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第110号(2000年3月28日発行)

【新刊書紹介】
   
『子乞い 沖縄 孤島の歳月』
森口 豁(もりぐち・かつ)著
    
  〈沖縄〉に強い関心をもっていても、八重山諸島・鳩間(はとま)島の位置を正確にいえる人は、ごく少ないのではないか。鳩間島は、周囲三・四キロ、面積わずか一平方キロという、琉球弧の島々のなかでも最も小さな島のひとつで、人口は、九九年四月末現在、三一世帯・五二人である。

 一九八二年、「復帰」から一○年目の春、六歳の少年が、四○キロの海をへだてた石垣島からやってきた。そしてそのすぐ後、沖縄(本)島から八歳の少女がやってきた。少年は鳩間小学校に入学し、少女は二年次に転入学した。同校でたった一人の生徒だった三年生の少女が、その春、西表に転居するため、鳩間小学校は存亡の危機に見舞われていたが、二人の入学と転入学によってなんとか廃校をまぬがれた――ルポはそこからはじまる。その二年後人びとは、一○年間廃校になっていた中学校をついに復活させるのだが、そこに到るまでどのような苦闘のドラマがあったか、それについては本書を読んでいただくほかはない。

 著者は、島の歴史、島社会の人間関係、さらには島の産業構造などの説明をていねいに織り込みながら、「子乞い」のドラマを活写していく。読者は読み進むうち、この国や「本土」なるもの、あるいは自分自身の生活そのものを、深くかえりみることになるだろう。人口が減りつづけ過疎化が急激に進行する、鳩間という孤島の現実が、政府や沖縄県の離島振興策の問題性を鋭く照射していることに、誰しも気づくにちがいない。

 本書は、一九八五年に刊行された『子乞い 八重山・鳩間島生活誌』の増補・新版である。鳩間島の現在と今後の展望に触れた「島の歳月をみつめて・鳩間島への手紙」が新たに付されているが、それも力作である。本書の一読を薦めたい。            
(I)  

凱風社
2000年1月刊
1800円
ISBN4-7736-2404-3

森口氏の著作としては他に、『沖縄 近い昔の旅 非武の島の記憶』凱風社(1999)、『「安保」が人をひき殺す』高文研(1996) 、『ヤマト嫌い 沖縄言論人・池宮城秀意の反骨』講談社(1995)、『最後の学徒兵 BC級死刑囚・田口泰正の悲劇』講談社(1993) などがある。
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