示された民衆意思 一坪反戦通信 No.78-4

一坪反戦通信 No.78


示された民衆意思

「県民投票」の結果について

               一坪反戦地主会 島田正博


 在沖米軍基地の整理縮小と地位協定の見直しをかけた九月八日の「県民投票」は、八九%が基地の整理縮小に賛成という圧倒的な勝利で終わった。戦後51年目にして初めて問われた民意は、基地に対して明確にノーと答えた。48万人余の人々が大田知事が押し進める基地問題への支持表明を行ったのである。60%の投票率もそれほど低いというものでもなく、自民党が棄権を決めたり沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)が実質棄権を表明した割りには、評価して良い数値だろう。日本政府と米国政府に突きつけられた民衆の意志は、これで完結するものではなく、むしろ今回は単なる序章にすぎない。こらからが闘いの本番である。

 「県民投票」の結果に一番ほっとしたのは大田知事であろう。何しろ全有権者の過半数が基地に対しノーと突き放したのだから。この結果を受け、大田知事は公告縦覧の拒否を貫いてもらいたいのだが、実際にはそうは行かなくなりそうである。

 大田知事は結果が明らかになったのを受け、コメントを発表。その中で「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小を図るという、県民の意思を尊重し、基地問題の解決に向けて、引き続き努力していきたい」と言っている。しかし、公告・縦覧についての質問には明確な答えをしていない。本来ならぱこれだけ民衆の意思が明確に出されたのだから、知事はもっと態度をはっきりさせても良いはずだが、そうはならなかった。先に最高裁判決を報告に来た県弁護団の中野団長は現在継争中の公告縦覧訴訟について「百パーセント勝ち目はない」との報告を大田知事に行った。大田知事も面食らっただろうが、団長自ら敗北宣言を行ったのであるから、ことは穏やかではない。

 昨年来の米軍基地を巡る一連の動きは、民衆の思いに答えるかのように決定を下してきた大田知事ともう一方で民衆のエネルギーを利用しながら日米政府に迫り適当なところで幕を引こうとする動きが常に交錯をしながら動いてきたように見える。大田知事は最初こそ危なつかしかったが、昨年の9月28日の県議会での代理署名拒否以来、わりと落着いで民衆サイドで事を運んできた。この間も節目節目で政府と妥協を図ろうとする動きは見え隠れしてきた。しかし、全国を含む多くの民衆の力がその動きを封じてきたと言える。だが今回は違う、一連の行動計画の総決算という形で「県民投票」は位置づけられていたに違いない。だからここいらで幕を引こうという計画なのだろう。政府に十分「沖縄県民」の意思も知らしめた。後はその「意思」を後ろ盾に対政府交渉をすればいい。と考えている部分があるに違いない。それが先の弁護団長発言ともなっていると見るのが妥当だ。だが今回の「県民投票」はそのような姑息な政治主義を吹き飛ばすものとして位置づけられる。それは条例制定を求めた連合沖縄の思惑をも越えた民衆意思の発露として動き出している。

 「県民投票」はその設問の不十分さや投票率の低さなど、さまざまに取り沙汰されること以上に初めて米軍基地に対し、自分たちの意思を表明するというところにその意義があった。

 自分達のことは自分達で決めるという当たり前の姿にたどり着いたのである。これまで余りにも強大でどうにもならないと思いこまされ、また自分たちも思いこんでしまった米軍基地が案外勤くかも知れないと感じ始めてきたことは大変なことである。安保や基地は国の権限であり民衆に口をはさむ余地はないとする政府の官僚たちに任せてはおけないと意思表示をしたのである。この民衆の意思表示に対し、大田知事は改めて重く受け止めるべきである。そうすれば公告縦覧問題に対する結論も自ずと見えてくる。大田知事頑張れ、民衆の力を今一度信じると声を大にして訴えねばならない。
               (那覇市議会・議員)


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