軍用地を生活と生産の場に!
 
沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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第111号(2000年4月28日発行)

反対討論  伊波洋一(結の会)
 
 結の会を代表し、陳情平成一一年第一四六号、『沖縄県の外郭団体などあらゆる県の機関から「一坪反戦地主など」を役員から排除することを求める陳情』の採択に反対する立場で討論をおこないます。

 本議会においては、一般的に請願と陳情の採択にあたっては、全会一致を原則としており、今議会においても本件だけが採決による採択であることから本陳情は与党諸君にとっては異例な扱いがなされています。総務企画委員会において十分な審議が尽くされないままに採決で採択されたことで、本会議に回って参りました。

 私は、県議会の使命は、県民の声を汲み取りながら議会で論戦を通して(それ)を県政に反映することであると考えております。一部の者の意見を、数の力で押し切って県政に反映しようとすることは、県民の信頼を裏切ることになるだけでなく、大きな非難をうけることは明らかであります。

 ましてや、本陳情のように、「一坪反戦地主」および「反戦地主であった者」を県の外郭団体など、あらゆる県の機関から排除することを求める陳情を採択することは、日本国憲法の多くの条文にも反することはあきらかであり、許されることではありません。

 さて、陳情は、どのような趣旨で「一坪反戦地主」及び「反戦地主であった者」を公職から排除しようしているのか、陳情書によって明らかにします。一、 一坪反戦地主の土地所有の目的は、土地を経済的に使用する為のものではなく、国の政策を妨害するものであるから憲法第十二条違反である、と書いています。憲法第十二条は、「この憲法が、国民に保障する権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民はこれを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」となっているが、この条文のどこに違反しているのか、違反していないことは明白であります。むしろ、この陳情を県議会が採択することこそ、この条文に違反するものである。

 つぎに、同陳情は、二、「反戦平和」とは、米軍を日本から追いだし、自衛隊をなくして、日本を無防備にしてから、民衆に暴動を起こさせ、日本を破滅に陥れようとする考えと同じである、と続けている。

 太平洋戦争で最大規模の戦闘が続いた沖縄戦で二十数万人の戦死者を出し、十数万人にも及ぶ沖縄県民の戦死者の多くが、非戦闘員であった沖縄県民が悲惨な沖縄戦の体験をもとにして戦争に反対し、平和を願うことは、民衆に暴動を起こさせ、日本を破滅に陥れようとする考えと同じなのか。全く、逆であり、戦前、日本軍が、各地を侵略し、最終的には国民を破滅させ、国を破滅させたのではなかったか。

 沖縄県民が戦争を憎み、平和を求める願いは、昨日、オープン式典を行なった新沖縄県平和資料館の設立理念にもつぎのように述べられています。

 「沖縄戦の何よりの特徴は、軍人よりも一般住民の戦死者がはるかに上まわっていることにあり、ある者は飢えとマラリアで倒れ、また、敗走する自国軍隊の犠牲にされるものもありました。私達沖縄県民は、想像を絶する極限状況の中で戦争の不条理と残酷さを身をもって体験しました。この戦争の体験こそ、とりもなおさず戦後沖縄の人々が米国の軍事支配の重圧に抗しつつ、つちかってきた沖縄のこころの原点であります。“沖縄のこころ”とは人間の尊厳を何よりも重く見て、戦争につながる一切の行為を否定し、平和を求め、人間性の発露である文化をこよなく愛する心であります。」

 すなわち、「反戦平和」は・沖縄のこころ・そのものであって、本陳情の言う様に、民衆に暴動を起こさせ、日本を破滅に陥れようとする考えではないのであります。

 陳情書は、続いて四、平和祈念資料館監修委員、県公文書館役員、県教育委員などは、特に歴史の公正を期する立場から「一坪反戦地主」のような人物は不敵格者である。五、県内には、正しい歴史観を持つ有識者は豊富である。このような人達を差し置いて、保守県政のリコールを企てたり、少なくとも県政を危うくし、県民の恥じとなるような行動、言動を繰り返して、てんとして恥じない「一坪反戦地主」などを有用し、県民の税金を無駄遣いすべきではない。以上のとおりであるので、県から給与、運営資金など何らかの資金の関わりのある外郭団体に於いては、一坪反戦地主や過去にその団体の一員であったものは、役員から即刻排除するよう強く要請し、陳情書といたします、と結んでいる。

 陳情者達がどのように考えようと自由である。なぜなら、人間個々の内心の自由は、人権のうちでも優越的地位を有しており、具体的には、思想・良心の自由を保障するために、思想及び良心の自由(第十九条)、さらに、信教の自由(第二十条)、集会・結社・表現の自由(第二十一条)、学問の自由(第二十三条)を日本国憲法は、すべての国民の基本的人権として保障しているのであります。

 憲法第十九条は、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」憲法第二十一条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」憲法第二十三条は、「学問の自由は、これを保障する。」とし、これらの条文は、除外規定なしに、その自由を保障しているのであり、国民が一坪反戦地主になることを憲法は保障しているのであります。

 また、憲法第二十二条は、何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

 公共の福祉に反するとは、例えば、法が禁止する管理売春や国家試験で医師免許を持つもの以外の医療行為を規制することであり、医師以外の者の行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。

 陳情書の求めることは、一坪反戦地主を、県のあらゆる公職から追放することを求めるものであり、県から給与、運営資金など何らかの資金の関わり合いのある外郭団体とは、全ての福祉施設、認可保育所、作業所などをもを含むことになる。

 総務企画委員会では、採決で本陳情を採択して、本会議に送ってきたわけだが、一坪反戦地主とは、陳情書に言うように、それほど、県の公職から遠ざけなければならない存在なのですか。県議会がこのような陳情を採択することは、県議会の名誉を汚すだけでなく、一坪反戦地主会の名誉を著しく傷つける暴挙であります。総務企画委員会で、この陳情を採択した諸君は、一坪反戦地主会や一坪反戦地主を知っていて、採択したのでしようか。極めて疑問であります。

 例えば、私は、一坪反戦地主会に参加する一坪反戦地主で、宜野湾市の有権者の信任を得た県議会議員です。例えば、本県から選出されている二人の参議院議員、島袋宗康参議院議員と照屋寛徳参議院議員は、一坪反戦地主です。島袋宗康参議院議員は、社会大衆党委員長でもあり、県政を支える公党の代表者です。照屋寛徳参議院議員は、弁護士としても活躍しています。お二人は、投票した全県民の過半数以上の信任を得た国会議員であります。このお二人の国会議員がもし、県の外郭団体の役員を兼ねているのなら、即刻排除しようというのでしようか。さらに、市長村長にも一坪反戦地主はいるのであります。例えば、名護市の岸本建男市長も一坪反戦地主であります。彼も、県の外郭団体の役員に名を連ねてはならないということになります。陳情の趣旨は、県民や市民を侮辱することになることは明らかです。

 与党の県議会議員に一坪反戦地主会を理解していない方がいるかもしれないので一坪反戦地主会について述べます。一坪反戦地主会には代表世話人が六名おります。例えば、元沖縄大学長の新崎盛暉(もりてる)さんは、一坪反戦地主会の代表世話人であります。弁護士の金城睦(ちかし)さん、池宮城紀夫(としお)さん、三宅俊司(しゅんじ)さんの三名は県民に尊敬される弁護士でありますが、一坪反戦地主の代表世話人でもあります。多くの県民から慕われる牧師である平良修さんも代表世話人であります。残るお一人の崎原盛秀(せいしゅう)さんは、長らく教職にいた尊敬される教育者であります。

 一フイート運動の会事務局長の仲村文子先生も、元沖縄タイムス社長の豊平良顕(りょうけん)さん、牧港篤三さんも一坪反戦地主であります。もっと多くの著名な方々や県民が一坪反戦地主であります。一坪反戦地主や反戦地主は、沖縄の良心なのです。

 そもそも、一坪反戦地主会は、一九八二年十二月十二日に結成されました。一坪反戦地主会会則は、第二条が会の目的として、「この会は戦争に反対し、軍用地を生活と生産の場に変えていくことを目的とする」とうたっています。

 そして、第三条で、「1・一坪反戦地主を拡大し、相互の団結を強化する。2、反戦地主と連帯する。3、未契約軍用地を返還された反戦地主を支援する。4、契約拒否運動を拡大する。5、その他、反戦平和運動に関する活動を行なう。」と活動内容を定め、ほぼ、その通りに活動してきています。さらに、第四条で、「会の目的に賛同し、一人一万円で土地を購入して共有登記をした一坪反戦地主をもって会員とし、この会を構成する。」としているように、嘉手納基地および普天間基地の中にある反戦地主の土地を共同で購入し共有しているのであります。

 なぜ、一坪反戦地主会が一九八二年に結成されたのか。最初から説明するとすれば、沖縄戦と米軍の沖縄占領および米軍基地建設のための強制土地接収にまで遡ることになります。

 しかし、時間はありませんので、ぜひ、昨日オープンした摩文仁の新平和資料館の米軍占領と一九五五年頃から始まる土地闘争、復帰闘争、反基地闘争の展示資料を見ていただきたいと思います。今日も全国の米軍専用基地の七五%が集中している沖縄では、強制接収された土地を諦めてきたわけでは決してない。伊江島の阿波根昌鴻さんは、もう四十五年も土地の強制接収に抗議し、返還を求め続けてきました。米軍の占領や強制接収で米軍基地となった土地の返還を求めて契約を拒否していた地主は、復帰前から多く、復帰直前には約三千人もいました。復帰を半年後に控えた一九七一年十二月九日、軍用地契約をしいなかった地主は、「権利と財産を守る軍用地主会(通称・反戦地主会)」を結成した。反戦地主会に参加する地主は、戦争に結び付く基地には、自分の土地を提供しないという理念を堅持してきたなかで、復帰と同時に米軍基地の土地が還ってくることを求めていました。

 政府は、「公用地法(沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律)」を五年間の時限立法で制定し、米軍基地の未契約地主の土地の強制使用を継続した。公用地法は、沖縄県民の財産権を踏みにじると同時に、二度と戦争には加担しないとする反戦地主の思想信条を否定する悪法でありました。

 日本政府は、この最初の五年間で軍用地料を値上げして契約地主をなだめ、反戦地主の切り崩しにかかりました。契約をしない地主には周囲を含めて返還すると脅して契約を迫ったりして、復帰時の一九七二年に二九四一名いた反戦地主は、一九七七(年)までに五百名を割るところまでになったのです。

 一九七七年五月一五日に期限の切れた公用地法は、同年五月十八日に地籍明確化法が成立して生き返りさらに五年間延長されました。そして、一九八二年までに反戦地主は一五三人までに減じたのである。まさに、日本政府に真綿で首を絞められているようだと反戦地主に言わしめたほどの締め付けが、反戦地主に対してなされていたのです。

 そのために、先程の規約のように、反戦地主を支えるために一坪反戦地主会が同年十二月に結成されたのです。その後の米軍基地を巡る強制使用問題で、一坪反戦地主は、反戦地主とともに沖縄県民の権利を回復する運動を展開していく。一坪反戦地主会の運動がなければ、今日のような米軍基地の返還問題にまでは進むことはできなかっただろうということができるほどだ。

 一九九五年九月の少女暴行事件直後の九月二八日に、大田知事が代理署名拒否を表明し、その後の沖縄基地を巡る大きな動きになっているのも、反戦地主とともに一坪反戦地主の取り組みのおかげである。本来ならば、県議会で一坪反戦地主会に感謝状を差し上げるべきところなのです。

 このような一坪反戦地主の皆さんを、犯罪者よりも下位におく、今回の陳情を採択するとは何事ですか。陳情は、過去に一坪反戦地主であった者も公職から除外せよ、と言っているのです。どんな凶悪な犯罪を犯した者でも、前科及び犯罪経歴はみだりに公開されず、刑期を終えれば、そのことによって法律上は不利益を受けることはないのです。

 まさに、今回の陳情は、一坪反戦地主を犯罪者以下におとしめるものであり、一坪反戦地主会及び、同会に参加する県民一人一人を著しく侮辱し、名誉を傷つけるものであるだけでなく、陳情の趣旨が通ることになれば、私達は、戦後の占領下の状態や戦前の治安維持法下の状況に後戻りすることになるのであります。

 このような公職からの追放は、戦後の日本では、占領下のレッドパージ、沖縄での瀬長亀次郎那覇市長の公職追放など共産党や人民党の公職追放を思い出させるものであります。

 今回の陳情は、特定の思想を持つ人々が、公権力を利用して、彼等が認めない県民を公職から追放させようとするものであります。そもそも、そのようなことが、可能だと考える県議会議員がいるのでしようか。

 レッドパージは、占領下の日本でマッカーサー指令都のレッド・パージ政策によって当時の共産党もしくはその同調者を、新聞事業から始まって、電気事業、私鉄、鉄鋼、石炭等の基幹産業、そして民間産業一般に波及したものであります。

 当時の最高裁も、判例では特定の党に所属したり、特定の信条をもつことを理由に解雇を認めることはありませんでした。

 信条による差別についての最高裁判例として、昭和四十八年十一月十二日の大法廷判決があります。三菱樹脂事件であります。昭和三十八年三月に大学を卒業して三菱樹脂株式会社の管理職要員として三か月の使用期間を設けて採用され、採用の際に学生活動についての経歴に一部隠していたことで六月に本採用を拒否された事件でありますが、地裁も高裁も解雇権の乱用(濫用)として解雇を取り消し、特に、高裁判決は、憲法第十四条の法の下の平等、「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係においで、差別されない」と労働基準法第三条、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、貸金、労働時間その他の労働条件について、差別してはならない。」によって、信条による差別禁止が定められているとしたのです。

 残念ながら最高裁判決は、憲法第十四条「法の下の平等」と第十九条「思想及び良心の自由」は、「その他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものでない」と後退するものとなったのですが、国や地方公共団体は「法の下の平等」により信条による公務員採用での差別をしてはならないことを明確にしたのです。

 ですから、本陳情書が求める一坪反戦地主や過去に一坪反戦地主であった者を県のあらゆる機関並びに県から給与、運営資金などなんらかに資金の関わりのある外郭団体において即刻排除する陳情を採択することは、憲法が規定する国民の基本的人権を著しく侵害するものであります。

 憲法は、第十章・最高法規において、第九十七条で「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将釆の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」、第九十八条で「この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない」と規定しているように、県議会は、このような陳情採択してはならないのであります。

 本陳情の採択に反対することを求めて討論を終わります。