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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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『一坪反戦通信』
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 第175号(2006年2月28日発行)

沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック 

2006年度総会(2006年2月19日)

記念講演

花輪伸一さん

 皆さん今日は、WWFの花輪といいます。

 実は私今沖縄の米軍基地にからむ環境問題、野生生物の保護問題を二つ抱えています。一つはジュゴンです。辺野古ですね。もうひとつはノグチゲラ、ヤンバルクイナといって地球上で「山原(やんばる)」の森にしか住んでいない鳥、ここは米軍のヘリパッドができる計画になっています。

 まずジュゴンのほうなんですが、琢磨さんの話にもありましたように、2000年と2004年、IUCN(国際自然保護連合)という、これは世界最大の自然保護機関ですね、政府機関、それから環境NGOが入っている世界最大の環境保全のための機関です。そこで2度にわたって沖縄のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全という勧告が日本政府とアメリカ政府に出されています。2004年のタイのバンコクでは、ジュゴンの棲息地に関して、それからノグチゲラ、ヤンバルクイナの棲息地に関してきちんとした環境アセスメント、―作らないという代替案も含めた環境アセスメント―、をしなさいと、それからこれらの生物の保全のための行動計画を作って保護区を設定しなさいと、こういう勧告が出ているんです。

 IUCNの勧告というのは国際条約と同等の重みがあります。ただ残念なのは、罰則がないので勧告に従わなくてもその国の恥というだけで強制力がないというのがちょっと弱いところです。そういった国際的な世論をバックに沖縄のジュゴンを守る、そのためには米軍基地を作らせない、こういう活動を世界に向けて発信しながらやっていきたわけです。

 ようやく軍民共用空港はできないというのがここ1年ぐらいで少しずつ明らかになってきたんですが、いきなり沿岸案という所に代わってしまった。また、それをつぶすための環境の面から、野生生物保全の面からの活動を続けていかなければいけないと思っています。

 IUCNの勧告をどういうふうに使ってきたかというと、琢磨さんも何度も上京して国会議員の所に行って説明して、国会で質問をしてもらう、質問趣意書を書いてもらう、それから国会で決議を採択してもらう、こういうことをやってきました。去年は100人近い国会議員に、―大半が秘書の方ですが―、お目にかかって署名をもらってそれを請願につけて出すというのをやってきました。34名の国会議員の署名を集めて衆議院、参議院の議長に出してそれがそれぞれの環境委員会に付託されたわけですが、昨年の解散のために審査未了ということで言わば廃案になってしまったということです。

 そういった色々なことを繰り返しながら、今度は沿岸案をつぶすためにやはり大浦湾及びその辺の海域というのはどれだけ豊かな自然環境なのか、ジュゴンにとって重要なのかということをちゃんと調べていきたいと思っています。これは学生や専門家の力も借りますが、できる限り市民の科学、住民が参加して調査をしていく、ダイビングが得意な人は潜ってこんな生物がいたよ、こんな海草がこの辺に生えていたよと、こういった情報をたくさん集めていってそれを3次元の地図の上に立体的な映像として落としてしていく、そういったものを使って自然の大事さというものを証明していきたいと思います。そしてそれを元に地域に住んでいる方々が、なるほどこの海というのはこんなにすばらしいのか、やっぱり基地を作るよりは保護区にしたほうがいいねと多数の方々がそう思う、議会にもそれが反映されるそういうような活動を今計画しているところです。琢磨さんの全面的な協力といいますか、これから一緒にやっていくことになっています。


 それから米軍のヘリパッドなんですが、辺野古の問題は脚光を浴びるけれども山原の北部訓練場の森の中の話になると中々ニュースにもならなくて困っているんですが、これもIUCNの勧告のおかげで最初の2年間の環境調査が終わった後、できなくなっちゃって、また2年間の追加調査というのをやって4年間は止めてきました。そして今5年目に入って新たな環境調査に基づいた案が出てきているんですね。多少縮小する、7箇所のヘリパッドを作るといったのを6箇所にするとか、ヘリパッドの直径を75mから45mに縮小するんですけど、これはうそなんですね。45mにするけど回りに木が生えていたら30m刈り払うというんで、75mと変わらないです。この計画に関する調査報告書が今縦覧されて3月25日までに意見を出せということになってて、形式どおりに意見を集めて着工するという話になっていくわけです。

 このやんばるの北部訓練場、8000haありますけど、そのうち北の部分の4000haを日本に返還する。残り4000haに北にあったヘリパッド7箇所をそのまま移設するんだというんですが、米軍のヘリパッドというのはたかだか直径が10mくらいの裸地なんですね。これを全面芝貼りの75mのヘリパッドにするというのは、オスプリという垂直離着陸の戦闘機の配備を目指しているのが明らかなんです。これを止めてきたのがノグチゲラとヤンバルクイナという地球上で沖縄のやんばるにしかいない鳥たちなんですね。

 確かに基地を半分にして返還するとは言うんですけど、これは軍事基地のスクラップアンドビルドで古くなった基地は止めて新しい基地にものすごい軍事機能を強化していくというやり方なんで、辺野古の沿岸案もまさにそのまま日米政府がそういうことを狙って、決して負担軽減ではなくてむしろ基地機能の強化を図るという、それが自然環境と沖縄にしかない自然環境と沖縄にしかいない野生生物に大きなダメージを与える。そして地域住民の方々を苦しめる。地域社会を賛成反対に分断させていく。極めて犯罪的なことを行っているわけです。


 環境問題というのは、実は平和問題と人権問題、環境・平和・人権というのは三つ一緒にして考えなければいけない。何としてでもその米軍基地を作らせないことで、環境を守り野生生物を守り、地域住民が平安で幸せな暮らしを続けられる、そういったふうにしていかなければいけないと考えています。環境団体もWWFとか日本自然保護協会あるいはグリーンピース、野鳥の会ですとかあるいはジュゴン保護キャンペーンセンターですとか琢磨さんのところのジュゴン保護基金委員会それからジュゴンネットワーク沖縄、そういったものがいろいろあります。皆さんとも力を合わせてこれからも頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。


*世界自然保護基金日本委員会(WWF Japan) 自然保護室