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第117号(2000年10月28日発行)

【学習会】 

 改悪特措法のもとでどう闘うか

  一○月一四日
     文京シビックセンター会議室

安里秀雄さん 講演

 「改悪特措法のもとでどう闘うか」というタイトルになっていますが、まず結論から。闘いは変わりません。法律の内容が変わりましたから、裁判の内容は変わります。しかし、闘いは変わりません。そこをまず押さえておいてください。

 特措法「改正」に関する文章を読みますと、九七年四月一七日「改正」となっていることが多いのですが、四月一七日は「改正」ではありません。四月一七日は国会を通過した日。施行日ではない。資料3(「土地強奪の経過」4頁)にあるように、「改正」日(施行日)は九七年四月二三日です。地方分権整備法も同じです。国会を通ったのは九九年七月七日、施行日は二○○○年四月一日。

 「改正」特措法で変わった点は、市町村、あるいは県知事の関与ができなくなったこと。今まで、市町村や県知事が公告縦覧や代理署名を拒否できたのが、拒否できなくなった。ここが「改正」特措法の主な点です。したがって、市町村長や県知事が保守であれば関係ない。太田知事が拒否をしたために、それをどうにかしなくてはいけないということで、特措法を「改正」したわけです。市町村や県知事に対しては、特措法は変わりました。しかし、運動そのものは変わらない。
 現在、「改正」特措法のもとで強制使用手続きの一〜九(資料1)まで進んでいます。裁決申請書の公告・縦覧が十月一一日に始まりました。この公告縦覧というのは、九五年の太田知事が拒否した代理署名のあとの手続きです。これがなくなった。県知事の関与がなくなって、那覇防衛施設局が公告縦覧をやってしまう。

 米軍用地特措法がいつ頃できたかというと、五二年のいわゆる平和条約に、日本が独立し、連合国は九十日以内に日本から撤退すると明記されていた。しかし、平和条約締結と同時に、旧安保条約を締結します。連合国が日本から撤退すると同時に、安保条約六条によって、アメリカの駐留を認めるという二段構え。安保条約を実施するために、行政協定(現在の地位協定)が作られる。この行政協定を実施するために、この米軍用地特措法が制定され、基地の提供義務ができた。本土でも特措法の適用によって土地の強制使用があった。しかし、本土での適用は六ヶ月。しかし、沖縄での申請は十年とかの長期申請だった。

 米軍用地特措法の手続きはまず地主への意見照会で始まる。第四条で、地主の意見を聞かなければならないことになっている。防衛施設局は賃貸借契約に応じない地主に対して、「特措法を適用しますが、どうしますか、意見はありますか」という照会文書を発送します。これが始まり。米軍用地特措法の手続きは土地収用法に基づくことなってる。意見照会も土地収用法に基づいて出しますが、違いがある。土地収用法では、地主・関係人・利害関係人の三者に照会を出す。しかし、米軍用地特措法は土地収用法をふまえているにもかかわらず、利害関係人を除いている。ここが大きな特徴です。なぜ利害関係人を除いたか。たとえば、沖縄市全体、あるいは、沖縄市、石川市、嘉手納町、北谷町、全部利害関係人がいますから、そういう人たちみんなに意見を聞いていたら大変だ、ということで、米軍用地特措法では意見照会するときに利害関係人だけは抜いている。ですから、地主と関係人(地主が銀行から融資を受けている場合には、銀行が関係人)だけです。地主への意見照会が今年の四月一四日。二週間以内に意見を出してくださいと。

 そして、地主から意見が出たら、その意見を添付して、内閣総理大臣に強制使用認定の申請する。ただし、地主の意見は添付しますが、はたして、総理大臣が地主の意見まで読むかどうか。おそらく読みはしない。その申請を受けて、総理大臣は強制使用認定をする。これが六月二七日。強制使用認定に対して不服があれば、三カ月以内に裁判所に提訴しなくてはならない。もし、提訴しなければ、その強制使用認定が正しいということになるから、公開審理等で意見を言うときに非常に弱い。だから、意見書を出して、その後裁判ということになる。

 使用認定が出たら、土地・物件調書を作成して、資料1の五番目に進む。今までは、防衛施設局が作成した土地・物件調書を地主が拒否した場合には関係市町村にあがりました。今回の場合なら、象のオリは読谷村、牧港補給基地は浦添市にあがったわけですが、特措法の「改正」で、市町村は関係ないということで、総理大臣の代行として、施設局の職員が署名押印をした。これが八月一六日。九七年に「改正」された特措法の一三条によって、総理大臣の代理の職員が署名押印をする。土地収用法では三六条。署名の代行をしたら、次に施設局は、もう書類が整ったということで、県収用委員会に裁決申請書を提出します。

 問題なのは楚辺通信所、象のオリです。前回、収用委員会には十年間の裁決申請をしましたが、公開審理の途中で、四年間に訂正すると国側は言って来た。なぜ、四年か。SACOの合意に、二○○一年三月三一日に返還するという項目がある。したがって、三月三一日までしか使いませんということで、収用委員会に裁決申請の訂正をしたわけです。国は自ら三月三一日以降は使いませんと言いながら、収用委員会に満額認められたにもかかわらず、返還しないで、まだ強制使用すると今回申請した。行政の怠慢です。しかも、あの施設は遊休化している。民間の人たちが管理しているだけで、何も使用していない。本当に必要なのか。

 収用委員会の当山会長は「米軍用地特措法がおかしければ、おかしくないような裁決を出す」と言っている。そして、三月三一日に期限が切れますが、それにはこだわらないとも言う。そういうことで、九月二五日に裁決申請書を受理した。翌日、収用委員会は地主に対して意見照会文書を送付します。収用委員会から出された意見照会文書、これは、皆さん経験があると思いますが、これには何らかの返事をしないといけません。「土地は貸しません」とか書いたものを出さなければいけない。公開審理は、自分の出した意見書の補充という形で自分の意見を述べるということになっているので、収用委員会の意見照会に対して意見書を出していない人は、公開審理の場で意見陳述権がなくなる。こういう経過で、現在、那覇防衛施設局の公告縦覧が始まっている。 

 これから、収用委員会・地主・施設庁の三者会議を開いて、公開審理の日程を話し合う。今回は、これまでの三千人近くの公開審理とは違って二人だけ。象のオリと牧港補給基地の一筆。一時間ずつ意見を聞いて、二人で二時間で終わる可能性もないわけではない。しかしそうならないだろう。これまでの公開審理同様、まず、現地立ち会い申請をする。意見を述べるには、土地を見ないといけない。しかし、今までは、収用委員会の中で却下されてきました。米軍が認めない。しかし、象のオリの時には、国側の言い分を全て却下して、裁判所が中にはいるべきだと認めました。民事裁判での関連事項を、最近、弁護士が探してきました。米軍基地に関する文書ですが、「日本国の民事裁判所は合衆国軍隊の使用する区域または施設内で検証することができる」とあります。裁判所の決定さえあれば、米軍がいやだと言っても、中にはいることができるということ。収用委員会は裁判所とは同じではないのですが、裁判の中ではできるということです。検証しないと裁判官は判決文を書くことができない。こういう文書があるものですから、今回の裁判で我々は、検証の要求を出してある。一三施設全部について、北は伊江島から、南は那覇港湾施設まで、検証申立書を出している。国側はそういう必要はないと言ったものですから、先週の火曜日の裁判に、この資料=法令集を出したところ、国側は驚いていた。国側も初めて知った。裁判所の命令があれば拒否することはできないということです。

 収用委員会が三月三一日までに結論を出すかどうか。もし、出さなければどうなるか。ここが「改正」特措法に関係するところです。もし結論を出さなければ、暫定使用ができるというのが、二回目の「改正」です。地方分権一括法案のなかに特措法の「改正」が潜り込んでいたわけですが、そのなかで、裁決ができなければ、総理大臣が裁決をするということになっている。使用認定から、代理署名、公告縦覧、使用裁決、全て総理大臣の手でできる。はたして、これが民主主義か。裁判所がどう判断するか。「改正」特措法になって、公開審理が始まっても裁判とのからみが大きくなってくるのではないか。

 公開審理についてはまだ収用委員会との話がなされてないので、何回で終わるか分からない。物理的に言ったら、二時間で終わることもできる。しかし、そうはいかない。公開審理に参加された方は記憶にあると思いますが、冒頭、那覇防衛施設局の申請理由説明というのが入る。二時間くらいしゃべります。その後に、本来は地主の意見陳述です。ところが、那覇防衛施設局が申請理由をしゃべるが、すぐその後に地主の意見を言いなさいとは、ならない。申請理由を持ち帰って、じっくり検討してから意見を言う。問題は、申請理由のあとにこちら側が何を出すかです。我々としては、基地内立ち入り要求を出す。収用委員会に対して、とにかく現地を見せてくれと、現地を見ないで意見を言いなさいと言うのは難しいと持っていきますから、その日は意見陳述はないはず。だから、二回目の期日に、現地に入る可能性がある。基地内立ち入りが認められない場合の戦術も考えなくてはならない。ですから、いろんな戦術を考えながらやります。

 今問題になっているのは、象のオリと牧港補給基地ですが、なぜ三月三一日になったのかを説明しておきます。象のオリは、SACOの合意に会わせて収用委員会が三月三一日に返還するという裁決をした。一方、牧港補給基地は新しい土地。浦添の古波蔵さんという方が契約されていた土地を買いました。契約された土地は民法で、二○年間は借り続けることができる。古波蔵さんの土地は、前の地主が二○年前に契約していた土地だった。それが三月三一日できれる土地だった。ですから、この二つがくっついてしまったわけです。

 前の強制使用の時に四年間の強制使用というのがあります。普天間飛行場と那覇港湾施設ですが、来年から手続きに入ります。五年間の伊江島補助飛行場、キャンプ・ハンセン、嘉手納弾薬庫……、は二○○二年から強制使用手続きに入らないといけない。収用委員会がバラバラな強制使用裁決を出したため、毎年強制使用手続きをすることに結果的になってしまった。

 収用委員会が出した裁決では、九八年九月三日に土地を明け渡しなさいという裁決でした。そうすると九七年五月一五日から九八年九月二日までは、どうなっていたかというと、暫定使用です。収用委員会は五月一九日に裁決をしますが、この日が明け渡し日ではない。地主に対して賃貸料(=補償金)を払って初めて、使用権原が発生する。楚辺通信所と牧港補給基地が三月三一日に期限が切れる。ここで裁決しても間に合わない。遅くとも二月には裁決を出す必要がある。三○日に補償金を支払って初めて、三一日から使用することができる。ですから、前の時も五月一九日に裁決を出しましたが、九月三日から使用ということになった。前回は三○○○名で、人数が多かったから。今回の場合二人だけですから、二月末日までに収用委員会が裁決を出せば間に合う。そうすると、公開審理は、十二月、一月と二回くらいしかやれない。地主と収用委員会との話し合いが今月開かれるとしても、諸手続で、一二月に開かれないとしたら、一月、二月に一回ずつ公開審理をする。収用委員会の会議が三月にはいるとすると、四月に裁決を出す可能性がある。しかし、補償金の支払いで一ヶ月おくと、五月の明け渡しになる。なぜ、そこまで国がのんびりしているのか。これが特措法の「改正」なんです。期限までに収用委員会が裁決を出し切らない場合には、総理大臣が代わって裁決をする。

 これまでの話は、収用委員会が裁決を下す場合の闘争です。収用委員会の裁決には三つある。認容の裁決、却下の裁決、補償金のみの裁決。これまでの裁決は一つでした。つまり五年とか十年とか。九八年の裁決には認容と却下があります。一坪の土地、反戦地主の土地。却下裁決に対しては、国側がいわゆる行政不服審査法で建設大臣に審査請求を出している。その手続きが進んでいる最中です。全て水も漏らさぬように国側のために法律がある。収用委員会が却下しても使えるように、審査請求を出しておけばその間は暫定使用していいというのが、「改正」特措法。

 内閣総理大臣の強制使用認定、代理署名、公告縦覧、裁決と、総理大臣が全てするのですから、確かに効率はいい。沖縄の土地はどこでも取れる。そうなったときに肝心なのは、沖縄現地の問題です。収用委員会が却下をするか。沖縄現地は認めていないけれど、総理大臣は強制使用する。そういう方向に持っていくことができるかどうかが、この闘争です。収用委員会が強制使用していいですよと裁決した場合、これはもうどうにもならない。却下を勝ち取るという闘争がこれまで以上に重要になってくる。

  沖縄の二紙には一面トップで載っていましたが、アメリカのシンクタンクが海兵隊を削減しても良いということを出してきた。しかし、条件が付いている。海兵隊を削減しますが周辺事態法だけではダメだと。憲法を改正しなさいと。集団自衛権を日米で合意しましょうと。その条件で沖縄の海兵隊を削減してもいいと言っている海兵隊が削減されると言うことで喜んだ。ところが日米によって憲法改正に進んでいく。憲法調査会もできて、アメリカから言えばしめたものだ。集団自衛権を認めなさい、それを認めるのであれば、海兵隊の削減をしてもいいと。その辺も注意深く見ていかなくてはならない。

 「改正」特措法で問題になるのが緊急裁決です。いままで、反戦地主の土地、これは現在使われている土地、いわゆる認定土地という。しかし、「改正」した特措法の中に、特定土地の強制使用というのが出てくる。特定土地も強制使用することができると。つまり、総理大臣が軍事基地としてアメリカに提供しようとすると、新規接収ができる。そこら辺が、特措法「改正」の中身です。ただし、六ヶ月という期限は区切ってある。問題は、六ヶ月という期限は切っても、たとえば立川闘争を見てください、六ヶ月、六ヶ月と期限を区切りながら四回ほど続いた。法律で六ヶ月だから、六ヶ月で返すんだと思ったらとんでもない、何回も緊急使用ができる。法律の解釈は非常に難しくて、専従でやっていてもなかなか分からない。特定土地とは、「駐留軍の用に供するため第五条の規定による認定があった土地等のうち認定土地等を除くもの」となっている。認定土地とは、「駐留軍の用に供するため所有者若しくは関係人との合意又はこの法律の規定により使用されている土地等で引き続き駐留軍の用に供するためその使用について第五条の規定による認定があったもの」とされている。わかりにくいですが、つまり、「現に駐留軍の用地として使われている土地」が認定土地です。特定土地とは、「新たに接収される土地」のこと。隠されたものが入ってきた。沖縄が復帰するときに全国の沖縄化ということが言われましたが、まさしくどこでも接収できるようになった。

 内閣総理大臣が強制使用裁決できるわけですが、その中に一つだけ逃げ道を作ってある。裁決するときに、防衛施設中央審議会の議を経なければならないことになっている。つまり、総理大臣が審議会を作って、そこが裁決結構ですよと言うときに総理大臣が認可をする。第三者機関も認めたという逃げ道。

 土地収用法の「改正」の中で、一坪反戦地主の土地は収用し、反戦地主の土地は強制使用した方がいいという議論が出てきた。土地収用の方は強制的買い上げ。一坪反戦地主つぶしだ。収用は買い上げてしまうから、一坪反戦地主がなくなることになる。一坪反戦地主という言葉は出てきませんが、「公共のために共有運動をしている土地は強制収用しなさい」と言う意見が出たようだ。公共のためにといいますが、沖縄の土地は「高度の公共性」といいます。軍事基地は普通の公共よりももっと上らしい。高度の公共性のために土地を使う。建設省ではそのような動きがあります。この辺も今後注目して行かなくてはならない点です。

         (まとめは編集部)