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『一坪反戦通信』
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 第171号(2005年9月28日発行)

小泉外交とアジア


  普天間返還=その移設先は「辺野古見直し」動向の中で漂流中だ。

 SACOの最終報告も閣議決定も、地元の抵抗で吹っ飛んだ。今では10月に予定していた米軍再編の中間報告作成も日米安全保障協議委員会(いわゆる「2プラス2」)開催も宙に浮いている。

   歯が浮くような話

 去る9月11日の総選挙で自民党が衆議院で296議席を獲得、単独過半数となった。強気の小泉・自民党政府は、辺野古新基地建設を強行するであろうか?

 小泉首相は昨年9月21日の日米首脳会談以降、米軍再編に関連して「沖縄の負担軽減」を公言している。それまでは口にしたことのないセリフだ。

 歴代の首相で、さも沖縄の基地重圧解決に努力したかのように言う人物は何人もいる。橋本龍太郎も小渕恵三もそうだ(*)。「沖縄の心」を理解して、とまで言った人物さえいる。そらぞらしい歯が浮くような話、とはこういうことではないのか?  小泉首相も「国債発行を30兆円以下にするという公約が守れなかったが、それはたいしたことではない」と言ったくらいだから、「沖縄の負担軽減」ができなくなっても、それはたいしたことではないと言う可能性がある。

 戦後日本の外交は対米外交とアジア外交、国連外交の三本が柱になっている。少なくても、たてまえ上は日米同盟一辺倒というわけにはいかない。一九三〇年代以降のアジア侵略を反省し、紛争の解決手段としての武力行使は放棄するだけでなく近隣アジア諸国との友好促進と国連尊重を、政府は法治国家として義務づけられているからである。村山談話と戦後五〇年の国会不戦決議も、アジア諸国との協調を政府が拘束されることを意味している。

 それにもかかわらず小泉外交はアメリカ一辺倒の外交に終始している。たしかに、なぜか北朝鮮に対してだけは米国からの「配慮」を振り切って進めようとした事実はあった。しかし湾岸戦争・アフガン・イラク戦争のいずれでも率先して対米協力し、国連安保理さえないがしろにしてきた。外務省も小泉首相、安保理は結局はアメリカに屈してアメリカのイラク攻撃を認めるだろうと踏んでいたようだ。「イラクの大量破壊兵器はまだみつかっていないが、いずれみつかるんじゃないですか」と小泉首相は国会答弁していた。アメリカが大量破壊兵器はなかったといさぎよく公表、パウエル国務長官(当時)までが謝罪しても知らん顔だ。

   周辺諸国の理解は不要なのか?

 これでは日本が国連安保理常任理事国になるのも、各国の支持はとうてい得られない。アメリカの単独行動主義を賛美しているのでは、国連憲章の精神に反することは明白だ。

 アジア諸国から小泉外交は警戒されている。特に靖国神社参拝をめぐって小泉首相は沸き起こったアジア諸国からの反感・非難に対して、国会では「それなら周りの国がだめだというから(参拝を)やめるべきだというのですか!」と答弁している。

 それなら小泉首相、周りの国の一つである米国からほとんど何を言われてもOKするのはどういうわけか? 
 アジア近隣諸国にも十分配慮すべきではないのか。教科書検定、歴史認識にしてもアジア諸国の反論に十分耳を傾ける義務があるはずだ。郵政民営化についてだって反対意見を十分聞くべきだ。周りがだめだといっても実行に移すというのであれば、そもそも国会で審議する必要がどこにあるのか?

 総選挙で勝ったとされている強気の小泉首相。しかし今回の総選挙の与野党の獲得票数では(無所属議員票を野党にカウントすると)野党の票数の方が多かった。小選挙区制だったために当選議員は与党多数だった。獲得議席ほど郵政民営化が国民に支持されていたわけではなかった。

 今回の総選挙では自民、公明両党が作成した「連立与党重点政策」は、外交では「アジア重視」をうたった。小泉首相の靖国参拝問題で中韓両国との関係悪化に配慮すべきだとする公明党の意見を取り入れたものと思われる。同「重点政策」の七項目目は「平和外交の推進」となっており、日米同盟と国連中心の国際協調を「両輪」とし、なんと「アジア外交により力を注ぎ、日本が近隣諸国から信頼されるため、未来志向型の提携を強化する」と書かれている。

 だがしかし、である。かつて自民党が野党だった細川政権当時、自民党の政権復帰をめざす政策提言『二一世紀への橋(自由民主党政策大綱試案)』が作成されていたそうだ。そこでは憲法9条の「改正」も棚上げされたという。だが自民党が政権に復帰すると、それはいとも簡単に放棄された。口先では何とでもいえるものだ。

 「辺野古見直し」案は嘉手納統合案のほか、米軍キャンプ・シュワブ陸上案と辺野古沖縮小案、辺野古浅瀬縮小案など「候補地」が揺れている。

 嘉手納統合案は地元が反対表明。シュワブ案も米国防総省が「地元の支持がない」として拒否されている。
  
 一方的に移設条件をつけて返還合意させたせいだ。地元の反対運動でどこにも移設先がみつからずにさまよっているのである。米軍は今や「歓迎されない所」から徹底するほかはない。


*口先だけの小渕首相と橋本首相

 小渕首相:普天間飛行場の移設・返還にかかわる諸問題につきましては、地元の意向も踏まえまして、昨年末、御指摘の点も含めまして、政府としては、その取組方針を閣議決定いたしたところであります。・・・・県や地元の御意見を十分お聞きをし、米側とも協議しながら、安全・環境対策や地域の振興を含めて全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております(2000.3.26の記者会見。ゴシックは引用者)。

 橋本首相:沖縄の方々が長年背負って来られた負担に思いをいたし、沖縄が抱える問題の解決に全力を傾けたい、なかでも普天間飛行場は市街地にあり、この危険な状況を放ってはおけない、だからこそ私は、SACO最終報告を取りまとめ、普天間飛行場の返還を可能にする最良の選択肢として代替ヘリポートの建設を提案いたしました。今でもそのような私の思いは同じです。(1998.2.16の施政方針演説。ゴシックは引用者)。
                                    (Y)