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第123号(2001年4月28日発行)

【報告】

  国連人権委で訴え

 国連人種差別撤廃委員会は、去る三月二〇日、日本政府に対する初の勧告で、沖縄の人々が差別的状況におかれているのではないかとの懸念を表明した。国連の人権監視機関による対日勧告で、はじめて沖縄の人権問題が取り上げられたことになる。

 また、勧告では言及されなかったが、三月八日、九日に行われた日本政府に対する審査では、米軍基地から派生する人権侵害などについて、委員からの質問が相次いだ。その意味するところは小さくない。

 人種差別撤廃条約は、一九六九年に発効。「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身(national or ethnic origin)に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先」の禁止を規定する条約である。条約の名称から受ける印象よりも、その適用対象は広い。

 人種差別撤廃委員会の審査は、正式には、委員と政府の二者間で行われるが、NGOは審査の合間に委員を招待して説明会を開いたり、審査を傍聴することによって間接的に審査に参加することができる。沖縄からも筆者を含め二名が当事者として参加した。

 沖縄からの参加者は、NGO報告会で、(1)在日米軍基地の七五パーセントが沖縄に集中し、米兵の犯罪や騒音被害が絶えないため、日米地位協定の改正が強く求められていること、(2)SACO最終報告が、米軍基地の整理・縮小の条件として基地の県内移設をあげており差別的であること、などを中心に、委員にその人権侵害状況を説明した。

 ロビー活動などの結果、四名の委員が日本政府に沖縄の問題について質問を行った。それらの委員からは、米軍基地集中の問題や、米軍から発生する被害の状況についての質問、日本政府がなぜ沖縄の問題を政府報告書で取り上げなかったかのかという質問が出された。

 これに対し、日本政府代表は、「沖縄県に居住する人々及び沖縄県出身者は、民族として考えられておらず、本条約の対象とはならない」と述べながらも、沖縄に関する質問が複数の委員から出されたため、回答を行わざるを得ず、以下のような発言を行った。

 (1)在日米軍の七五パーセントが集中し、負担をかけていることは十分承知している。負担軽減のためには、SACOを着実に実行することが必要だと考えている。(2)日本には各地に特色豊かな文化があり、沖縄のそれもその一つである。沖縄の人々にも自己の文化、言語を使う自由はある。(3)米兵による犯罪は、NATOにおける米国と他の諸国間の協定と同じ内容を持つ、日米地位協定第一七条及び第一八条によって罰することができる。米兵による犯罪に対しては閣僚レベルで抗議を行っているし、米軍も「よき隣人政策」をとっている。

 日本政府の発言一つ一つに対して疑問点や反論されるべき点があったが、審議時間に制約があったため、それらの発言に対して、委員から再質問は出されなかった。しかしながら、委員会は、「最終所見」の「懸念及び勧告」の部分で、「沖縄の住民は、固有のエスニックグループとして認められていることを求めており、その島がおかれている状況が、住民に対する差別的行為を生み出していると主張している」と沖縄について言及し、二〇〇三年一月に提出が予定されている次回の政府報告書では沖縄の問題も取り上げるよう勧告したのだ。

 残念ながら、勧告では、基地問題など沖縄の抱える具体的問題は言及されなかった。だが、それは沖縄側からの国際人権機関へのアプローチが始まったばかりで、委員への情報提供が不十分だったことに要因が求められよう。沖縄の人権問題は、国内法ではなかなか解決が難しい。これまでの内側からの働きかけに加え、国際人権機関などによって、外から日本政府の政策を改正させていくというアプローチも今後さらに重要になっていくのではないかと考える。       
(T)