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『一坪反戦通信』
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 第178号(2006年5月28日発行)

特集 米軍再編・日米「最終合意」を撃つ!



「撤去可能なヘリポート」?

森口 豁(ジャーナリスト・沖縄を語る一人の会主宰)


 4月8日(土)

 普天間基地の辺野古「移設」をめぐり、先月来行われてきた防衛庁長官と名護市長の会談が 7日夜、最悪のかたちで決着した。報道によると国と市の合意のポイントは2つ。

 @建設場所は日米合意どおり辺野古崎沿岸とする。
 A2本の滑走路をV字形に配置。着陸用と離陸用に使い分けることで近隣集落への騒音を減らす。

が、まず名護市長の対応について―。

 合意は「沿岸案は認めない」とする選挙公約違反だ。選挙からまだ100日たらず。公約とはかくも軽いものなのか。これはまさしく市民への背信行為だ。島袋市長は直ちに職を辞し、選挙民に信を問いなおすべきだろう。

 市長が最後までこだわり続けたといわれる騒音問題―。はたして滑走路の向きを少し変えただけで騒音や墜落事故などの危険性は減少するだろうか。

 航空機は風に向かって離着陸をする。国の説明では新たな飛行場は南側からしか離着陸しないような言い方がなされているが、だとすると噴飯ものとしか言いようがない。アメリカは自由気ままに基地を使う。国の説明は「合意」目当ての言葉遊び。姑息な騒音隠し≠セ。

 そしてもう1点―。
 そうでなくとも飛行機というものは、強い横風のときには飛行コースを風上の方に大きくずらす。

 僕の間借先の那覇市天久界隈は、冬季の普天間基地進入コースの真下にあたっているが、横風のときの飛行機は100メートル以上も風上に寄って飛ぶのが常だ。だから騒音区域はその分広くなる。

 また、機種により騒音の高低や種類はさまざまだ。戦闘機ともなると、ちょうど那覇市上空でエンジンを逆噴射して減速するため、凄まじい爆音を辺りにまき散らす。そのあまりの激しさに、墜落かと思い部屋から飛び出したことが何度もある。

 つまり、いったん飛行場を受け入れてしまったら、周辺住民は爆音被害からも墜落事故からも逃れられない。これは過去60年で十分すぎるほど学んだこと。すべては軍事優先のアメリカ次第。決して甘くはない。

 問題点の2。
 滑走路を2本にすることで埋め立てられる海は格段に増える。

 辺野古崎周辺の海は近海に棲息するジュゴンの餌場(藻場)として知られるが、前にも書いたとおり護岸や消波ブロックのない、いまや沖縄ではマレな「美しい海」でもある。

 この貴重な自然は、先祖からの預かりもの。大事に次代に引き継ぐ責任が、いまを生きる僕らにはある。壊してはいけない。壊させてはいけない。沖縄の海殺しを平気でやる政治家や自治体の首長に「沖縄の発展」や「振興策」など口にする資格があろうはずはない。

 それにしても「V字形の滑走路」とは、なんと出来すぎた話だろう。いかなる気象条件にも対応できる優れた飛行場/滑走路は「V字形」がよいというのは、世界の定説だ。

 つまり米軍は、手狭で、使い勝手の悪い普天間飛行場に代わり、近代的な装備を施した全天候型の飛行場を手に入れるわけだ。一方、小泉首相や政府高官は「名護市長がごねてくれたお陰で、同盟国アメリカにいいプレゼントができる」とほくそ笑んでいることだろう。悪知恵に長けた連中だ。

 96年4月の「普天間基地全面返還」発表の際、橋本龍太郎首相が国民に約束した代替案は「撤去可能なヘリポート」の建設であった。方便だったかどうかは別にして、少なくともあの頃の政治には沖縄への気遣いというものがあった。しかしどうだろう、あれから10年、「撤去可能」な基地どころか、国はアメリカと一緒になって本島北部地区全体を巨大な軍事要塞にしようとしている。首相一人で国の行方はこうも変わってしまうものだ。

 それを支え、あるいは見て見ぬふりして、「沖縄のいいとこ取り」しかしない大多数のヤマトンチュを僕は許さない。

〈沖縄はやはり日本と訣別するしかない〉

 正直、そうも思う。

 国は今後「振興策」で沖縄の歓心を買うことに血道をあげるだろう。いま僕らに求められているのは、自分にとっての得損ではなく、なにが人として正しく、なにが正しくないか、そんな物差し/価値基準を大事にすることだ。

 沖縄の島々を、いつまでも「他国民殺害基地」のままにしておいてはならない。


(「森口豁の沖縄通信」より筆者の了解を得て転載)
 http://www.cyber-rabbit.com/katsu/index.html