軍用地を生活と生産の場に!
 
沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
http://www.jca.apc.org/HHK
東京都千代田区三崎町2-2-13-502
電話:090- 3910-4140
FAX:03-3386-2362
郵便振替:00150-8-120796

『一坪反戦通信』 毎月1回 28日発行 一部200円 定期購読料 年2,000円

第105号(1999年9月27日発行)

米軍用地特措法改悪阻止運動の敗北をきちんと総括しよう

井上澄夫(一坪反戦地主)

 第一四五回通常国会でどのような法案が成立させられたか。数え上げていくだけで旋律を覚える。私たちは惨敗に次ぐ惨敗を重ねた。その事実を真摯に凝視し敗北の原因を追究することが、今求められている。
 私たちが新ガイドライン関連法案という戦争法案に神経を集中したのは故あることであり、それがまちがいだったとは思わない。だが私たちは、「戦争ができる国家」(私は「普通に戦争ができる国家」と呼んでいる)づくりが進められているという「正しい認識」をもちながらも、それがどれほど深い射程をもち、どのような仕掛けを用いつつ構想されているかについて十分気づいていなかったのではないか。


 中央省庁改革法と地方分権一括法は政府にとってあくまで一体のものであり、上からの行政改革の根幹をなしている(いずれも七月八日に成立)。現在進行中のその行革は、国家財政が完全に破綻しているこの国を、二一世紀の世界においてもなお「大国」として生き残らせるための国家改造であり、その核心は「強力で効率的な小さな政府」をつくり出すことである。「普通に戦争ができる国家」は、そのような政府によってのみ維持されうる。

 地方分権一括法案は、戦争法案の審議が本格的にはじまった直後の三月二九日に国会に上程された。中央省庁改革法案は、戦争法案の衆議院通過の翌日、四月二八日に上程された。つまり両法案の審議と戦争法案の審議とが同時並行でなされることになったのだが、私たちはその時点で、同時審議の重大な意味に気づくべきであった。

 たとえば中央省庁改革法の目玉として「内閣機能の強化」が喧伝されているが、それは新たな《内閣府・総務省体制》によって実現される。内閣府は従来の総理府・経済企画庁・沖縄開発庁を内局に、防衛庁・国家公安委員会を外局に統合して編成され、内閣府を支える総務省には、これまでの総務省・自治省・郵政省が合体する。
 この枠組みを「国・地方関係」の軸でみれば、地方自治を統御する自治省が最上位の官庁(総務省)に細み込まれ、それが支える内閣府(政府中枢=戦争指導部)が、国家安全保障上もっとも重要な地域として沖縄を、いわば《直轄支配すること》を意味する。紙幅の制限上、中央省庁改革についてはこの点にのみ触れたが、さらにきめ細かく考究されるべき問題であることはいうまでもない。

 米軍用地特措法の再改悪問題についても私たちは、ことの本質に迫ることなく、あまりにも狭く扱って阻止遅動を組み立てたといえまいか。問題の法案は、四七五本の地方分権一括法案に「潜り込まされた」という趣旨の論調が沖縄の新聞にみられた。しかし再改悪は、地方分権一括法の基本をなす地方自治法改悪の原理(「軍事・治安・外交は国が担い、地方は福祉を担う」という、国・地方間の役割の振り分け)に一応基づいており、その限りでは同一括法案中の例外であったわけではない。むしろ一括法の立法の本旨をもっとも醜悪に体現したのが特措法の再改悪だったと、とらえるぺきだろう。

 それゆえ私たちは、特措法再改悪を許さないためにも、当初から地方分権一括法案そのものを問題にすべきだった。実際、周辺事態法第九条(国以外の者による協力等)の一見ソフトな規定を、別の諸個別法の改悪をもって強力に補完する役割を一括法案は担っているのである(月刊『技術と人間』九九年八・九月合併号所収の拙稿をご参照願いたい)。「土地を戦(いくさ)に使わせない」ことが、一坪反戦地主の運動の基本であるなら、一括法案そのものを阻止すべきだった。

 正直に記すが、この点、私も非常に揺れた。問題に気づいていたのだが、追及のほこ先を特措法の再改悪にしぼらざるをえないと数度発言した。阻止運動の最後の段階で、関東ブロックは地方分権一括法案反対という趣旨を含むビラを街頭で撒いたが、これもあまりに遅すぎる訴えだった。


 地方分権一括法案に、明らかに周辺事熊や日本有事に対応する諸個別法の改悪が盛り込まれるに至るきっかけは米軍用地の提供に対する沖縄(県)の抵抗だつたと私は思う。地方分権推進委員会は「民」の立場もものかは、むき出しの敵意をもって沖縄(県)の抵抗の手段を奪う特措法改悪を企図したされぱこそ、他の省庁もそれにならい、うむをいわせず地方自治体に戦争協力をさせるため、諸個別法の改悪に着手したのだ。今改めて振り返ると、それがよくわかる。

 米軍用地特措法の再改悪の意味を、「大国ニッポン」生き残り戦略の文脈において、もう一度しっかり位置づけ私たちの阻止運動を総括することが必要である。関東ブロックにおいて、敗北からニカ月経っても「開かれた総括討論の場」が設定されていないのは、運動として異常である。敗北から謙虚に学ぶことなく次の前進を望むことはできない。