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第138号(2002年7月28日発行)

【自著紹介】

  絵本『戦車は止まった』
  
    戦車闘争を伝え残す絵本から明日へ

 「戦車を止めろ!」

 人々の間をこの叫びがこだました。神奈川県相模原市、三〇年前の出来事だ。

 一九七二年、米陸軍相模総合補給廠はベトナム戦争で使用する戦車の修理・搬出を行なっていた。その戦車の搬出を市民が阻止した百日間があった。それが「戦車闘争」だ。

 この絵本の執筆者は、当時新聞記者としてその百日間を共に闘った。闘争の一部始終を今なお鮮明に記憶する。そして、三〇年を経た今自問するのであった。「この出来事がこのまま忘れ去られていいのだろうか?」「戦車闘争」を伝え残す絵本作りはこの自問から始まった。

 縁あってこの絵本の絵を担当した私は、「戦車闘争」という出来事を実際には知らない。補給廠に隣接する町に住んで二〇年になる。駅前の一等地に大きなアグラをかく基地への疑問よりも、生活の便を優先させてこの町へ越してきた。

 補給廠は静かだ。人の気配もあまり感じられない。広大すぎて目に入らない。静かすぎて風景の一部になってしまっている。相模原の住民にとって、補給廠はこんなイメージではないだろうか。しかしその静けさは、パックリと口を開けた落とし穴であるようにも感じられる。

 執筆者は言う。現在の相模原の人口は六〇万、当時はその半分だった。現在でも「戦車闘争」を知る人は稀である。あと十年もすればその言葉すら知らない人々に相模原は呑み込まれてしまうだろう。

 それでいいのか? 執筆者と同じ問いを私も繰り返す。絵を描く前にこんこんと聞かされた闘争の一部始終、そこから私が得たものは「希望」であった。ひとりひとりの力が武器をも超える力となる。単純だがそれを感じた。

 巨人となり得る民衆の力。これをイメージする時、この絵本は過去の出来事を伝え残すという役割にとどまらず、今の時代を生き、明日を考える私たちに希望の一片をもたらす役割をも担うのではないだろうか。

 「戦車を止めろ!」

 この叫びは消してはならない。その言葉の底に躍動する思いが、あらゆる垣根を越え、ひとりひとりの心の中へ伝播した時、この地球の上に特大の巨人が出現する……。子どものように明日に向かって絵・夢を描こう。 

    (山田広美)

文:にしお けんじ  絵:やまだ ひろみ
定価1,000円(本体)
アゴラさがみはら出版
 229-0026 神奈川県相模原市陽光台3-9-12
 電話&FAX:042-752-5536(西尾)
 E-mail agora@par.allnet.ne.jp

あとがきから

あれから30年、戦車闘争という言葉を忘れてしまった人、ひとづてにかすかに耳にした覚えのある人、全然知らない人……いろいろでしょう。

 忘れられない、市民の力の爆発でした。補給廠の戦車修理機能を失わせました。しかし、SAGAMI DEPOは、厳然として存在し、いまも世界の戦争の後方支援をしています。平和憲法下の日本で……。(西尾顕爾)

 30年前「戦車を止めよう!」と、武器も持たずにすわりこんだ人たちの心の中には、何があったのだろう?戦争はイヤだ、人の命は大切だ。誰もがもつ、そんな気持ちがきっとあったのだろう。
 サラリーマンや学生、主婦……。普通に生活している人たちが戦車を止めた。

 自分が望むことは、きっと誰もが望んでいる。平和な世の中で、幸せを感じる毎日をおくりたい。一人の力は小さいけれど、平和を願う気持ちが大切。心と心をつなぐことが大切、そんなことを考えながら絵を描きました。(山田広美)