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第103号(1999年5月29日発行)

「思いやり予算」違憲訴訟・東京 (3)

地位協定にも特別協定にもない自主的な施設整備費によって米軍基地内の豪華施設が維持されている 

 五月十八日、「思いやり予算」違憲訴訟・東京の第六回口頭弁論が東京地裁で開かれた。原告側は、インターネットで集めた米側の最新資料とこれまで未提出であった二つの資料を証拠として提出した。これらの資料については次号で解説する予定だが、ホームページではすでに全文を公開しているので、お読みいただければ幸いである(注1)。

 さて、今号では具体的な提供施設について説明する。『共同防衛のための同盟国の寄与(注2)』には次のように述べられている。

 別枠の施設整備計画として、住宅や基地内のサポート・リクリエーション施設の建設、電気・上下水道施設の改善など、生活の質的向上プロジェクトのために、日本は自主的に多額の予算を支出している。さらに、最近では、施設整備計画をこれまで以上に柔軟に運用して、滑走路や防爆シェルターなどの直接的軍事施設の建設も日本側が行うようになってきた。一九九七年に日本が米軍施設建設・再生・維持のために支出した金額は約九億ドルである。

 別枠とは「労務費」「光熱水費」などの負担を決めた特別協定(注3)の枠外という意味である。地位協定第二十四条1項・2項(注4)の経費分担原則から日本側が施設整備費を分担する義務はない。しかも、特別協定でも施設整備費は盛られていないから、これはあくまでも日本が自主的に出していると米国は考えている。金丸言うところのまさに「思いやり」である。さらに、直接的軍事施設の建設までも請け負うという柔軟性まで見せているのだ。

 基地内の様子を伺い知ることはなかなかできないが、転属兵士やその家族のために、各基地の様々な情報がインターネットで公開されている(注5)。表は、公開されている資料から各基地にある福利厚生施設をまとめたものである。至れり尽くせりの施設があることがわかるであろう。これら施設の新築・増改築費用は「思いやり予算」からでている。米国は国内の基地の徹底した統廃合を進めながら(注6)、海外の基地はそのまま残し、受け入れ国に対して駐留経費の負担増を求めている。前回・前々回で指摘したように、日本はその要求にもっとも忠実に応えている。

施設名
厚木
座間
嘉手納
岩国
キャンプ・バトラー
三沢
佐世保
トリイ
横田
横須賀
軍別区分
海軍
陸軍
空軍
海兵隊
海兵隊
空軍
海軍
陸軍
空軍
海軍
カミッサリー(スーパー)

1

3

1

1

4

1

2

0

1

1

エクスチェンジ(デパート)

1

1

1

1

11

1

2

0

1

2

ショッピングセンター

1

3

4

2

12

2

2

1

2

2

劇場

1

1

1

1

8

1

2

1

1

2

ファミリーセンター

3

1

0

1

7

1

2

1

0

1

青少年用センター

2

3

0

2

6

2

2

0

0

1

士官(officer)クラブ

1

1

1

1

6

1

1

1

1

1

下士官(NCO)クラブ

1

1

1

1

6

1

1

1

0

1

兵員(Enlisted)クラブ

1

1

1

1

6

1

2

0

1

1

フィットネスセンター

2

1

3

2

7

1

3

2

2

2

図書館

1

3

1

1

6

1

2

1

1

1

リクリエーションセンター

1

1

1

3

6

1

1

1

1

1

工作センター

1

1

1

1

5

1

1

1

1

1

オートホビーセンター

1

1

1

1

5

1

1

0

1

1

コンサート用施設

1

1

1

1

8

1

1

1

1

2

ボーリング場

1

2

2

2

6

1

1

1

1

1

ゴルフ場(18ホール)

1

1

1

0

2

1

0

0

1

0

ゴルフ場(9ホール)

1

0

1

1

1

1

0

0

1

0

プール

2

3

4

4

10

1

2

1

2

4

野外余暇センター

0

1

1

0

2

1

3

1

1

0

キャンプ場

0

0

0

0

2

1

0

1

0

0

池(釣りができる)

0

1

0

0

1

1

0

0

0

0

テニスコート

4

3

6

0

5

3

6

1

2

10

テニスコート(照明付き)

2

3

3

9

3

3

6

1

2

4

ジョギング用トラック

1

1

2

1

2

1

1

0

1

1

小学校

1

1

4

1

8

2

2

0

2

2

中学校

0

1

1

0

2

1

1

0

1

1

高校

0

1

1

1

2

1

1

0

1

1

礼拝堂

1

1

3

1

1

2

2

1

1

3

家族

3,243

4,271

11,000

1,854

 

5,582

1,847

1,300

4,259

9,479

現役軍人

3,321

868

7,500

2,668

 

4,901

2,846

850

3,646

9,839

基地人口
   

23,342

4,747

 

10,483

6,000

   

26,913

 次回第七回口頭弁論は、七月二十三日、午後一時二十分から東京地裁で開かれる。

 次号は、冷戦後の米戦略と「思いやり予算」との関連について解説する。(文責 丸山)



注1

http://www.jca.apc.org/omoiyari/990518/990518.html

注2 『共同防衛のための同盟国の寄与』 Allied Contributions to the Common Defense

http://www.defenselink.mil/pubs/allied.html

注3 七八年の労務費一部負担から始まった「思いやり予算」は毎年増大し、これ以上の経費負担を地位協定の解釈だけで行うのは無理と考えた日米両政府は、八二年に「在日米軍労務費特別協定」に署名した。その後の改定を経て、日本側の労務費全額負担が九〇年に始まる。さらに、九一年の「在日米軍駐留経費特別協定」によって、光熱水費の負担、ついで九六年の新特別協定では訓練移転費の負担までも対象となった。

注4 日米地位協定 第二十四条(経費の負担)

  1. 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけ ないで合衆国が負担することが合意される。
  2. 日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。

注5

http://www.famnet.com/famnetadds1.htm

http://www.geocities.com/Pentagon/3611/

注6 U.S. Military Base Closures and Realignments

http://www.defenselink.mil/news/fact_sheets/f960530_baseclose_report.html