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第112号(2000年5月28日発行)

 
ジュゴン保護運動のはじまり

        四・三〇ジュゴン・シンポジウムの報告

                   鈴木雅子(北限のジュゴンを見守る会)

 新緑前線の北上とともに沖縄と本土を結ぶ、沖縄のジュゴン保護の取り組みが初めて行われました。四月二九日に京都、三〇日に東京で「ジュゴン・シンポジウム」が、五月二日には沖縄でジュゴン保護基金による講演会が開かれ、各地とも大成功しました。

 「北限のジュゴンを見守る会」は、沖縄のジュゴンの危機に心を痛める学者や市民によって昨年一一月に結成されたばかりですが、初仕事として、世界自然保護基金日本委員会などとともに、東京でシンポを開催しました。

 シンポは、沖縄のジュゴンの研究者である粕谷俊雄・三重大教授、教授とともにジュゴンの研究をしているオーストラリア・ジェームズクック大学のヘレン・マーシュ教授、および同大でジュゴンの追跡調査をしているイヴァン・ローラー研究員を迎え開催されました。

 マーシュ教授は、オーストラリアのジュゴンにとっての脅威として、先住民による狩猟、漁業による混獲、海水の汚染をあげ、〈先住民にとってジュゴン猟は、彼らの文化の一環として重要で、狩猟は持続可能な数にほぼ制限されている。むしろ重大なのは持続可能な数を越えた混獲で、世界的にも沖縄でも深刻な問題である。またオーストラリアではハリケーンや洪水により、アラビア半島沿岸域では原油流出事故などにより海水が汚染され、ジュゴンの餌である海草が消失し、たくさんのジュゴンが死んでいる。沖縄には、世界的な分布の上で貴重な北限のジュゴンが生息しているのだから、東海岸に保護区を設けるべきで、それは、世界的に重要な海洋生態域の保全に役立つ〉と報告されました。

 イヴァン研究員は、ジュゴンに発信機をつける移動調査とその結果、調査の際注意すべきことを報告し、〈絶滅の危機にある沖縄のジュゴンの保護活動にオーストラリアと同じ方法を用いることは適当でない〉と語られました。

 粕谷教授は、過去から現在までのジュゴンと人間との係わりの歴史、過去三年間の調査結果、ジュゴンを救うための行動を具体的に提起されました。教授は、〈国の天然記念物指定も水産資源法の指定も、積極的に捕獲してはならないというだけで、保護には役立たない。低レベルでの維持や保存では絶滅の危険から脱することはできないので、安全なレベルまでの個体数の回復を早急に計る必要がある。そのために、金武湾から北へ五二キロまでの優先的な保護区の設定、区域内での漁業の即時禁止、人間活動の影響評価(有害なら活動停止)、今後の工事や建設の無害証明を得るまでの凍結、回復頭数の目標設定、餌場の確保、保全地域の数の問題などを長期的視野で考える必要がある〉と語られました。

 報告後の質議応答では、パネリストたちが、日本には海生哺乳類の保護法がない、新たな基地建設は赤土の流入による海洋汚染や騒音問題などを引き起こす、建設工事により少なくとも二つの海草藻場が破壊され、ジュゴンの生息地が南北に分断される恐れがある、そればかりか、現在の米軍の演習や刺し網漁などで、基地建設以前にジュゴンが絶滅してしまうこともありうるので、保護区の設定などの対策を早急に開始すべきであると指摘しました。  

 その後、沖縄からの報告として、ジュゴンネットワーク沖縄の棚原盛秀氏、ジュゴン保護基金委員会の東恩納琢磨氏がアピールしました。シンポには大勢の若い人たちを含め二百名近くが参加し、自然保護運動の新しい時代を予感させる新鮮な取り組みになりました。

 ジュゴンの生きる海を守り、その海を育むヤンバルの森を守り、沖縄の多種多様な生態系を守ることこそ沖縄の真の平和と自立への道であり、日本の次世代の人々に希望を指し示すことだと信じます。ジュゴン保護は今、ここから始まるのです。

北限のジュゴンを見守る会
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