軍用地を生活と生産の場に!
沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
http://www.jca.apc.org/HHK
東京都千代田区三崎町2-2-13-502
電話:090- 3910-4140
FAX:047-364-9632
郵便振替:00150-8-120796

『一坪反戦通信』
毎月1回 28日発行 一部200円 定期購読料 年2,000円
 第172号(2005年10月28日発行)

人々の安全を保障するのは隣人との友好であり、信頼である

会員 KK


 那覇防衛施設局の出納員と名乗る二人の人物が自宅を訪ねてきた。9月6日午後8時過ぎのことである。午後に一度訪問し、8時頃には帰ると聞いたので来ましたと言う。

 「宜野湾市字大謝名東原994-2」の「雑種地67u」の600分の1が僕の持分だ。出納員が「補償金1748円を持参しました」と言うので、僕は「そんなこと了承していませんよ。基地がなくなれば、あなたもこんな仕事をする必要がなくなるのに」と応酬した。その間、一人が応対し、もう一人がせっせとメモを取っている。

 「補償金の受け取りは拒否する」と僕が言ったら、2人は相談して「本日午後20時15分頃補償金を持参しましたが、貴殿は受領されませんでした」(慌てていたのか「午前」に横線を引いて消し、「午後」に何故か20と書き入れた)と書き込み、「したがって、以後補償金の供託手続きを進めさせていただきます」という書類を置いて立ち去った。

 その日は衆議院選挙の真っ只中で、僕は選挙応援に町田市まで出かけ、帰ってきたところだった。

 応援した人は石毛B子(いしげ・えいこ)さん。衆議院議員を3期務め、4期目をめざしていた。石毛さんは民主党の議員で福祉・人権問題に取り組み、障がい者団体に信頼厚い人である。彼女はクルド人難民を支援し、韓国・朝鮮人BC級戦犯問題の解決に取り組むなど、票にならないことに奔走していた。僕が関わっている戦争被害真相究明法制定運動では、法案を推進する超党派議員連盟の要である幹事長を引き受けてもらっていた。

 選挙中の9月3日、その石毛候補に朝日新聞は取り返しのつかないミスを犯した。同紙は小泉首相の靖国参拝の是非を問う候補者アンケートで、参拝反対の石毛候補の答えを「参拝すべき」と掲載したのである。事務所の抗議で朝日は翌日、訂正と謝罪記事を掲載した。が、後の祭りである。事務所は対応に終始し、その日は選挙にならなかった。

 総選挙の結果、小泉自民党は衆議院の安定多数を占めた。対する民主党は惨敗、頼みの石毛さんも議席を失った。民主党は改憲派の前原新代表を選出、新代表は小泉首相と改革を争うと明言した。集団的自衛権容認を公言する前原代表が小泉首相と争うのはアメリカへの忠誠度ではないのかと心配になる。党内の良心派が弾き飛ばされることにならないかも気にかかるところだ。

 かつて、沖縄返還運動に参加し、反基地・反自衛隊闘争に取り組み、沖縄戦に関心を抱いてきた僕は、ここに至って改憲へのK点を越えてしまったような気がしている。再び、軍服が幅を利かせる時代が見えるような気がするのである。領土問題で中韓朝ロを敵に回し、排外主義を掻き立てることで、安全保障を軍事力に頼らざるを得ないように思わされている。これでは沖縄の基地はなくならない。

 「国民保護法」というまやかしの法律が成立したのは昨年の事である。その法律の下で、着々と総動員体制づくりが進んでいる。小泉首相の靖国参拝はアジア諸国の人びとの憎しみを助長し、日本の国民を誤った民族主義へと押しやるだろう。

 今は、沖縄戦や敗戦前夜の旧満洲の教訓に学ぶべき時である。「軍隊は市民を守らない」という「軍隊の公理」に人びとは気づくべきである。沖縄戦で自決した牛島満と長勇は共に南京攻略戦に参加、中国民衆を地獄
の底に落とし込んだ人物である。その人物が沖縄の人々をも蹂躙したのである。

 人々の安全を保障するのは軍隊ではない。人々の安全を保障するのは隣人との友好であり、信頼である。

2005年10月19日
 
(KK) 新宿区在住・元新宿区議会議員