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『一坪反戦通信』
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 第169号(2005年7月28日発行)

新刊紹介

沖縄「戦後」ゼロ年

目取真俊

日本放送出版協会 ; ISBN: 414088150X ; (2005/07)

 鋭い切り込みのタッチで知られる著者が、こともなげに述べた沖縄の基地と政治情況。知られていない新事実を語ったわけではない。よく指摘される沖縄戦と基地重圧の現在についてなのに、説得力がある。抑制してクールに語ると、却って強調されるのかもしれない。

 著者は観照的な書き方はしない。「あなたはどうするのか、という問いが」(一一六頁)読者にも向けられる。「『沖縄問題』を作り出しているのは『本土』に住む日本人です」(同)というのである。「沖縄大好き、沖縄ファンで、沖縄びいきで、積極的に沖縄に親しもうとしていること」も「一種の暴力性を持っている」(一七一頁)と言う。ズバリ「沖縄に同情したり、関心を持ったり、連帯しにこなくていいから、基地を持ってけよ」(一七八頁)というのである。

自分自身にも厳しいし、沖縄人にも同じ。沖縄の人の「加害の責任は、逆になおざりにしているのではないかという批判が沖縄の内部からもある」(一八二頁)ともいう。自分についても外側のことだけでなく、体験を通して語る。

著者の祖母は大正期にヤマトでの沖縄差別に腹をたてて皇居前の植え込みでわざと小便したそうだ。手の甲に入れ墨があった曾祖母(「東京のおばー」)もその入れ墨を恥じなければならず、つらい思いをした。著者の父は「(どうして自分達の言葉を使ってはいけないか)」と反発し意識的に家で「方言」を使ったそうだ。沖縄戦の経験を親たちから聞き取った著者は、基地の現実を重ねて考察するに至った、という。

 著者は6年前に「希望」と題する小論を書いた。沖縄で米軍と住民とで<ことば>が通じなくなったら、反米行動が不可避に起こる?とするものだった。九・一一を予告したかのような衝撃の小論。本書は二百ページ足らずの文庫本だが、是非一読をお奨めする。(Y)