらくゼロではないかと思います。これで、解説をしたり、したり顔であれこれいうことに、記事がそうやって作成されていくことに、愕然たる思いです。テレビはぜひ、朝鮮語のできる専門職を置くべきだということを強く訴えたいと思います)。
 日本における北朝鮮報道と国際社会における北朝鮮報道は、かなり様相が異なっています。両者が異なることは当然ですが、北朝鮮も日本もアジアのなか、そして国際社会のなかで生きる存在であり、その将来は国際社会の論調や世論に大きく影響されます。メディアは北朝鮮問題に対する国際社会の見方もそして国内の見方と同様にバランスよく報道すべきだと考えています。

 以上、今日の「北朝鮮報道のあり方」を考える記者会見、討論会の呼びかけ人の名前でこの提言を、ここにおいでいただいたメディアの皆さん、今日は来られなかった各社にもお送りをして、ぜひ一緒にちゃんとした朝鮮半島報道を一緒にこれからやっていこうということを提言したいと思います。

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