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第112号(2000年5月28日発行)

  声 明 文

   (二○○○年五月二二日)
      名護市民投票裁判原告団

 二年四ヶ月余、全一一回におよぶ名護市民投票裁判に対し、五月九日最終判決が出された。今回の判決は、「原告らの請求をいずれも棄却する」という不当判決であり、不当である限り控訴は当然採用されるべきものである。しかし、原告団としては、以下の理由と将来への展望をふくめ、今回、控訴を見送ることを決定した。

 控訴見送りの理由に入る前に確認しておきたいことがある。今回の裁判は、政府の専権事項ともいうべき国家防衛に関する市民投票についての日本で最初の裁判であったということである。リコールをさせないために辞職し、自ら発表した基地受入れ逆転声明を「市長選」という手段で追認させてしまうという卑劣なやり方に対する、市民の側からのやむにやまれぬ告訴であった。国家と市民が市民投票の結果をめぐってむき合うことの難しさが、今回の判決文の不透明さの中に明確に示されている。

 控訴見送りの理由と将来への展望

  1.  今回の判決において、被告側が裁判において一貫して主張し続けた「訴えそのものの却下」いわゆる「門前払い」に対して、住民投票の結果に反する行政行為が行われた場合には、司法判断の対象になりうるという点を示したこと。
  2.  従って、住民投票の結果に反する行政行為がなされた場合、これを単なる政治的行為として何らかの責任追及が不可能というのではなく、司法の場でその責任を問いうるという地点が克ちとられたこと。
  3.  住民投票の結果の拘束力については、投票結果に対して違法行為があった場合、「住民投票条例」に違法行為に対する規定がもり込まれている場合には拘束措置を認めうる、と判決文を解釈できること。
  4.  もし控訴をした場合、高等裁判所において、現在の日本の司法の実態からして、今回の判決をさらに下回る判決が出される可能性が多分にあるということ。
  5.  そもそも今回の裁判は、米軍普天間基地のキャンプ・シュワブ沖への移設に反対する市民運動のなかからうまれたものであり、目的はあくまで「米軍ヘリ基地ノー」であるということ。
  6.  名護の市民運動がややもすれば風化しかけるなかで、二年四ヶ月余のこの裁判において、一貫して「名護市民投票とはなんであったのか」の原点を学習し続けられたこと。
  7.  それによって、再び私たちにとって市民運動とは何なのか、を問いなおし、米軍ヘリ基地ノー・名護市民運動の再構築化にむけての実質的なエネルギー源をくみ取ることができたこと。
  8.  名護の市民投票は、決して名護市民だけでできたものではなく、巻町、御嵩町などの苦しい運動などからバトンタッチしたものであり、今回の判決において、全国での住民投票運動に生かせる重要なヒントを発信できたこと。
  9.  裁判闘争はそれ自体として完結するものではなく、常にそれと連動した市民運動の実践のなかに還元し、市民運動の目的を達成するためのものであり、その意味で原告団としては次のようなメッセージを自らに、そして全国のサポーターの皆様へ送ることができるということ。
  10.  すなわち、憲法にいう「平和的生存権」、「思想信条の自由」などは、結局は市民一人ひとりがその自覚と責任において克ちとった分だけしかその実質をつくりえない。そういう時代認識を深め、そこで得られた様々な市民運動の論理の実践を通して、形骸化しきっている現代日本の議会制民主主義(間接民主主義)を超えていかなければならないということ。

 以上、私たちを支えてくださった全県・全国のサポーターの皆様へのお礼として、また、これからも続く「米軍ヘリ基地ノー」の名護市民運動の再構築にふみ出そうとしている多くの名護市民の皆様への、名護市民投票裁判原告団からのメッセージとします。