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 第179号(2006年6月28日発行)

ひんぷん

NPO法人奥間川流域保護基金

代表 伊波義安

 沖縄の豊かで貴重な自然は、第二次世界大戦でずたずたに破壊され、戦後も駐留し続ける米軍の基地建設や軍事演習によって破壊はいっそう進行しています。日本復帰後は、国による沖縄への莫大な公共投資により沖縄の脆弱な自然は回復不可能といわれるまでに、破壊は深刻化しています。

 希少な固有種を含む多様な生物を育んできた「やんばるの森」にも多額の高率補助金が投入され、ダム建設や林道開設、農地造成等によって山が削られ、沢が埋められ、大規模森林皆伐により山肌が露出、雨が降るたびに赤土が流出し、川や海を真っ赤に汚染してサンゴの海を死に追いやり、やんばるの森の貴重な生物たちも絶滅の危機に瀕しています。

 やんばるの河川はダム建設や農地造成、森林伐採等により河口閉塞や赤土汚染が進み、河川の生態系が破壊され、自然状態の河川はほとんどなくなりました。このような中で国頭村の奥間川流域は豊かな自然が残った数少ない地域の一つです。


 奥間川は、天然保護区に指定された与那覇岳を源流にもつ全長五・五キロメートルの河川です。下流域には環境省のやんばる野生生物保護センターがあり、河口近くで比地川と合流し、かつては比地川とともに奥間ターブックヮ(田圃)を潤していました。奥間川は自然が豊かであると同時に、人の暮らしと深い関わりのある川でもあります。地元では比地川を雄川(ウーガー)、奥間川を雌川(ミーガー)と呼び、おいしい奥間川の水を現在も飲料水として利用しています。(表紙写真参照)
 
 一九九八年、沖縄県高教組の自然保護検討委員会は、奥間川流域沿いの住民の要請を受けて「奥間川の生物・水質調査」を行いました。その報告書によると、沖縄県野生生物レッドデータブック(ROB)や環境省のROBに記載されているツルカタヒバヤクニガミサンショウヅル、ノグチゲラやヤンバルクイナ、リュウキュウヤマガメなど多種の貴重な動植物が確認されています。自然状態の河川が次々と失われていく中で、このように自然度が高い奥間川は隣接する比地川流域とも合わせて重要保護地域として残しておきたいと述べています。しかしながらここにもダム計画があり、すでにボーリング調査を終え、建設中の大久保ダムに連結するダムとして二〇一四年には沖縄北西部河川総合開発事業が完成することになっています。
 
 二〇〇〇年八月、数人の有志で「NPO法人奥間川流域保護基金」(以下保護基金とする)を結成しました。この会の目的は奥間川流域の自然を保護し、次代の子供たちに継承するために一般から一口一万円の基金を募ってその周辺流域の山林を購入するナショナルトラスト運動を進め、ダム建設を中止させることです。今年五月現在五百人の会員を有し、奥間川流域の山林約十万坪を三千万円の借入金で購入して共有しています。
 保護基金は会員拡大と奥間川流域の自然保護に向けて次のような活動をしています。二ヶ月に一回奥間川散策ツアーの開催、ニュースレターの発行、年一回の奥間川流域の写真・絵画展の開催、二〇〇三年に田中康夫長野県知事の講演会「ナガノ革命・脱ダムから学ぶ自立への道」を開催、保護基金所有地内にあるダム建設を目的とした地下水位調査用のパイプ八本を北部ダム事務所に撤去させました。保護基金はナショナルトラスト運動を足掛りに世界の宝「やんばるの森」を守る運動を拡大強化し、ひいてはやんばるの森を含めた琉球諸島を世界遺産にすることを目標にしています。
 
 二〇〇三年五月、国の世界自然遺産候補地に関する検討会は、琉球諸島を知床、小笠原諸島とともに世界自然遺産の国内候補地に決定しました。環境省の担当者は「琉球諸島は自然条件が高く、学術的価値は一番だが保護措置が最も遅れている」と指摘しています。琉球諸島が世界自然遺産になるための中核となるやんばるの森の面積の三分の一は日本の法律が適用されない米軍の北部訓練場です。その中で自然が比較的良好な状態で残り、貴重な生物も多数生息している東村高江に、防衛施設局はヘリパッド移設を今年中に着工しようとしています。
 名護市辺野古海域と沖縄市泡瀬干潟は、県が策定した「自然環境保全に関する指針」の中で自然環境の厳正な保護を図る地域(ランク1)に指定しています。しかし県は自ら策定した指針をまったく無視して、辺野古沿岸域を埋め立てての新基地建設と泡瀬干潟の埋立てを県民の反対の声を無視して国と一体となって強行しようとしています。県内のこのような状況に危機感を持った保護基金は、二〇〇四年県内七つの自然保護団体に呼びかけ、「琉球諸島を世界自然遺産にする連絡会」を結成しました。連絡会は結成と同時に、琉球諸島を世界自然遺産にするためにやんばるの森の林道開設や森林伐採、東村高江へのヘリパッド移設、辺野古沿岸への新基地建設、泡瀬干潟の埋立て等の反対運動に積極的にかかわっています。
 

 「平和と自然」は次世代に継承していかなければならない「人類の宝」だと思います。世界に類を見ない特異で貴重な琉球諸島の自然を守り、世界自然遺産として次代に継承するのは今に生きる私たちの責務ではないでしょうか。それを果たすために多くの方が奥間川流域基金に加入してくださるようお願いいたします。


NPO法人奥間川流域保護基金
 〒904−2243 沖縄県うるま市字宮里352−4
 TEL&FAX 098−974−7456