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第120号(2001年1月28日発行)


土地収用制度改悪

 日本政府は、米軍用地特措法の再改悪によって、県や市町村の関与を剥奪し、収用委員会の却下裁決さえも簡単にひっくり返す道をつけた上、これでもかというように、今度は土地収用法を改悪しようとしている。

 国土交通省は一月一五日、土地収用法改正試案を公表した。事前説明会や公聴会の開催を義務づけ、手続きの透明性を高めるといいながら、収用裁決手続きを合理化し、短期間で用地を取得しやすくする強権的なもの。試案の目的に、「二一世紀の公共事業を進めるにふさわしい土地収用制度の確立」などと謳われていているが、まったく笑止である。二月末にも通常国会に提出する予定。

 この動きが公になったのは、昨年五月、建設省建設経済局長の私的研究会として土地収用制度調査研究会が設置されたときである。委員の選出分野は、法学界・経済界・環境・マスコミ・自治体・行政実務経験者・法曹界・鑑定・収用委員会・事業者等といわれるが、実体は不明だ。第一回研究会が五月二四日に開かれてから、計六回の研究会が開かれ、昨年一二月二五日に報告書(注)が提出された。第一回から既に次のような意見が出されている。「権限外であるにもかかわらず、収用委員会の審理においては七〜八割が事業計画の妥当性についての批判に終始しているのが現状であり、本来の任務である土地の範囲であるとか、補償金額であるとかについての審理に要する時間は極めて少ない。一坪運動等の多数当事者を相手にすることは実務では非常に困難を極めている。連日徹夜で職員が対応せねばならないこと等の現場を考えると何とも割りきれない。事業計画の段階から権利者にある程度の理解を得られる手続が踏めれば、収用の手続は苦労しなくて済むのではないか」(研究会議事録より)と。つまり、のっけから、収用委員会の審理を限定し、共有地運動の排除を意図した意見が出た。実際に公表された試案には、「収用手続きについて」の項目で、@権利者が多数の場合等の土地・物件調書作成の特例の創設、 A審理の円滑かつ合理的な遂行のための代表当事者制度の創設、  B現金書留郵便の活用など補償金払渡方法の合理化、 C収用委員会の審理における事業の公益性に関する主張内容の整理、の四つをあげており、まさに前記の意見がそのまま採り入れられている。試案では、意図を隠すために抽象的な言葉が使われているが、報告書を読むと何を意図しているかは歴然としている。

 一二月二七日には、「土地収用法から公共事業を見直すネットワーク発起人」らが、

 …、二一世紀の中心的な価値及び理念である「環境」と「人権」に対する配慮がなく、公共事業の「公共性」が大きく問われている現在、ひとたび事業者が決めた事業を効率的、経済的に推進すると言う名目で土地収用法を改訂することに、大きな危惧と疑念を持つものであります。

と、基本的意見と修正要求内容を発表している。反基地運動を米軍用地特措法の再改悪で押さえつけたかに見える日本政府は、次は、さらに包括的に、民衆の異議申し立ての道をふさごうとしている。反基地運動から環境運動の封じ込めへと、政府は着々と有事体制の整備に余念がない。対する市民の反応は、鈍い。例によって、マスメディアの反応もほとんど無に等しい。

 (注 下記URLに全文が掲載されている。一七、一八頁に一部掲載)

・建設省建設経済局「土地収用制度調査研究会」 研究会議事録
        http://www.mlit.go.jp/kisha01/pubcom/pubcom3/ex.html
・土地収用制度調査研究会報告
        http://www.mlit.go.jp/kisha01/pubcom/pubcom3/mokuji_.html