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第101号(1999年4月6日発行)

「思いやり予算」違憲訴訟・東京 (1)

日本政府の〈異様な〉思いやりが、在日米軍の居座りを支えている。原告団の
調査が明らかにした「思いやり予算」の驚くべき実態を報告する


 九七年五月(関西)、九八年三月(東京)と相次いで「思いやり予算」違憲訴訟が提訴された。関東ブロックからも数人が原告として参加しており、先の総会では、活動方針のひとつとして本訴訟への支援が承認された(二頁参照)。

 日米安保条約を日本国憲法よりも優先し、日米新ガイドラインを軸とする有事体制整備に沿った判決が昨年十一月に相次いで最高裁から出された。反戦地主重課税訴訟(注1)や市民平和訴訟など(注2)に対する原告敗訴の判決である。さらに、十二月十四日には、「思いやり予算」の関西訴訟が国側の反論も全くないまま突然結審した(注3)。がむしゃらに有事体制に突き進もうとする日本政府の固い意志と、政府への媚びへつらいにのみ存在価値を見いだした司法の姿を如実に示してくれた。

 このような状況を踏まえて、二月二日に開かれた第四回口頭弁論では、インターネットなどの公開情報をもとに解析した在日米軍に対する「思いやり」の実態を証拠として提出した。本稿では、数回に分けて「思いやり予算」の実態を報告する。
ベトナム敗戦後ほぼ二百十万人を維持してきた現役米軍兵力は冷戦後急激に減少し、九七年には九〇年以前の三分の二(一四〇万人)となった。しかし、海兵隊は第二次大戦後一貫して二〇万人を維持している(図1 注4)。

図1 米軍現役兵力の変遷(1950〜1997)

 海外に駐留する米軍兵力は、湾岸戦争後急激に減少を続け、九七年には二十二万六千人へと湾岸戦争時の三分の一にまで減少した。しかし、ドイツなどでは急激に減少したものの、日本や韓国では依然として約四万人の米兵が駐留を続けている(図2)。

図2 海外駐留米軍兵力の変遷


 七〇年代にはいると米国議会は同盟国の負担増を露骨に要求するようになる。九八年三月に議会に提出された最新の国防総省資料(注5)によって、九六会計年度では七八・三%、つまり八割近くの在日米軍駐留経費を日本が負担していることが明らかになった(図3)。従来言われてきた七割をはるかに超えている。これは、米議会が同盟国に対して西暦二千年九月までに達成するように設定した目標値の七五%をも上回っている。NATO諸国の負担率は、イタリアが約五〇%、ついでドイツが約二五%である。この異常な「思いやり」が、冷戦後も変わらぬ四万人体制を可能にしているのだ。

図3 受入国支援の割合


 我々がこの訴訟で提起したのは、正義の名のもとに一般市民を殺戮して恥じない米軍のために、我々の意志に反して税金が使われていることに対する異議である。したがって、どのような形での支出ももちろん「否」だ。しかし、調べれば調べるほど、日本政府の米軍に対する「思いやり」の異様さが浮き彫りにされてくる。たとえ安保を認めようとも、米軍の駐留を是としようとも、到底容認できないことだ。さらに、従順な日本を足掛かりとして、韓国をはじめとする他の「同盟国」への圧力を強めている側面も見逃せない。

 さて、裁判官はどのような判断を下すだろうか。原告の主張がいかに正しくとも、残念ながら今時の裁判は決して勝てない。人々が裁判を注視することによってのみ裁判官の頭に憲法がよぎる可能性がある。次回・第五回口頭弁論は、三月二三日午後一時四〇分から、東京地裁七一三号法廷で。傍聴をよろしく。

 次号は負担額の異常ぶりについて。


(注1) 伊江島の反戦地主・阿波根昌鴻さんらが一〇年分の補償金への一括課税は不当だと訴えていた。一審は勝訴。

(注2) 掃海艇派遣違憲訴訟(大阪)、カンボジアPKO派兵違憲訴訟(東京)、湾岸九〇億ドル等市民平和訴訟(名古屋・東京・鹿児島)の五つの訴訟。

(注3) 忌避申立をするも、地裁・高裁で却下。最高裁に特別抗告中。判決日には大阪地裁包囲行動が予定されている。

(注4) http://web1.whs.osd.mil/mmid/military/trends.htm

(注5) Report on Allied Contributions to the Common Defense 1998.3

(文責 丸山和夫)