「西陣の四季を味わう 2003」に込めたもの
2003年3月に始まり、6回にわたって続けてきた企画「西陣の四季を味わう 2003」はひと区切りを迎える。西陣で実績を積み重ねてこられた方々お迎えして講演会を4回行い、工房見学ツアーを1回行った。12月13日はその総括を行う。

2003年の西陣分校のスタートは1月25日に居酒屋人参で開催した新年会だった。2002年に西陣会議に参加し続けてくれた10名が顔を揃えてくれた。それから1年間彼らに勇気づけられ、支えられて走り続けることができた。そして、西陣分校を通じて、参加者とも、講師のみなさんとも素敵な出会いがたくさんできた。

私がこの場を通して伝えようとしたことは、「文化は暮らして受け継ぐもの」という考え方が原点となっている。西陣の人々がそこに住み、仕事をしながら、生活しながら、いつもあたりまえにやってきたこと、それを続けてきたからこそ培ってきた「精神性」が確かにある。当たり前すぎて気付いていないことも含めて「文化」呼べるものすべてを含めてこの肌で感じ、味わいたい。それを今の形でなら、受け継いでいける可能性があると思った。

「四季を味わう」というテーマを選んだのは、四季の移ろいに根ざした生活と西陣織に見る職人の美意識、そしてリアルな感覚を伴う手仕事の「ものづくり」とは切っても切り離せないものだろうと思ったからだ。暑い日も寒い日もひるまず、織りを一越一越重ねていくように、ひたむきにこれまでやってきたことを続けていく。私たち自身の活動も、そうやって続けることで思いは深まり、精神は培われるのだと思う。 きっと、「精神性」といっても、きっと特別なものではない。そこでそうやっていることで、自然に生まれるもの。

産業を活性化するなんて大それたことはなかなか一筋縄にはいかない。町並は日々壊されていく。でもそんななかで、私たちにも受け継いでいけるものはきっとある、そう信じてる。
受け継ぐべきもの、西陣の文化が何かと考えているときに、こんな言葉が飛び込んできた。

文化とは、形を変えて心を伝えるもの
先日受講した講演会で、狂言師であり、総合芸術家の野村万之丞氏がこう言った。
これは、私が心にヒットした。今までぼんやりと感じていたことを端的に表現してくれたように思えた。

町家やそれがつくりだす町並は、それがすべてなのではなく、文化を思い出すためのツールに過ぎないのではないか。たとえ必ずしも着物を着なくても、今の私たちが受け継いでいくべきものはあるはず。そんなことを自問自答しながら、西陣分校は、それを自分でも探る場であり、参加者にも見つけて欲しいという思いで毎回の講演会を積み重ねてきた。ものづくり職人の言葉、表情、息づかい、そして作品...それらのひとつひとつを拾いながら、ここにこそある文化を共有する場にしたいと思った。
ひとつひとつの講演は別々の内容だが、きっとどこかでつながる。今はまだつながっていないかもしれないが、きっとひとつのことになるような感触がある。今年は、それに一歩近づいた。

この1年間で、のべ120名もの方々が西陣分校に参加して下さった。今年も1年間の活動で、大きく人脈も広がり、勉強もさせていただいた。お世話になった講師のみなさん、いつも協力してくれた宇多野ユースホステル、京都市北青少年活動センターのみなさん、そしていつも来てくれたみんな、ほんとうにありがとう。

来年も、さらに濃密に、もっと深く西陣に知ってもらえる企画を進める。職人さんたちと向き合い、参加者と対話し、思いを深めることで、参加者にもその精神性が培われることを願って。
2003.12.13.