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『一坪反戦通信』 毎月1回 28日発行 一部200円 定期購読料 年2,000円

第111号(2000年4月28日発行)

【新刊】

《和英両文 一○○ Q&A》

沖縄の素顔

新崎盛暉 編

 和英両文だからといって本書がサミット狙いのお手軽沖縄ガイドと思ってはならない。編者は新崎盛暉氏、沖縄県議会公認の非国民団体・一坪反戦地主会の代表世話人である。著者にも一坪の会員が名を連ねている。サミット・ヨイショ本ではないことは容易に想像できよう。国や県の推薦図書には決してなりそうもない。下手をすれば沖縄県議会指定の発禁本第一号だ。しかし、内容は読者の期待を裏切らない出来映えである。

 本書は、琉球・沖縄の過去・現在・未来について、一○○問一○○答形式で解説している。和英両文の見開き構成だ。目次には全問と図表リストが載っており、索引もしっかりしているので、読者の知りたい情報は容易に得られるだろう。的確な図表の選択、琉球・沖縄と日本・世界の出来事を併置した年表など、実に丁寧な作りである。年表はあまりにも簡略すぎるのではないかと一見感じるが、よく読むと、編著者の思いが伝わってくる。例えば、

一九九五年 「平和の礎」除幕。軍転法成立。知事、代理署名を拒否(裁判に)/米兵の少女暴行事件に抗議する県民総決起大会。

一九九六年 象のオリ、国による「不法占拠」状態となる/普天間飛行場の全面返還合意。代理署名裁判敗訴。「日米地位協定の見直しと基地の整理・縮小」を求める県民投票で全有権者の過半数が賛成。

一九九七年 米軍用地特措法改定で、強制使用の期限切れでも暫定使用が可能となる。名護市住民投票で海上基地建設反対票が過半数を占める。
という具合で、なかなか思い切ったまとめ方だ。

 本書の説明にもあるが、英文は単なる逐語訳ではなく、英語で本書を読む外国人を対象にしている。翻訳者の一人ジャネット・ヒギンズ氏は出版記念シンポジウム(四月八日、沖縄大学)で、「言葉や文字で表現された文章は話し手や著者だけでなく読者と共有することになる。文化によって同じ言葉でもイメージやニュアンスが異なる。それを考えながら、伝えたいと思う沖縄を英語で表現するのは至難の業だった」(沖縄タイムス)と語った。なるほど、とうなずける。注釈などは英文の方がはるかに詳しい。

 最後の問い(Q一○○)「人々が願いめざす社会はどのようなものですか」は次のように結ばれている。
この本でさまざまな角度から解説してきたように、沖縄は、単に日本の一地方とはいい切れない独自の歴史と、その歴史に培われた独特の文化(民衆意識を含む)を持っています。現代史をわずか数十年さかのぼっただけでも、日米両軍の戦場となり、三○年近く米軍政下に置かれた歴史をもち、今なお在日米軍基地の七五%を押し付けられているという現実があります。そうした歴史を継承し、厳しい現実に直面している沖縄の民衆が、何よりも強く求めているものが、「基地のない平和な社会」であることは、あまりにも明らかです。
 下図は本書に掲載されている図の一つだ。沖縄の人々にとって戦争とはいかなるものだったかをこの図は如実に語っている。一坪反戦地主を「誤った歴史観を持つ」とする陳情に賛成した県議会議員(二頁にリスト)は、沖縄戦の歴史から何を学んだのか。本書はまずあの哀れな二六名に読んでもらいたい書である。
人口
沖縄戦直後の人口ピラミッド(76頁)

 返本による無駄を省くために一般書店への配本はほとんどしていないので、書店で本書を見つけるのは難しい。書店に頼んで取り寄せてもらうか、インターネットで注文できる。  
(M)  
 

(株)テクノ
2000年3月27日
1429円+税
ISBN4-88538-601-2

 類書としては、『沖縄修学旅行』(新崎盛暉ほか、高文研)、『観光コースでない沖縄』(新崎盛暉ほか、高文研)、『平和のためのガイドブック 沖縄』(沖縄県歴史教育者協議会編、あけぼの出版社)などがある。いずれも単なる観光ガイドとはひと味違った沖縄案内として参考になる。