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ACT・3月読者会[アフガニスタン取材報告]

質疑応答

●現地での体験を振り返ってみて

 昨年秋の段階ではジャーナリストは北部のホジャバハウディンからしか入るルートは無かったんでしょうか?
 陸路で入るとすればそうですね。飛行機なら直接ハイザバードなどに入ることもできました。

 どのような形でアフガンに入って、また出てきたんですか。
 私は、ウズベキスタン、タジキスタンを経てアフガニスタンに入り、同じルートで帰ってきました。入るのは一週間かかりました。アフガンはイスラム国ですから、金曜はお休みで国境を閉めてるんですね。一方、ロシア側は日曜閉めてる。だから、一週間のうち行き来できるのは5日間。下 手に週末に行ったら土曜しか開いてない。しかも、私がロシア側に帰るときは、その土曜も閉めてたからね。なんで行かせなかったかというと、私たちと一緒にアメリカの女性記者がいて、ロシアはそのジャーナリストに自国の戦車を見せたくなかったんじゃないか、ということでしたね。だから、タイミングが合わなかったら何日も国境付近で待たなくてはいけないんです。

 新島さん自身は今回の取材で怖い思いはしなかったんですか? 地雷とか。
 確かに、毎日怖かったよ、そりゃ。地雷のありそうなところは、地元の人に聞いて、用心したことは事実。でも、地雷による被害というのはもちろん毎日報告されているけど、ここ最近その数がグッと減ってきてる。これは地雷の数が減ったわけじゃなくて、どこにあるのか住民たちが分かってきたということなんです。

 アフガニスタンに行ってみての率直な感想をお聞かせください。
 さっき言ったように隣接するウズベキスタン、タジキスタンは独裁国家です。息の詰まるような独裁国家です。でも、アフガニスタンからタジキスタンに出たとき、正直ホッとしました。本当にホッとした。
 弱者、すなわち女性や子どもやお年寄り、貧しい人たちにとって一番怖いのは無政府状態です。独裁国家より無政府状態の方が怖いんです。これは、『アフガニスタンの仏像は破戒されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』という本を書いた映画監督のモフセン・マフハルバフさんも言っています。社会心理学者の言葉を引きながら「国民がまず政府に第一に求めるのは秩序だ」と。今回、私も、これを実感できました。
 というのも、外国人も弱者だからです。私は、世界で最も貧しい国・アフガニスタンに入ったジャーナリスト中もっとも貧しいジャーナリストです。私の頼りはドルとパスポートだけ。そのドルもどんどん減っていました。ですから、最後は、カメラを売って帰るしかないかな、というところまできてたんですね。しかも、その出るタイミングというのも難しい。すぐには出られない。出るのも入るときと同様、一週間くらいかかった。とにかく金やパスポートがなくなったら、外国人なんてアフガニスタンのなかでは何の値打ちのない人間なんです。弱者なんです。
 出発前、中村哲先生の講演など聞いていたのですが、中村先生は「タリバンの方がずっとイイ」というじゃないですか。それに対して、正直、違和感を持ってたんですよ。あんな人権抑圧政権を擁護するなんて、と。北部同盟も五十歩百歩だっていうのなら分かるけど、タリバンの方がイイというのは、どうしてもちょっと納得できなかった。それが実際アフガン行ってみて、はじめてタリバンの方がイイということが実感できた。アフガンの貧しい人々、弱い人々は間違いなくそう思うだろうと感じました。

●援助の実状とは?

  北朝鮮の時もそうだったんですが、米や小麦をたくさん送っても、末端の人に渡らないと聞きますが、それはなぜでしょうか?
 A それはNGOのひどさもあるでしょう。これは日・パ旅行社というところが出しているレポートにあったんですが、向こうにはNGO貴族というのがいるんですね。現地のNGOスタッフに採用されると、やってきた物資を全部とはいわないまでも一部横流しして、それで得たお金でプールつきの豪邸を建てているというんです。
 ほかにも、物資が軍閥に行ってしまうとかありますね。
 また、こういう話があります。物資の集積所にたくさん小麦が積まれている。だけど、それを奥地に送るためには車やロバ、馬、人手が必要となる。でもそれがない。だから、そのまま野積みにされて腐っている、というんですね。
 中村さんたちなどは、ペシャワールからカブールまでの道を舗装するだけでこの状況はぐっと良くなるといっていますね。というのは、いま国境からカブールまで車で8時間くらいかかる。ガタガタ道だからスピードが出せないっていうわけです。舗装すれば3時間で行けるんです。速く走れば、途中で盗賊に止められたりといった危険が少なくなるんです。
 もう一つ、間接経費がかかりすぎるということですね。国連機関などは8割9割が間接経費だといいます。つまり全体の1割か2割が援助物資になっている。一方、ペシャワール会にはテロ以降、注目が集まって、いま、寄付金が6億集まったということですが、その前は年間1億ぐらいの規模だったそうです。ペシャワール会はその95%を援助として渡している。だから、全体の予算規模としては名だたる国際援助機関とケタが違うにもかかわらず、ペシャワール会は、結果としてはそれらの機関と肩を並べるくらいのことをやってるというわけですね。

●ケシ栽培

  麻薬の問題について伺いたいのですが、タリバン政権時代はどのように法律で定めていたんでしょうか。
 A タリバン政権では最初ケシの栽培を禁止してはいませんでした。しかし、国際社会の非難を受けて、禁止したんです。ところが、禁止したにも関わらず、国連の制裁はより強化された。それじゃやってらんない、ということもあり、大仏を破壊したわけです。
 しかし、一応、ケシ畑は焼き払われて、それから栽培自体はずっと禁止していました。それ以前、ケシの栽培では世界一の生産量を誇っていたのが、グッと減ったのは事実です。それがいま、政権がひっくり返って、再び栽培が始まっています。現在世界一のミャンマーから首位を奪還するんじゃないかといわれていますね。4月か5月くらいには収穫されるはずです。

  それについての国際的な非難は、以前のように起きていないんですか。
  現在の暫定政権にアプローチはしているんだろうと思います。しかし、それを何とかできるような力のある政権ではないから実際に取り締まるのは難しいでしょう。

●女性解放は本当に実現されたか?

  現在、タリバン政権が崩壊し、女性解放をはじめ、平和や自由が戻ってきたといった報道がされていますが、実際は違うということなんでしょうか。
  もちろん私は、タリバンの女性政策がイイとは思っていません。ですが、北部同盟の支配地域であろうがなかろうが、アフガニスタンの農村地域でブルカをかぶっていない女性なんていないですよ。ちなみに、ブルカというのはイスラム国の中でもアフガニスタンだけです。
 タリバン政権以前、そのブルカを脱いでいたのは、カブールなどの大都市の女性、しかもある程度教育程度の高い人たちだけです。これに対して、タリバンは、世の中の乱れはアフガニスタンの伝統を忘れイスラムの教えを無視した結果だとして、ブルカをかぶれ、仕事をするなといった抑圧的な政策をとったんですね。いうなれば、いまの日本がこういうふうに乱れているのは、戦後民主主義教育が悪いからだということで、修身や教育勅語を復活させてそれを厳格に守らせるというようなもんです。それは確かに復古主義といえるでしょう。
 しかし、アフガニスタンにおいては、結果的に女性が強姦されたり略奪されたりされたりといったことから守ったということは側面があるんです。
 それで、いま現在カブールでみんなブルカを脱いで歩いているかというとそんなことはない。やはり、怖いからブルカを脱いでは外を歩けないんですね。主義主張のためにそんな目立つようなことを敢えてする人はいません。

  タリバンのせいで働けなくなったため、売春をするような女性が増えたとか物乞いをする人たちが出るようになったといった話がありますが…。
  1992年、北部同盟がカブールで乱暴・狼藉・略奪をしたころだって、まともに働けるような状況ではなかった。だから売春婦もいれば、物乞いもいたと思います。タリバン政権になったため、そういう人が増えたとはいえない。百鬼夜行下で働けない状況がなくなり、秩序は回復したけど、今度は掟で働けなくなったということでしょうね。

  よく、教育を受けて医者や教師になった女性が職を奪われたといったような言い方がされますが…。
  確かに掟で縛ることで、女性の人権が蹂躙されていたことは事実です。現在、それがなくなったという意味では前進といえるでしょう。しかし、さっき言ったように無秩序状態に戻ってしまったために、ブルカが脱げない、ちゃんとした働き口がないというのが現状です。その意味では明らかに後退ですね。しかしカブールでは働く女性は増えていることは事実です。その点では前進です。
 だから、現在のアフガニスタンをどう理解するべきか、といわれれば、1992年以前に戻ったというのが正しい理解です。しかしそこに戻ったけれども、それから先はまた同じことになるのかどうかというのは分からない。だから私たちは元の木阿弥にならないために民衆が自立するための支援策を考えることが必要。国際社会の援助も、お金を投入するだけではなく、より有効になされなければならない。中村哲さんはそういう風に言っていますね。

●日本の平和運動にいま必要なもの

  ジャーナリストではなくアクティビストとしての新島さんに聞きたいですが、いま、この空爆反対に関し、日本の平和運動は停滞しているように感じます。これに対して何か提案をいただければ。
  今回の戦争に関して、ブッシュはあえて単純化して正義を叫んでいるけど、やはりアメリカの戦争というのはいろいろな利権が絡み合ってて、それは今回のこの戦争に限らず、世界各地で同様な意味合いの戦争やってるんですね。『ACT』はこの点についてきちんと追求していくべきだと思うよね。『週刊金曜日』に負けないように(笑)。
 そういう視座でこの戦争を見ていかないと、私たちアクティビストも、対テロ戦争というすっきりした形での理解で終わってしまいます。そうなると、ビン・ラディンがつかまったらそれで終わりだと思ってしまう。
 そういう報道をするために私も『ACT』に協力させていただくつもりです。

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